「時価」「路線価」「固定資産税評価額」——どれが共有不動産の本当の値段ですか?

回答

不動産の価格には、市場での取引価格である「時価(実勢価格)」のほか、「公示地価」「路線価」「固定資産税評価額」といった公的な価格があり、それぞれ目的・決定者・評価水準が異なります。どれか1つだけが「本当の値段」というものではありませんが、共有物分割で代償金を算定する際の基準となるのは、原則として時価です。

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それぞれの意味

時価(実勢価格) とは、市場において実際に成立する取引価格のことです。売主と買主の交渉や個別の事情によって変動するため、1つの確定した数字があるわけではありません。

公示地価 とは、国土交通省の土地鑑定委員会が毎年1月1日時点の標準地の価格を評価し、3月に公表するものです(地価公示法2条)。一般の土地取引の指標として用いられます。

基準地価 とは、都道府県が毎年7月1日時点の基準地の価格を評価し、9月に公表するものです(国土利用計画法施行令9条)。公示地価を補完する役割を持ち、評価水準は公示地価とほぼ同程度です。

路線価(相続税路線価) とは、国税庁が毎年1月1日時点で評価し、7月に公表する、道路に面する土地の1平方メートルあたりの価格です。相続税・贈与税を計算するための土地の「相続税評価額」は、原則としてこの路線価をもとに算定されます(相続税法22条、財産評価基本通達)。評価水準は公示地価の約8割が目安とされています。

固定資産税評価額 とは、市町村(東京23区は東京都)が3年ごとの評価替えにより定める価格で、固定資産税・都市計画税のほか、不動産取得税や登録免許税の計算にも用いられます(地方税法341条5号・349条)。評価水準は公示地価の約7割が目安とされています。なお、建物の相続税評価額は、この固定資産税評価額によって算定されます。

4つの価格の違い

項目時価(実勢価格)公示地価路線価固定資産税評価額
決定者市場(取引の当事者)国土交通省国税庁市町村(東京23区は都)
評価時点取引時点毎年1月1日毎年1月1日3年ごとの基準年度
公表時期―毎年3月毎年7月評価替えの年の4月頃
評価水準の目安―(基準そのもの)取引の指標となる正常な価格公示地価の約8割公示地価の約7割
主な用途売買、共有物分割の代償金算定土地取引の指標相続税・贈与税の計算固定資産税・不動産取得税・登録免許税の計算
根拠―地価公示法2条相続税法22条、財産評価基本通達地方税法341条5号・349条

たとえば、公示地価ベースで1,000万円と評価される土地であれば、路線価による評価額は約800万円、固定資産税評価額は約700万円が目安となります。公的な価格はいずれも時価より低めの水準に設定されているのが通常であり、同じ不動産でも「どの物差しで測るか」によって金額が大きく変わります。

実際の取引価格(時価)は、需要の状況や物件の個別性によって公示地価から乖離することも珍しくありません。公示地価や路線価はあくまで標準的な地点・画地を前提とした価格であり、個々の不動産の形状・接道状況・利用状況までは反映しきれないためです。

なお、これらの公的な価格はいずれも土地に関する指標です。建物には公示地価や路線価に相当する指標がなく、課税上は固定資産税評価額が用いられます。

共有不動産の場面ではどの価格を使うべきか

どの価格を使うべきかは、目的によって決まります。相続税の申告であれば路線価をもとにした相続税評価額、固定資産税や登録免許税の計算であれば固定資産税評価額と、税金の計算ではそれぞれの制度が定める評価額を用います。

これに対し、共有物分割の場面で基準となるのは時価です。代償分割(全面的価格賠償=共有者の1人がお金を払って不動産全体を取得する方法)における代償金は、共有不動産の適正な評価額に持分割合を乗じて算定しますが、ここでいう適正な評価額とは、競売を前提とした卸売価格ではなく、市場における取引価格(時価)を意味します。なお、最高裁は、全面的価格賠償が認められるための要件の1つとして、共有物の価格が適正に評価されることを挙げています(最判平成8年10月31日)。

路線価や固定資産税評価額は税金の計算を目的とした価格であり、時価より低い水準に設定されているため、共有物分割の代償金算定にそのまま用いると、持分を手放す側が不利益を受けるおそれがあります。相続税評価額を分割の基準にできるかについては、「共有不動産を分けるとき、価格は相続税の評価額で計算してもいいですか?」で詳しく解説しています。

時価を正確に把握する方法としては、不動産業者による査定のほか、不動産鑑定士による鑑定評価があります。詳しくは「不動産鑑定士に評価を頼むと、どんなメリットがありますか?」をご覧ください。

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