本当です。共有持分の放棄は、民法上は他の共有者による原始取得(民法255条)ですが、税務上は無償で持分が移転したものとして贈与と同じ扱いになります。放棄者・相手方がいずれも個人の場合、持分を取得した他の共有者に贈与税が課され(相続税法9条)、放棄者もその贈与税について連帯納付義務を負います(同法34条4項)。
結論
共有持分の放棄をすると、放棄者は対価を得ないにもかかわらず、税務上の問題が生じるのが通常です。民法上の位置づけと税務上の位置づけが一致しないためです。
民法上、放棄された持分は他の共有者が原始取得します(民法255条)。しかし税務上は、この結果を「無償で財産が移転した」ものととらえ、贈与と同じ扱いをします。そのため、持分を取得した側に贈与税が課され、さらに持分移転登記に伴う登録免許税や不動産取得税も発生します。
根拠と条件
民法上は「原始取得」
共有者の1人が持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。この権利変動の法的性質は、放棄者の持分がいったん消滅し、他の共有者が原始取得するものと理解されています。
放棄は相手方のない単独行為であり、他の共有者の承諾を要しない点で、契約である贈与とは性質が異なります。持分放棄の仕組みそのものについては、「共有持分を放棄して共有関係から抜けることはできますか?」をご覧ください。
税務上は「贈与」とみなされる
これに対して税務では、法律構成ではなく、対価なく財産的利益が移転したという経済的な結果に着目します。その結果、共有持分の放棄は贈与と同じ取扱いを受け、持分を取得した他の共有者に贈与税が課されます(相続税法9条、相続税基本通達9-12)。これを「みなし贈与」といいます。
放棄者自身も、相手方に課された贈与税について連帯納付義務を負います(相続税法34条4項)。放棄したことで完全に無関係になるわけではありません。
放棄者・相手方の属性による課税関係の違い
課される税の種類は、放棄者と相手方(持分を取得する他の共有者)がそれぞれ個人か法人かによって変わります。
| 放棄者 | 相手方 | 放棄者に生じる課税 | 相手方に生じる課税 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|---|
| 個人 | 個人 | なし(贈与税の連帯納付義務を負う) | 贈与税(みなし贈与) | 相続税法9条・相続税基本通達9-12 |
| 個人 | 法人 | みなし譲渡所得税の可能性(見解が分かれる) | 法人税(受贈益) | 所得税法59条1項・法人税法22条2項 |
| 法人 | 個人 | 法人税(譲渡益) | 所得税(一時所得等) | 法人税法22条2項・所得税法34条・所得税法基本通達34-1(5) |
| 法人 | 法人 | 法人税(譲渡益) | 法人税(受贈益) | 法人税法22条2項 |
放棄者が個人・相手方が法人の場合は、特に注意が必要です。所得税法59条1項は、個人が法人に対して資産を贈与し、または著しく低い価額で譲渡したときは、その時の時価に相当する金額で譲渡があったものとみなすと定めています(「著しく低い価額」は時価の2分の1未満を指します。所得税法施行令169条)。持分の放棄は民法上の贈与ではないため、同項が放棄者に適用されるかについては見解が分かれていますが、適用されるとすれば、放棄者は現金を1円も受け取っていないにもかかわらず、持分の時価を基準とした譲渡所得税の課税対象となります。
具体的な場面での適用
個人間で持分を放棄した場合
A・B・C(いずれも個人)が持分3分の1ずつで土地を共有しているケースで、Aが自己の持分を放棄したとします。Aの持分3分の1は、B・Cにそれぞれ6分の1ずつ帰属します。この場合、B・Cは、取得した持分に相当する経済的利益について贈与税の課税対象となります。Aには譲渡所得税は生じませんが、B・Cの贈与税について連帯納付義務を負います。
相手方が同族会社である場合
相手方が法人で、その法人が税法上の同族会社に該当する場合には、課税関係が重なることがあります。持分の取得によって会社の純資産が増加し、放棄者以外の株主が保有する株式の価額が上昇したときは、その株主に対して贈与があったものとみなされ、贈与税が課されることがあります(相続税法9条、相続税基本通達9-2)。放棄者(個人)自身には所得税法59条1項によるみなし譲渡所得税が課される可能性があるため、放棄者と株主の双方に課税が生じ得ます。
なお、法人が放棄者となる場合について、法人が資産を無償または時価より低い価額で譲渡したときは、対価の有無や多寡にかかわらず時価相当額で収益を認識すべきものとされており(法人税法22条2項、東京地判昭和55年10月28日〔法人が役員に上場株式を低額譲渡した事案〕)、法人による持分の放棄も無償による資産の譲渡としてこれと同様に扱われ、譲渡益が生じるものと考えられます。
贈与税以外に生じる税
共有持分の放棄をすると、実体法上は意思表示だけで効果が生じますが、実務上は他の共有者への持分移転登記まで行う必要があります。この登記に伴い、登録免許税が課され(登録免許税法上は、登記を受ける放棄者と持分を取得する共有者が連帯して納付義務を負います。同法3条)、さらに持分を取得する共有者については、不動産の取得として不動産取得税の対象にもなるのが通常です。
また、固定資産税は台帳課税主義がとられているため(地方税法343条2項)、放棄の意思表示をしても持分移転登記が完了しないかぎり、放棄者が納税義務を負い続けることがあります。

