山林・原野・雑種地の調査はどのようにしたらいいですか?

回答

山林・原野・雑種地は、まず不動産の所在する各市区町村で名寄帳を取得し、登記事項証明書固定資産評価証明書と照合して把握するのが基本です。これらの地目の土地は地方や被相続人の出身地に所在することが多く、課税標準額が30万円未満で固定資産税が課税されていない土地(免税点・地方税法351条)は固定資産税の納税通知書に記載されないため、名寄帳での確認が欠かせません。取得後は、①登記地目・現況地目・課税地目の照合、②地積(縄延び・縄縮み)、③共有持分の有無、④保安林・市街化調整区域等の制限、⑤賃借権・未登記建物等の有無を確認します。いずれもご自身で手続できます。

目次

調査・手続の概要

「山林」「原野」「牧場」「池沼」「雑種地」は、いずれも宅地・田・畑とは異なる地目です。不動産登記上の地目は23種類に区分されており(不動産登記規則99条)、その具体的な意味は不動産登記事務取扱手続準則68条・69条で定められています。

  • 山林……耕作の方法によらないで竹木の生育する土地
  • 原野……耕作の方法によらないで雑草、かん木類の生育する土地
  • 牧場……家畜を放牧する土地
  • 池沼……かんがい用水でない水の貯留池
  • 雑種地……上記のいずれにも該当しない土地(駐車場、資材置場、ゴルフ場、運動場、鉄軌道用地、変電所敷地など)

これらの地目の土地は、相続調査で見落とされやすいという共通の特徴があります。理由は大きく二つあります。

一つは、被相続人の自宅から離れた地方や、被相続人の本籍地・出身地に所在することが多いためです。先祖代々の山林や、かつて農地だった原野などが典型です。

もう一つは、評価額が低く、固定資産税が課税されていない場合があるためです。同一市区町村内で同一人が所有する土地の課税標準額の合計が30万円未満のときは、固定資産税を課することができません(免税点・地方税法351条)。免税点未満の土地は固定資産税の納税通知書(課税明細書)に記載されないことがあり、納税通知書だけを手がかりにすると、これらの土地が丸ごと調査から抜け落ちてしまいます。

そこで、これらの地目の土地の調査では、課税・非課税を問わずその自治体内の所有不動産を一覧できる名寄帳を起点とし、登記事項証明書で権利関係を、固定資産評価証明書で評価額・課税地目を、公図・地積測量図・地形図で位置・形状・現況を確認していきます。この調査によって、被相続人がどこに、どれだけの面積の、どのような制限のある土地を持っていたかが分かります。

申請主体・申請先・必要書類

相続人は、相続関係を証する戸籍等を示すことで、被相続人名義の不動産について以下の資料を取得できます。主な資料と申請先は次のとおりです。

資料申請先確認できること
名寄帳不動産が所在する市区町村の税務担当課(東京23区は都税事務所)その自治体内の被相続人名義の全不動産を一覧で把握。非課税・免税点未満の物件も含めて請求する
登記事項証明書(登記簿謄本)全国いずれの法務局でも取得可/オンライン請求可地目・地積、所有権の履歴(甲区)、抵当権・賃借権等の権利関係(乙区)
固定資産評価証明書不動産が所在する市区町村の税務担当課(都税事務所)固定資産税評価額、課税地目、地積
公図・地積測量図管轄法務局/登記情報提供サービス土地のおおよその位置・形状、隣地との関係
地形図(地理院地図)国土地理院(無料・オンライン)傾斜・高低差・土地利用状況(山林・原野の現況把握に有用)
林地台帳・森林の土地に関する地図森林が所在する市町村の林務担当課森林の所在地番・面積等(森林法191条の4)。※下記の注意点参照
森林簿都道府県の林務担当課森林の面積・樹種・林齢等。※証明力はなく、取扱いは都道府県により異なる

名寄帳・固定資産評価証明書の請求には、被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本、相続人であることが分かる戸籍謄本、請求者の本人確認書類等が必要です。必要書類は自治体により多少異なるため、請求先の市区町村の案内で事前にご確認ください。なお、法定相続情報一覧図の写しがあれば、戸籍一式の提出に代えられます。

申請の流れ

  1. 名寄帳を取得する。
    被相続人の住所地・本籍地・出身地など、関係しそうな市区町村ごとに請求します。このとき、非課税物件・免税点未満の物件も含めて記載してもらうよう明示します(課税物件のみを記載する様式の自治体があるため)。これにより、その自治体内の所有不動産が一覧で把握できます。
  2. 登記事項証明書を取得する。
    名寄帳で判明した地番ごとに取得し、地目・地積と権利関係(甲区・乙区)を確認します。全国どの法務局でも取得でき、自宅から登記・供託オンライン申請システムで請求することもできます。
  3. 固定資産評価証明書を取得する。
    評価額と課税地目を確認します。名寄帳と同じ窓口で同時に取得できます。
  4. 公図・地積測量図・地形図で位置と現況を確認する。
    山林・原野は現地に立ち入りにくいことが多いため、まず地理院地図で傾斜・土地利用を確認すると効率的です。
  5. 山林については、林地台帳・森林簿で補完する。
    面積・樹種・制限の有無などを確認します。

費用・所要期間の目安: 名寄帳・固定資産評価証明書は窓口なら即日、郵送なら1〜2週間程度で、手数料は1件あたり数百円です。登記事項証明書は書面請求で1通600円程度です(最新額は法務省・登記手数料のページおよび登記情報提供サービスでご確認ください)。

取得した書類で確認すべき項目

① 地目の照合(登記地目・現況地目・課税地目)

土地には、登記簿上の地目(登記地目)実際の利用状況による地目(現況地目)固定資産税の課税上の地目(課税地目)という、性格の異なる3つの地目が併存し得ます。地目は用途が変わっても自動的には書き換わらないため、登記地目が「山林」のままでも、現況は資材置場(雑種地)や宅地になっていることがあります。逆に、登記地目が「原野」でも、固定資産評価証明書の課税地目が「雑種地」とされていることもあります。

調査としては、登記事項証明書の地目・固定資産評価証明書の課税地目・地形図や航空写真から読み取れる現況の3つを照合し、ずれがないかを確認します。ずれがある場合、その土地の実際の価値や利用可能性が、登記地目から受ける印象と大きく異なる可能性があり、後の評価や分割の前提が変わってきます。

② 地積(縄延び・縄縮み)

山林・原野では、登記簿上の面積(公簿面積)と実際の面積が一致しないことが珍しくありません。一般に、実測面積が公簿面積より大きい縄延びの傾向があるとされ、規模が大きく測量費用がかさむため実測されないまま放置されている土地が多いためです。登記事項証明書の地積はあくまで参考と捉え、地積測量図がある場合はそれを優先し、ない場合は地形図・公図と照合して位置と範囲を把握します。面積の前提が曖昧なまま分割協議を進めると、後で実態が判明したときに不公平感が生じます。

③ 共有持分の有無(甲区)

先祖伝来の山林・原野は、過去の相続で複数の相続人の共有のまま登記されている例が多く見られます。登記事項証明書の甲区(所有権に関する事項)で、被相続人が単独所有なのか、持分での共有なのかを必ず確認します。被相続人の持分のみが相続の対象です。共有の場合、共有者の中に既に亡くなっている方がいると、その相続人にまで権利が広がっており、関係者が多数に及んでいることがあります。

④ 各種制限の有無(保安林・市街化調整区域等)

山林・原野・雑種地には、法令上の制限がかかっていることがあります。たとえば保安林に指定された山林は伐採・転用が制限され、市街化調整区域内の土地は原則として建築が制限されます。これらの制限は、土地の利用可能性・換価可能性を大きく左右します。確認方法は、保安林等の指定の有無は登記事項証明書の地目(「保安林」と登記されることがあります)や都道府県の林務担当課・森林簿で、市街化調整区域内かどうかは市区町村の都市計画図で確認します。制限の有無は、後述のとおり遺産分割の際の評価協議に直接影響します。

⑤ 賃借権・地上権・分収林契約等の有無(乙区)

その土地に他人の権利が設定されていないかを、登記事項証明書の乙区(所有権以外の権利に関する事項)で確認します。山林では、土地所有者と造林・育林を行う者との間で分収林契約(収益を一定割合で分け合う契約)が結ばれ、これに基づく地上権や賃借権が設定されていることがあります。雑種地では、資材置場・駐車場等として第三者に賃貸されている例があります。他人の権利が乗っている土地は、被相続人が自由に使える土地とは性質が異なり、賃料収入や契約関係も相続の対象になります。

⑥ 未登記建物・付属物の有無

雑種地や山林の一角に、登記されていない作業小屋・物置・残置物などがあることがあります。登記には現れないため、現地写真・航空写真で現況を確認し、固定資産評価証明書に家屋の記載がないかも併せて確認します。

これらの確認結果は、いずれも単なる調査の備忘にとどまらず、後の遺産分割協議や評価の前提となります。特に①の地目のずれ、②の面積、④の制限は、相続人の間で評価額をめぐる認識の差を生みやすい項目です。

参考リンク

林地台帳・森林簿の注意点: 林地台帳は森林法191条の4に基づき市町村が整備する台帳ですが、その公表は原則として市町村窓口での閲覧によるものとされ、登記簿上の所有者・現所有者の氏名等は公表対象外とされています。また林地台帳・森林簿はいずれも土地の所有権の帰属や境界を確定・証明するものではありません。閲覧できる範囲や申請者の資格は市町村・都道府県により異なるため、所在地の窓口でご確認ください。

相続トラブルに備えたアドバイス

被相続人の本籍地・出身地の自治体への照会

被相続人の本籍地・出身地の自治体へも並行して照会することをお勧めします。 名寄帳は自治体ごとにしか取得できないため、被相続人の住所地の自治体だけを調べても、地方に所在する不動産は把握できません。被相続人が地方の出身であれば、本籍地・出身地、かつての勤務地や転居先など、関係しそうな市区町村に並行して名寄帳を請求することが、漏れを防ぐうえで有効です。戸籍を遡って本籍地の変遷を確認しておくと、照会先の見当をつけやすくなります。

不動産の漏れに注意

不動産の漏れは、遺産分割協議の蒸し返しにつながる点に特に注意が必要です。 遺産分割協議が成立した後に、調査から漏れていた山林等が新たに見つかると、その財産について改めて協議をやり直す必要が生じ、相続人の関係が再びこじれる原因になります。漏れていた財産の重要性によっては、既に成立した協議全体の効力が争われることもあります。こうした事態を避ける最善の方法は、協議の前に名寄帳と登記で網羅的に調査を尽くしておくことです。

共有持分の処理

共有のまま放置すると、次の相続で権利関係がさらに複雑になります。 先祖伝来の山林・原野が共有のまま残っている場合、今回の相続で持分の帰属を整理しないままにすると、共有者が次々と亡くなるたびに相続人が増え、いずれ連絡もつかない多数の共有者で土地を持つことになりかねません。調査の段階で甲区の共有関係を正確に把握し、この機会に持分をどう扱うかを協議の俎上に載せておくことが望まれます。

評価が難しいことを意識する

換価しにくく制限のある土地ほど、評価をめぐって意見が割れやすいことを念頭に置いてください。 保安林・市街化調整区域内の土地や急傾斜の山林は、売却が難しく、また法令上の制限のために評価額の見方も分かれがちです。相続人の一人が「ほとんど価値がない」と考え、別の相続人が「いや価値はある」と考えれば、誰がどの土地を取得するかの協議は難航します。

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