不動産鑑定士に評価を頼むと、どんなメリットがありますか?

回答

不動産鑑定士に鑑定評価を依頼する最大のメリットは、法律と評価基準に基づいた客観的・中立的な不動産の適正価格を把握できることです。共有物分割では、不動産の評価額が代償金の額や分割方法の選択に直結し、特に賠償分割(代償分割)では共有物の価格が適正に評価されていることが前提となります。鑑定評価書は、共有者間の協議でも訴訟でも、価格を裏づける資料として機能します。

目次

不動産鑑定評価の意味と趣旨

不動産鑑定評価とは、不動産鑑定士(不動産の経済価値の判定を独占業務とする国家資格者)が、不動産の鑑定評価に関する法律および不動産鑑定評価基準に基づいて、不動産の適正な価格を判定することをいいます。その結果をまとめた書面が不動産鑑定評価書です。

共有物分割で鑑定評価が重要になるのは、分割の場面で必要とされる不動産の価格が「適正な時価」だからです。裁判所が賠償分割(共有者の1人が代償金を払って不動産を取得する分割方法。民法258条2項2号)を命じるには、共有物の価格が適正に評価され、取得者に支払能力があることが必要とされています。ここでいう適正な評価額とは、競売による売却代金のような卸売価格ではなく、市場での取引を前提とした時価を意味すると理解されています。

たとえば、AとBが持分各2分の1で共有する土地について、Aが土地全体を取得する賠償分割を行うとします。この土地の時価が6,000万円と評価されれば、AがBに支払う代償金は3,000万円(6,000万円×1/2)です。評価額が5,000万円なら代償金は2,500万円となります。評価額の違いがそのまま代償金の差になるため、その土地がいくらなのかを適正に確定することが、分割の出発点になるのです。

鑑定評価を依頼するメリット

不動産の価格を把握する手段には、鑑定評価のほかに、不動産業者による査定や、公的な評価額(路線価・固定資産税評価額など)があります。鑑定評価のメリットは、これらと比較すると明確になります。

項目不動産鑑定評価不動産業者の査定公的評価額(路線価等)
作成者不動産鑑定士宅地建物取引業者国・自治体
根拠不動産の鑑定評価に関する法律・不動産鑑定評価基準各社独自の基準相続税法・地方税法等
示される価格適正な時価売却見込み額課税のための評価額
裁判資料としての位置づけ価格を裏づける資料となる参考程度限定的
費用有料(数十万円程度)無料が多い

第一のメリットは、客観的・中立的な根拠が得られることです。 共有物分割では、不動産を取得したい側は低い評価を、代償金を受け取る側は高い評価を望むため、評価額をめぐって利害が対立します。不動産鑑定士による鑑定評価は、法律と評価基準に基づく専門的な判断であり、当事者の希望から独立した価格の根拠として、協議の土台になります。なお、共有者全員が合意する場合には、鑑定評価にかかわらず、自由に代償金の額を定められます。

第二のメリットは、訴訟における証拠としての力です。 共有物分割訴訟で裁判所が賠償分割を命じるには、前提として共有物の適正な価格を認定する必要があります。当事者が提出する私的鑑定の鑑定評価書は、この価格認定の重要な資料となります。また、裁判所が中立の鑑定人として不動産鑑定士を選任し、鑑定を実施することもあります。不動産業者の査定書では、こうした役割を十分に果たせません。

第三のメリットは、複雑な評価に対応できることです。 共有不動産の評価では、単純な更地とは異なる調整が必要になる場合があります。たとえば、共有土地の上に建物が存在するケースでは、建付減価(建物の敷地となっていることを理由とする土地の減価)や使用借権相当額の控除をするかどうかが問題となり、裁判所は個別的な事情に応じて調整を行います。こうした評価上の論点を踏まえた価格の算定は、不動産鑑定士の専門領域です。

鑑定費用の目安

鑑定費用は各鑑定事務所が独自に定めていますが、多くの事務所は「公共事業に係る不動産鑑定報酬基準」(中央用地対策連絡協議会)を見積りの指標としています。この基準では、不動産の類型と評価額に応じて報酬額が定められており、宅地または建物の所有権(類型A)の基本鑑定報酬額は以下のとおりです。

評価額基本鑑定報酬額(税抜)
1,000万円まで161,000円
3,000万円まで211,000円
5,000万円まで253,000円
8,000万円まで313,000円
1億円まで351,000円

国土交通省が令和6年12月〜令和7年1月に実施した調査では、鑑定評価額8,000万円までの価格帯で、民間の報酬額はこの基準より1〜2割程度高い傾向が認められています。したがって、民間で宅地の鑑定評価を依頼する場合の目安は、評価額3,000万円程度の物件で23万〜25万円、5,000万円程度で28万〜30万円、1億円程度で39万〜42万円(いずれも税抜)となります。

土地と建物を一体で評価する場合や、借地権などの権利関係が絡む場合は、類型が変わるため、これより高くなるのが通常です。実際の費用は物件ごとの事情で変動するため、依頼前に見積りを取って確認するのが確実です。

なお、共有物分割訴訟で裁判所が鑑定を命じた場合の鑑定費用は、まず鑑定を申し立てた当事者が予納し、最終的な負担は訴訟費用の一部として裁判所が定めます。

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