共有のはずなのに、共有者の1人が勝手に自分の単独名義で登記しています。どうすればいいですか?

回答

共有不動産について共有者の1人が不正に単独所有の登記をしている場合、他の共有者は、共有持分権に基づく妨害排除請求として、登記を実体に合致させるための更正登記手続(一部抹消)を求めることができます。ただし、不正な登記の名義人にも共有持分がある場合、是正が認められる範囲は、請求者自身の持分を回復する部分に限られます。

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手続の概要

共有不動産について、実体に合致しない登記(不正な登記)がなされている場合、これを是正する方法が問題になります。是正の方法は、登記と実体がどの程度合致しているかによって、大きく2つに分かれます。

1つ目は「抹消登記」です。これは、登記と実体との間に一切の合致がない場合に用いる方法で、不正な登記の全部を抹消します。たとえば、共有不動産について、まったくの無権利者(共有者ではない第三者)が単独所有の登記を有している場合がこれにあたります。この場合、共有者の1人が単独で登記の全部抹消を請求できます(最高裁昭和31年5月10日判決)。

2つ目は「更正登記」(一部抹消)です。これは、登記と実体の間に部分的な合致がある場合に用いる方法です。「共有者の1人が単独所有の登記を有している」というケースでは、その共有者の持分に相当する部分は登記と実体が合致しています。そのため、全部抹消ではなく、実体と合致しない部分だけを是正する更正登記を請求することになります。

いずれの方法も、その法的根拠は、共有持分権に基づく妨害排除請求です。不正な登記は共有不動産に対する妨害状態を生じさせるものであり、各共有者は自己の持分権に基づいてその排除を求めることができます(最高裁平成15年7月11日判決)。

手続の要件・準備

請求できる者(原告適格)

更正登記を請求できるのは、不正な登記により侵害を受けている共有者です。自己の持分が登記上正しく反映されていない共有者であれば、単独で請求することができます。共有者全員が共同して請求する必要はありません(固有必要的共同訴訟ではありません)。

たとえば、A・B・Cの3名が各3分の1の持分で共有しているにもかかわらず、Aが単独所有の登記をしている場合、BまたはCがそれぞれ単独で更正登記を請求できます。

是正が認められる範囲

更正登記が認められる範囲は、請求者(原告)自身の共有持分を回復する部分に限定されます(最高裁昭和59年4月24日判決)。

上記の設例で、Bだけが請求する場合、登記の是正はBの持分3分の1を回復する範囲にとどまります。更正登記の結果、登記は「A 3分の2、B 3分の1」となり、Cの持分3分の1は回復されないまま残ります。Cの持分も含めて回復するためには、Cも原告に加わる必要があります。B・Cがともに原告となれば、更正登記の結果は「A 3分の1、B 3分の1、C 3分の1」となります。

このように範囲が限定される理由は、処分権主義(民事訴訟法246条)と登記手続上の支障です。原告になっていない共有者の持分を増加させる更正登記を認めると、その共有者が判決後の登記申請手続に関与しなければならないにもかかわらず、訴訟に参加していないという矛盾が生じるためです。

なお、最高裁は、共有不動産につき持分を有しない者が共有名義の登記を有している場合に、共有者が抹消登記手続を請求したときであっても、その請求は更正登記手続を求める趣旨を含むものと解することができると判断しています。もっとも、各共有者が是正を求めることができるのは自己の持分についてのみであり、他の共有者の持分についての更正登記手続までは求めることができないとされています(最高裁平成22年4月20日判決)。

保全措置(処分禁止の仮処分)

訴訟を提起する前に、不正な登記の名義人が第三者に登記を移転してしまうことを防ぐため、処分禁止の仮処分を申し立てることが考えられます。共有者の1人が不正な単独所有登記を有している場合、処分禁止の対象は所有権の一部(共有持分)となります(民事保全法53条1項・3項・47条3項)。

手続の流れ

不正な登記を是正する手続は、大きく次のステップで進みます。

まず、登記と実体の不一致を確認するため、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、登記上の権利関係と真実の権利関係を照合します。遺産分割が原因の場合は遺産分割協議書、相続が原因の場合は戸籍謄本等が実体を証する資料となります。

次に、不正な登記の名義人に対して、任意に更正登記に応じるよう交渉します。相手方が応じれば、登記権利者(持分を回復する共有者)と登記義務者(不正な登記の名義人)が共同で更正登記を申請して完了です。

相手方が任意の是正に応じない場合は、訴訟を提起することになります。請求の趣旨は、「被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の不動産について、○番所有権移転登記(又は所有権保存登記)につき、○○を原因とする所有権更正登記手続をせよ」という内容になります。

仮に原告が「抹消登記手続」として請求した場合であっても、裁判所はその請求を更正登記手続を求める趣旨を含むものと解したうえで、更正登記を命じる判決をすることができるとされています(最高裁昭和38年2月22日判決、最高裁平成22年4月20日判決)。ただし、1個の登記の一部のみを抹消する登記手続は不動産登記法上許容されないため、請求の趣旨を正確に「更正登記手続」として立てることが実務上は重要です。勝訴判決が確定すると、判決に基づき原告が単独で更正登記を申請することができます(不動産登記法63条1項)。

なお、前述のとおり、訴訟提起に先立って処分禁止の仮処分を申し立てておくことが実務上は重要です。不正な登記の名義人が訴訟の係属中に第三者に権利を移転してしまうと、新たな登記名義人に対する別の訴訟が必要になってしまうためです。

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