マンション(区分所有建物・敷地権)の調査はどのようにしたらいいですか?

回答

マンションの相続調査は、区分建物の登記事項証明書を法務局で取得し、「一棟の建物の表示」「専有部分の建物の表示」「敷地権の目的である土地の表示」「敷地権の表示」の4つの欄を読み解くことが中心です(建物の区分所有等に関する法律、不動産登記法44条1項9号・46条)。確認すべき主要項目は、(1)専有部分の家屋番号と部屋番号、(2)専有部分の床面積(内法面積)、(3)敷地権の種類(所有権・地上権・賃借権)と割合、(4)権利部(甲区・乙区)の所有権・抵当権、(5)規約共用部分(集会室・トランクルーム等)の登記の有無です。登記に表れない管理費・修繕積立金の状況や共用部分の持分の定めは、管理規約や管理組合への照会で確認します。

目次

調査・手続の概要

マンション(分譲マンション)は、一棟の建物の中に独立した複数の部屋があり、各部屋を別々の人が所有する建物です。このような建物を「区分所有建物」、各部屋の所有権を「区分所有権」といい、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)が適用されます。各部屋(専有部分)は、構造上区分され、独立して住居等の用途に供することができる部分である必要があります(区分所有法1条)。

戸建住宅と異なり、マンションの権利は次の二つから構成される点に調査上の特徴があります。

第一に、各部屋そのものの所有権である専有部分の所有権です(区分所有法2条3項)。廊下・階段・エレベーター等は区分所有者全員の共有となる共用部分で、その持分は原則として専有部分の床面積の割合によります(区分所有法2条4項、14条)。

第二に、マンションが建っている土地を利用する権利である敷地利用権です(区分所有法2条6項)。敷地利用権は通常は土地の所有権(共有持分)ですが、土地を借りて建てている場合には地上権や賃借権のこともあります。

そして、敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合、区分所有者は専有部分とその敷地利用権を分離して処分することができません(区分所有法22条1項。規約に別段の定めがある場合を除く)。この分離処分が禁止される敷地利用権で、登記されたものを敷地権といい、区分建物の登記記録の表題部に記録されます(不動産登記法44条1項9号)。

したがってマンションの相続調査では、区分建物の登記事項証明書を取得して専有部分と敷地権を一体で把握することが出発点となります。あわせて、登記には表れない共用部分の持分の定めや管理費・修繕積立金の状況を、管理規約や管理組合への照会で確認します。

申請主体・申請先・必要書類

マンションの調査で取得する主な資料と取得先は次のとおりです。登記事項証明書は誰でも取得でき、相続人であることを示す戸籍等は不要です。

取得する資料申請先申請できる人確認できること
区分建物の登記事項証明書全国の法務局(窓口・郵送・オンライン)誰でも取得可専有部分の特定、敷地権の有無・種類・割合、所有権・抵当権
建物図面・各階平面図、公図物件所在地を管轄する法務局誰でも取得可専有部分の位置・形状、敷地の形状
固定資産評価証明書・名寄帳物件所在地の市区町村(東京23区は都税事務所)相続人等(戸籍等の提示が必要)評価額、課税対象となっている不動産の一覧
管理規約・使用細則管理組合・管理会社区分所有者(相続人)共用部分の範囲、専用使用権、持分の定め
総会議事録・管理費等の状況管理組合・管理会社区分所有者(相続人)管理費・修繕積立金の額、滞納の有無、大規模修繕の予定
建物賃貸借契約書(賃貸中の場合)被相続人の保管書類・管理会社賃料、敷金・保証金、契約当事者

申請の流れ

マンションの登記事項証明書は、次の手順で自分で取得できます。

ステップ1:家屋番号を特定する

マンションの専有部分には、部屋ごとに家屋番号(枝番が付くのが一般的)が割り当てられています。家屋番号は、固定資産税の納税通知書・課税明細書、名寄帳、登記済証(権利証)・登記識別情報通知などで確認できます。これらが手元にない場合は、登記情報提供サービスや法務局でマンション名・所在から検索して特定します。

ステップ2:登記事項証明書を請求する

家屋番号が分かれば、(a)法務局の窓口、(b)郵送、(c)登記・供託オンライン申請システムによるオンライン請求のいずれかで取得できます。手数料は、書面請求(窓口・郵送)が1通600円、オンライン請求は郵送受取が520円、窓口受取が490円です(2025年4月1日改定。※最新の手数料は法務省の案内ページで要確認)。記載内容を確認するだけであれば、登記情報提供サービスでの閲覧(全部事項331円。令和6年〔2024年〕4月1日改定)も利用できます。取得までの目安は、窓口なら即日、郵送なら数日から1週間程度です。

ステップ3:管理組合・管理会社へ照会する

管理規約・使用細則、直近の総会議事録、管理費・修繕積立金の額と滞納の有無について、管理組合または管理会社に照会します。区分所有者である被相続人の地位を相続人が承継しているため、相続人として照会できます。

ステップ4:必要に応じて図面・評価資料を取得する

専有部分の位置・形状を確認する場合は建物図面・各階平面図を、評価額を把握する場合は固定資産評価証明書・名寄帳を取得します。

マンションの登記事項証明書で確認すべき項目

マンションの相続調査の核心は、区分建物の登記事項証明書(登記記録)を正しく読み解くことです。戸建住宅の登記記録とは構成が異なり、表題部が「一棟の建物の表示」と「専有部分の建物の表示」の二段構えになっている点が最大の特徴です。確認すべき主要項目を整理します。

確認する欄主な記載事項読み取りのポイント
一棟の建物の表示所在(敷地の地番)、建物の名称(通称名)、構造・床面積マンション全体を特定する欄。所在地番・建物名称が手元の書類と一致するか
敷地権の目的である土地の表示土地の所在・地番・地目・地積敷地権が設定されている場合に表示。敷地が複数筆にわたることもある
専有部分の建物の表示家屋番号、建物の番号(部屋番号)、種類・構造、床面積調査対象の部屋を特定する欄。床面積は内法面積(壁の内側)で表示
敷地権の表示敷地権の種類(所有権・地上権・賃借権)、敷地権の割合敷地利用権の内容と割合。専有部分と一体で相続される
権利部(甲区)所有権の登記名義人、持分被相続人名義であること、共有でないかを確認
権利部(乙区)抵当権・根抵当権等住宅ローン等の担保権の有無。負債調査とも連動

各欄について、調査上のポイントを補足します。

一棟の建物の表示は、マンション全体を特定する欄です。冒頭に専有部分の家屋番号が一覧表示され、続いて所在(敷地の地番)、建物の名称(「○○マンション」等の通称名)、構造・床面積が記録されます。手元の納税通知書や売買契約書の物件と一致するかを照合します。

敷地権の目的である土地の表示は、敷地権が設定されている場合に一棟の建物の表題部に置かれる欄で、土地の所在・地番・地目・地積が記録されます。マンションの敷地が複数の筆(土地の単位)にわたることもあるため、すべての土地を把握します。

専有部分の建物の表示は、調査対象の部屋そのものを特定する欄です。専有部分は独立した一個の建物として扱われるため家屋番号が付き、建物の番号として部屋番号が記録されます。床面積は内法面積(壁の内側を基準とした面積)で登記されており、課税上もこの登記簿面積が用いられます。販売時のパンフレットや建築図面に記載された壁芯面積(壁の中心を基準とした面積)とは数値が異なる点に注意が必要です。トランクルーム等がある場合は附属建物として記載されることがあります。

敷地権の表示は、専有部分の表題部に置かれ、敷地権の種類(所有権・地上権・賃借権)と敷地権の割合が記録されます。敷地権が設定されている場合、専有部分の所有権を相続すると、これと一体のものとして敷地権も相続されます。逆に、この欄が存在しないマンション(後述)では、土地の権利が別の登記記録で管理されているため、別途の確認が必要になります。

権利部(甲区・乙区)には、所有権の登記名義人や抵当権等が記録されます。被相続人の単独名義か共有かを甲区で確認し、乙区で住宅ローン等の担保権の有無を確認します。

このほか、集会室・管理人室・トランクルーム等が規約共用部分とされている場合には、その建物について「共用部分である旨」の登記がされることがあります(不動産登記法44条1項6号)。

最後に、登記には表れない事項を管理規約等で補います。共用部分の持分やトランクルーム等の持分が、床面積割合とは異なる割合で各住戸に別途定められている場合があります(区分所有法14条4項により規約で別段の定めが可能)。また、管理費・修繕積立金の額や滞納の有無は登記事項ではないため、管理規約・総会議事録・管理組合への照会で確認します。これらは後の財産の整理や評価に影響するため、登記の確認とあわせて押さえておくことが望まれます。

参考リンク

相続トラブルに備えたアドバイス

敷地権が設定されていないマンションは土地の登記を別に確認する

昭和58年の区分所有法・不動産登記法の改正前に登記された古いマンションなどでは、敷地権が設定されておらず、専有部分(建物)の登記記録と、敷地(土地)の共有持分の登記記録が別々に存在することがあります。この場合、登記事項証明書に「敷地権の表示」の欄がありません。建物の登記だけを確認して土地の共有持分を見落とすと、相続財産の把握から土地が漏れるおそれがあります。「敷地権の表示」の欄がない場合は、土地の登記事項証明書を別途取得し、被相続人の共有持分を確認することをお勧めします。

敷地権の割合と共用部分の持分を控えておく

敷地権の割合や共用部分の持分は、相続する権利の内容そのものです。後の遺産分割で複数の相続人が関わる場合や、評価・換価の検討に進む場合に必要となるため、登記事項証明書と管理規約から正確に控えておくことが望まれます。

管理費・修繕積立金の滞納は相続人に承継される

管理費・修繕積立金の滞納がある場合、その支払義務は相続によって相続人に承継されます。国土交通省のマンション標準管理規約でも、管理組合が管理費等について有する債権は区分所有者の包括承継人(相続人)に対しても行使できると定められています(標準管理規約26条参照)。調査の段階で滞納の有無と金額を管理組合・管理会社に確認しておくと、承継される債務を踏まえた財産の整理ができます。

賃貸中のマンションは賃貸借契約の内容も確認する

被相続人がマンションを賃貸していた場合は、賃料収入のほか、預かっている敷金・保証金の返還義務も相続の対象となります。賃貸借契約書で契約当事者・賃料・敷金等を確認しておきます。

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