「持分を売るときは、まず他の共有者に声をかける」というルールは作れますか?

回答

共有者の1人が持分を売却する前に、他の共有者へ買取りの機会を与えるという取り決め(先買権・優先購入権)は、共有者全員の合意で設定できます。ただし通常の合意では、破られても損害賠償を請求できるにとどまります。譲渡そのものを止めるには、売買予約(民法556条)と仮登記(不動産登記法105条2号)を組み合わせます。

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結論

共有者の間で、持分を第三者に売る前に他の共有者へ買取りの機会を与えると取り決めることはできます。先買権、優先購入権、優先買取交渉権などと呼ばれるものです。

各共有者は自分の持分を自由に処分でき、他の共有者の同意はいりません。とはいえこれは、法律が共有者に手続を義務づけていないというだけです。共有者どうしが合意で売却の手順を定めることまで禁じられてはいません。

分かれ目になるのは、その取り決めをどこまで守らせられるかです。約束を破って第三者に売られたとき、譲渡そのものを覆せるかどうかは、しくみの作り方で変わります。

根拠と条件

通常の合意だけでは譲渡を覆せない

「持分を売却する前に他の共有者へ通知し、買取りの機会を与える」という合意自体は有効に成立します。ただし契約の効力は、原則として合意した当事者の間にしか及びません。合意に反して第三者へ持分が売られた場合、その譲渡は有効なままで、譲受人は新たな共有者になります。他の共有者にできるのは、約束を破った共有者への損害賠償請求(民法415条)だけです。

共有物についての債権は特定承継人に対しても行使できると定めた民法254条があり、共有物の管理や分割に関する共有者間の取り決めは、この規定により持分の譲受人へ承継されます。先買権の合意は、共有物の管理ではなく持分の処分に関する合意なので、これにあたるかどうかについて確立した扱いがあるとはいえません。合意の効力を第三者に及ぼしたいのであれば、別の手当てをしておくことになります。

売買予約と仮登記による確保

譲渡を実際に食い止める方法として用いられるのが、売買予約(民法556条)と仮登記の組み合わせです。共有者全員が当事者となって、買取りを予定する者を権利者とする売買予約契約を結び、持分移転請求権の仮登記(不動産登記法105条2号)を入れておきます。登記の目的は「持分全部移転請求権仮登記」、登記原因は「年月日売買予約」となります。

仮登記には順位を保全する効力があります(不動産登記法106条)。後から持分を買った第三者や持分を差し押さえた債権者よりも、仮登記の権利者が優先します。予約完結権を行使すれば、仮登記の順位のまま本登記に移せるため、間に入った第三者の登記は効力を失います。共有物分割によって単独所有となった者がいても結論は変わりません。

仮登記が入っていること自体が、持分を買おうとする第三者にとっての大きな支障になります。結果として、持分の譲渡や差押えが起きにくくなります。

売買予約が有効に成立するための条件

売買予約が効力を持つには、売買の目的物と代金が確定しているか、確定できる状態になっていなければなりません。代金は金額で定めるのが通常ですが、時価による旨の定めも認められています。

大審院は、売買の予約が成立するには、目的物と代金が確定できることを要すると判断しています(大判大正12年7月27日)。現行法のもとでも同じ考え方が妥当します。

停止条件を付けた持分移転の合意

近い目的を達するしくみとして、共有者どうしで持分を移転する旨の合意をあらかじめ結んでおき、持分が第三者に譲渡されたときや差押えを受けたときに効力を生じるという停止条件を付ける方法もあります。この場合の登記の目的は「条件付持分全部移転仮登記」となります。

共有物分割禁止特約との違い

持分が外部に出るのを防ぐ先買権と、共有物分割そのものを止める共有物分割禁止特約(=一定期間は分割を請求しないと決めておく合意)は、目的も条文上の位置づけも異なります。

先買権(優先購入権)の合意共有物分割禁止特約
根拠契約自由の原則民法256条1項ただし書
止めるもの持分が第三者に渡ること共有物分割請求
期間制限法律上の定めなし最長5年、更新後も5年(民法256条2項)
第三者への効力仮登記により確保登記により持分の譲受人に対抗(不動産登記法59条6号)
持分の譲渡・差押え禁止するものではない禁止するものではない

どちらも持分の譲渡や差押えを直接禁じるものではありませんが、止める対象が違います。目的が重ならないため、両方を併せて設定してもかまいません。共有物分割禁止特約の期間や登記については、「「しばらくは分割しない」と共有者全員で約束することはできますか?」で解説しています。

具体的な場面での適用

A・B・Cが持分3分の1ずつで建物を共有し、「持分を売却するときは他の共有者に先に買取りを申し出る」と合意している場合を考えます。

Bがこの合意を無視して第三者Dに持分を売ったとき、合意しかなければDへの譲渡は有効です。Dは3分の1の持分を持つ共有者となり、A・CはBに損害賠償を請求できるにとどまります。

これに対し、Bの持分についてAを権利者とする売買予約の仮登記を入れてあれば、Aが予約完結権を行使することでDより先にBの持分を取得できます。Bの持分が差し押さえられて競売にかけられた場合も同じです。共有者が互いを権利者として設定し合っておく方法もあります。

親族間の共有で持分が親族以外へ流出するのを避けたい場合や、共同で事業に使っている不動産に関係者以外が共有者として加わるのを避けたい場合に用いられます。

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