共有不動産のトラブルで起こせる裁判には、どのような種類がありますか?
共有不動産に関する裁判は、大きく分けて、①共有者から第三者への請求(妨害排除請求・損害賠償請求など)、②共有者間の確認請求・登記の是正請求、③共有物分割訴訟(民法258条)の3つの類型があります。訴訟の種類によって、共有者の1人だけで提起できるものと、全員の参加が必要なものがあり、この区別が実務上とても重要です。
共有不動産の訴訟の全体像
共有不動産をめぐるトラブルが裁判に発展する場合、「誰が」「誰に対して」「何を請求するのか」によって、利用できる訴訟の種類が異なります。
共有不動産に関する訴訟は、請求の方向と内容に応じて、次のように分類できます。
- 共有者から第三者(共有者以外の者)に対する請求: 不法占有者への明渡請求、不実登記の抹消請求、損害賠償請求など
- 共有者間の請求: 共有持分の確認請求、不正な登記の是正(抹消登記・更正登記)請求など
- 共有物分割訴訟: 共有関係そのものを解消する訴訟(民法258条)
これらの訴訟では、共有者全員が原告または被告にならなければならないのか、それとも共有者の1人だけで訴訟を起こせるのかという問題が常に生じます。この問題は、訴訟法上の共同訴訟の分類に関わるものです。
共同訴訟の3つの分類
共有不動産の訴訟を理解するうえで、共同訴訟の分類を知っておくことが重要です。共同訴訟(民事訴訟法38条)とは、原告または被告が複数人いる訴訟形態のことで、以下の3つに分類されます。
通常共同訴訟は、複数の者について権利関係をまとめて確定する必要がない場合の訴訟です。共有者の一部だけが原告(または被告)となることも、全員が原告(または被告)となることもできます。
類似必要的共同訴訟は、権利関係をまとめて確定(合一確定)する必要はあるものの、全員が原告(または被告)になる必要まではないという場合の訴訟です。全員が当事者となった場合には、全員について同じ判断が出されます(民事訴訟法40条1項)。
固有必要的共同訴訟は、複数の者の全員が原告(または被告)にならないと訴訟自体が成り立たないという訴訟です。実務上、当事者の数が多いと大きな負担となるため、ある訴訟が固有必要的共同訴訟に分類されるかどうかは、極めて重要な問題です。
訴訟の主な類型と共同訴訟形態
共有不動産に関する主な訴訟の類型を、請求の方向ごとに整理します。
(1)共有者から第三者に対する請求
妨害排除請求(明渡請求・抹消登記請求)は、第三者が共有不動産を不法に占有している場合や、無権利者の登記が存在する場合に、その排除を求める請求です。共有持分権は所有権の性質をもつため、各共有者は共有持分権に基づく妨害排除請求として、単独で不法占有者に対する明渡請求や、無権利者の不実登記の抹消請求をすることができます。固有必要的共同訴訟ではなく、共有者の1人だけで提訴できます。
なお、最高裁は、不実の持分移転登記がされている場合、登記上侵害を受けていない共有者であっても、共有不動産に対する妨害排除として単独で抹消登記手続を請求できると判断しています(最高裁平成15年7月11日判決)。
損害賠償請求は、第三者が共有不動産を不法に占有している場合に、不法行為による損害賠償を請求するものです。請求額は、損害の全額(地代相当額など)を各共有者の持分割合で按分した金額となります。これは可分債権の原則(民法427条)に基づく処理です。各共有者が単独で、自己の持分割合に応じた金額を請求できます。
筆界確定訴訟は、共有地と隣地との間の筆界(公法上の境界)が不明確な場合に、その確定を求める訴訟です。筆界の位置は共有者全員に共通する利害であるため、共有者全員の参加が必要となります(固有必要的共同訴訟)。
なお、最高裁は、共有地の筆界確定訴訟において、協力しない共有者がいる場合には、その者を被告に加えて訴えを提起できる(共有者全員が原告と被告に含まれていればよい)と判断しています(最高裁平成11年11月9日判決)。
(2)共有者間または第三者との確認請求
共有持分の確認請求は、第三者や他の共有者に対して、自己が共有持分を有することの確認を求める訴訟です。共有持分は共有不動産全体に及ぶため(民法249条)、各共有者がそれぞれ単独で提起できます。固有必要的共同訴訟ではありません。
共有権(所有権)の確認請求は、第三者に対して「共有者全員が所有権を有していること」の確認を求める訴訟です。共有者全員の権利帰属を積極的に確認するものであるため、共有者全員が原告になる必要があります(固有必要的共同訴訟)。
(3)登記の是正に関する請求
共有不動産について実体に合致しない登記がある場合、その是正を求める方法として、抹消登記手続請求(全部抹消)と更正登記手続請求(一部抹消)があります。
登記の是正に関する訴訟では、大きな方向性として、侵害を受けている共有者の全員が原告とならなくてもよい(固有必要的共同訴訟ではない)とされています。共有者の1人が、共有持分権に基づく妨害排除請求として、単独で登記の是正を請求できるのが原則です。ただし、是正方法が更正登記(一部抹消)の場合には、請求が認められる範囲は原告の共有持分を回復する部分に限定されます。
(4)共有物分割訴訟
共有物分割訴訟は、共有関係そのものを解消するための訴訟です(民法258条1項)。共有者間の協議がまとまらないとき、または協議ができないときに、裁判所に分割を請求します。この訴訟は固有必要的共同訴訟であり、共有者全員が原告または被告のいずれかの立場で当事者となる必要があります。
(5)第三者から共有者に対する請求
逆に、第三者が共有者に対して訴訟を提起するケースもあります。たとえば、土地所有者が建物共有者に対して建物収去土地明渡しを請求する場合です。この訴訟について判例は固有必要的共同訴訟ではないと判断しており、共有者の一部だけを被告として提訴することが可能です。
以下の表は、主な訴訟類型と共同訴訟形態の対応をまとめたものです。
| 訴訟の類型 | 具体的な請求内容 | 共同訴訟形態 |
|---|---|---|
| 妨害排除請求(対第三者) | 明渡請求・不実登記の抹消 | 単独で提訴可能 |
| 損害賠償請求(対第三者) | 不法占有に対する損害賠償 | 単独で提訴可能(持分割合の範囲) |
| 筆界確定訴訟 | 隣地との境界の確定 | 固有必要的共同訴訟 |
| 共有持分の確認請求 | 自己の持分の確認 | 単独で提訴可能 |
| 共有権(所有権)の確認請求 | 共有者全員の所有権確認 | 固有必要的共同訴訟 |
| 登記の是正請求 | 不正登記の抹消・更正 | 原則として単独で提訴可能 |
| 共有物分割訴訟 | 共有関係の解消 | 固有必要的共同訴訟 |

