知らないうちに自分の共有持分が他人名義に変えられていました。元に戻せますか?

回答

元に戻すことができます。共有不動産について実体と合致しない登記がなされている場合、共有者は共有持分権に基づく妨害排除請求として、不正な登記の抹消登記手続または更正登記手続を求めることができます。不正な登記の名義人が共有持分を一部でも有している場合は、原則として全部抹消ではなく一部抹消(更正登記)が認められます。

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結論

共有不動産の登記が実体(真実の権利関係)と異なっている場合、共有者は不正な登記の是正を求めることができます。是正の方法としては、抹消登記手続の請求と更正登記手続の請求(一部抹消)の2種類があり、どちらが認められるかは不正な登記の内容によって異なります。

重要なポイントは、共有者の1人が単独で請求できるという点です。共有持分権に基づく妨害排除請求として構成されるため、他の共有者全員の協力がなくても、自らの権利を守るために登記の是正を求めることが可能です。

根拠と条件

是正方法の基本的な考え方

不正な登記の是正方法は、登記と実体が部分的にでも合致しているかどうかで区別されます。

登記と実体が一切合致していない場合(たとえば、まったくの無権利者が所有者として登記されている場合)には、全部抹消(抹消登記請求)が認められます。一方、登記と実体が部分的に合致している場合(たとえば、不正な登記の名義人が実際には一部の共有持分を有している場合)には、合致している部分は維持したうえで、合致していない部分だけの一部抹消(更正登記請求)が認められます。

なお、ここでいう「合致」は、単に権利の帰属だけで判断するのではなく、登記原因や原因日付も含めて総合的に判断されます。権利の帰属としては部分的に合致していても、登記原因が実体と異なる場合には、登記全体として実体と合致していないと評価され、全部抹消が認められることがあります。

共有者が単独で請求できる範囲

共有者の1人が不正な登記の是正を請求する場合、認められる範囲は是正方法によって異なります。

是正方法が抹消登記(全部抹消)である場合、共有者は単独で登記全部の抹消を請求できます。これは、不正な登記によって共有不動産全体に対する妨害が生じており、各共有者の持分権はその不動産全体に及ぶため(民法249条)、妨害の全部を排除できるという考え方に基づきます。

なお、最高裁は、不正な登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じている場合には、共有者は共有持分権に基づき、単独で抹消登記手続を請求できると判断しています(最高裁昭和31年5月10日判決)。

一方、是正方法が更正登記(一部抹消)である場合は、自己の共有持分を回復する範囲に限って更正登記が認められます。他の共有者の持分を回復する内容の更正登記までは、原告となった共有者だけでは請求できません。これは、他の共有者の処分権が制限されることや、判決後の登記申請手続で支障が生じることが理由です。

なお、最高裁は、共有者の1人は自己の持分についての更正登記手続を求めることができるにとどまり、他の共有者の持分についての更正登記手続までを求めることはできないと判断しています(最高裁平成22年4月20日判決)。

登記上侵害を受けていない共有者からの請求

自己の持分の登記は正しいものの、他の共有者の持分が不正に第三者に移転されている場合にも、抹消登記を請求できるかが問題となります。

この点について、最高裁は、不実の持分移転登記がされている場合、その登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じているといえるから、共有不動産について実体上の権利を有しない者に対しては、共有者が単独で抹消登記手続を請求できると判断しています(最高裁平成15年7月11日判決)。

ただし、この理論が適用されるのは、不正な登記の名義人が第三者(共有者以外の者)である場合に限られると解されています。不正な登記の名義人が共有者の1人である場合には、登記上侵害を受けていない共有者からの抹消請求は認められない可能性があります。

具体的な場面での適用

場面1:共有者の1人から第三者へ無効な持分移転がされたケース(全部抹消)

被相続人Aが死亡し、共同相続人B・C・Dが不動産を共有しているケースで、Bが第三者Eに共有持分を売却し、持分移転登記がなされたものの、売買が無効であった場合を考えます。

この場合、Eは共有不動産について実体上の権利を一切有していないため、登記と実体に合致はありません。C・Dは、共有持分権に基づく妨害排除請求として、Eに対して単独で持分移転登記の全部抹消を請求することができます。C・Dは自身の登記上の持分が侵害されているわけではありませんが、不実の登記によって共有不動産自体に妨害が生じていると評価されるため、請求が認められます。

場面2:無権利の第三者が共有名義に入り込んでいるケース(一部抹消=更正登記)

実体としてはA・Bの共有である不動産について、A・B・Cの3人を共有者とする所有権保存登記がなされてしまった場合を考えます。

Cは実際には持分を有しない無権利者ですが、登記上は、A・B・Cがそれぞれ3分の1の持分を持つ形になっています。AとBの持分が登記されている範囲では実体と部分的に合致しているため、全部抹消ではなく更正登記(一部抹消)による是正となります。Aだけが原告となった場合、Aの共有持分を回復する範囲に限った更正登記が認められます。Bの共有持分の回復も含む更正登記を得るためには、Bも原告に加わる必要があります。

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