共有者の1人が、他の共有者に無断で不動産全体を売ってしまいました。この売買は有効ですか?

回答

共有不動産全体の売却は変更行為にあたり、共有者全員の同意が必要です(民法251条1項)。共有者の1人が無断で不動産全体を売却した場合、売買契約自体は他人物売買(民法561条)として有効ですが、共有不動産全体の所有権が買主に移転することはありません。移転するのは、売主である共有者が有する持分の範囲にとどまります。

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結論

共有不動産全体を第三者に売却する行為は、共有物の処分(変更行為)にあたり、共有者全員の同意がなければ行うことができません(民法251条1項)。したがって、共有者の1人が他の共有者に無断で不動産全体を売却しても、不動産全体の所有権が買主に移転するという効果は生じません。

ただし、売買契約そのものが無効になるわけではありません。民法は他人の物を売買の目的とすることを認めており(民法561条)、共有者の1人が不動産全体を売る契約を締結した場合も、いわゆる他人物売買として契約自体は有効に成立します。

根拠と条件

共有不動産全体の売却に全員の同意が必要な理由

共有不動産の「変更」(その性質または形状を変える行為、および処分行為)を行うには、共有者全員の同意が必要です(民法251条1項)。不動産全体の売却は、共有者全員の所有権(共有持分権)の帰属に変動を生じさせるものですから、「変更」の中でも最も典型的な行為にあたります。

共有者の1人がこの同意を得ずに不動産全体を売却した場合、他の共有者の持分については無権利者による処分となるため、共有不動産全体の所有権が買主に移転するという物権的な効果は発生しません。

売買契約が「有効」とされる理由

一方で、売買契約という債権契約としての効力は別に考える必要があります。民法561条は、他人の権利を売買の目的とすることを認めています。共有者の1人が不動産全体を売却する契約は、他の共有者の持分部分については他人の権利を目的とする売買(他人物売買)にあたり、契約としては有効に成立します。

ただし、売主となった共有者は、他の共有者の持分を取得して買主に移転する義務を負うことになります。この義務を履行できない場合には、買主は売主に対して債務不履行に基づく損害賠償請求や契約の解除をすることができます。

売主の持分はどうなるか

売買契約が有効に成立している以上、売主である共有者が有する持分については、買主に移転します。つまり、共有不動産全体の所有権は移転しないものの、売主の持分の限度では売買の効力が及ぶことになります。

具体的な場面での適用

たとえば、AとBが土地を各2分の1の持分で共有しているケースで、AがBに無断で土地全体をCに売却したとします。この場合の法律関係は次のとおりです。

  • A・C間の売買契約は、他人物売買として有効に成立します。
  • 土地全体の所有権がCに移転することはありません。Bの持分(2分の1)はBに残ります。
  • Aの持分(2分の1)については、Cに移転します。
  • AはCに対し、Bの持分を取得してCに移転する義務を負いますが、Bが同意しない限りこの義務を履行することはできません。
  • CはAに対して、債務不履行を理由とする損害賠償請求や契約の解除をすることができます。

なお、Aが売却代金を受領した場合、その代金のうちBの持分に相当する部分についてはBに交付する義務を負います。

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