戸建住宅の調査は、法務局で建物の登記事項証明書・公図・建物図面を取得し、市区町村で固定資産税評価証明書・名寄帳を取得して、両者を照合する形で進めます。建物は取得・新築から1か月以内の表題登記、増改築から1か月以内の変更登記が義務とされていますが(不動産登記法47条・51条)、実際には未登記建物や未登記の増築部分が残っていることが少なくありません。登記簿に載らない未登記建物も固定資産税の課税対象として家屋補充課税台帳・名寄帳に登録されるため(地方税法341条・381条)、登記事項証明書と名寄帳の突き合わせが、戸建住宅の遺産の見落としを防ぐ要点になります。主に確認すべきは、(1)種類・構造、(2)床面積と現況の一致、(3)附属建物、(4)未登記建物・未登記増築部分、(5)二世帯住宅などの権利関係の5点です。
戸建住宅の調査の概要
戸建住宅の調査とは、被相続人名義の一戸建てについて、その所在・種類・構造・床面積・所有関係を公的書類で確認し、あわせて登記簿の記載と建物の現況とが一致しているかを検討する作業です。単に登記事項証明書を1通取得して終わりではなく、登記簿に表れていない未登記建物や増築部分がないかまで踏み込む点に、相続調査としての意味があります。
戸建住宅は、注文住宅・新築分譲住宅・中古住宅に分けられます。注文住宅では、建築主であった被相続人の手元に建築確認申請書・建築請負契約書・建物設計図書・検査済証などが残っていることが多く、建物の内容を把握しやすい傾向があります。一方、中古住宅を購入した場合には設計図面等が残っていないことが多く、公的書類からの確認が中心になります。手元資料の有無によって調査の進め方が変わるため、まず相続人が保管している資料を確認したうえで、不足分を公的書類で補うのが効率的です。
建物の物理的な状況(所在・種類・構造・床面積など)は、登記記録の表題部に記録されます。新築した建物や表題登記のない建物を取得した者は、その取得日から1か月以内に表題登記を申請する義務があり(不動産登記法47条1項)、種類・構造・床面積などに変更が生じたときも、変更の日から1か月以内に変更登記を申請する義務があります(同法51条1項)。もっとも、これらの義務に違反しても過料の対象とされている(同法164条)にとどまり、現実には未登記のまま放置された建物や、増改築が登記に反映されていない建物が多く存在します。戸建住宅の調査では、この「登記と現況のずれ」を前提に確認を進めることが重要です。
申請主体・申請先・必要書類
戸建住宅の調査で取得・確認する主な書類は、次のとおりです。相続人であれば、いずれもご自身で取得できます。
| 書類 | 申請先・入手元 | 何が分かるか | 主な必要書類・費用 |
|---|---|---|---|
| 建物の登記事項証明書 | 全国の法務局(登記所)の窓口、郵送、オンライン | 建物の所在・家屋番号・種類・構造・床面積・所有者・抵当権等 | 申請書(地番・家屋番号が必要)。窓口600円/オンライン郵送520円/オンライン窓口490円(1通) |
| 公図・建物図面・各階平面図 | 同上 | 土地・建物の位置・形状、敷地との関係 | 地番が必要。手数料は別途 |
| 固定資産税評価証明書 | 物件所在地の市区町村役場(税務課)・都税事務所(東京23区) | 建物の評価額・床面積・種類等。未登記建物が記載される場合がある | 被相続人との相続関係を示す戸籍等、申請者の本人確認書類。手数料は自治体ごとに異なる |
| 名寄帳(固定資産課税台帳の写し) | 同上 | 同一市区町村内の被相続人名義の全不動産の一覧。未登記建物も把握しやすい | 同上(取得方法の詳細はqa14参照) |
| 建築確認申請書・建築請負契約書 | 相続人の保管資料 | 建物の配置・面積・用途地域、請負金額・追加工事・外構工事 | 手元資料の確認 |
| 住宅地図・航空写真 | 市販(図書館)、地図検索サイト等 | 現地の利用状況・周辺環境 | — |
費用は変動するため、登記事項証明書の最新の手数料は法務省・法務局の公式ページで、固定資産税評価証明書の手数料は各自治体の案内でご確認ください。
※固定資産税評価証明書・名寄帳における未登記建物の記載の有無や様式は、市区町村によって取扱いが異なります。記載がない場合でも、現地調査(後述)で建物の存在を確認できることがあります。
調査の流れ
戸建住宅の調査は、おおむね次の順序で進めます。
- 地番・家屋番号の把握
登記事項証明書を取得するには、住所(住居表示)ではなく地番・家屋番号が必要です。固定資産税の納税通知書・名寄帳、権利証(登記済証・登記識別情報)、あるいは登記情報提供サービス(オンライン)の地図検索などから確認します。 - 登記事項証明書・公図・建物図面の取得
法務局の窓口・郵送のほか、登記・供託オンライン申請システムから請求できます。戸建住宅では、登記事項証明書・公図・建物図面の3点を取得しておくと、建物と敷地の関係まで確認できます。 - 固定資産税評価証明書・名寄帳の取得
物件所在地の市区町村(東京23区は都税事務所)で取得します。名寄帳はその市区町村内の被相続人名義の不動産が一覧になるため、登記事項証明書では把握しきれない物件の発見に役立ちます。 - 手元資料の確認
相続人が保管している建築確認申請書・建築請負契約書・設計図書等があれば、登記簿・固定資産税評価証明書の記載と照らし合わせます。 - 必要に応じた現地確認
登記簿・名寄帳と現況に食い違いがありそうな場合は、現地で建物の配置・利用状況(空き家・賃貸・転貸の有無等)を確認します。
取得した書類で確認すべき項目
所在・家屋番号
建物の表題部には、所在(土地の場合と異なり「○○番地○○」のように地番まで)と家屋番号が記録されます。家屋番号は建物を特定する番号で、通常は敷地の地番と同じ番号が用いられますが、1筆の土地に複数の建物がある場合は枝番(「5番の1」「5番の2」など)が付されます(不動産登記規則112条)。古い物件では、後から土地が分筆されるなどして家屋番号と現在の地番が一致しないことがあり、登記事項証明書の取得時に物件を取り違える原因になります。所在・家屋番号と固定資産税評価証明書・名寄帳の表示が同じ建物を指しているかを、まず確認します。
種類(用途)
種類は建物の用途を示し、居宅・店舗・工場・倉庫などがあります。1階が店舗で2階以上が住居といった場合には「居宅兼店舗」のように併記され、用途面積の大きい方が先に表示されます。被相続人が自宅の一部を賃貸・店舗・事務所に使っていた場合、登記上の種類と実際の利用が異なることがあります。種類は、後の評価や利用状況の把握に関わるため、現況と照らして確認します。
構造・階数
構造の欄には、木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造などの主要構造、屋根の状況、平屋建・2階建といった階数が表示されます。増築によって階数が増えていたり、構造が変わっていたりする場合は、登記が現況に追いついていない可能性があります。
床面積と現況の一致(増改築の有無)
床面積は各階ごとに平方メートル単位(小数点以下第2位まで)で表示されます(不動産登記規則115条)。なお、天井の高さが1.5メートル未満の地階・屋階(ロフト等)は床面積に算入されない取扱いです(不動産登記事務取扱手続準則82条)。
戸建住宅の調査で特に注意したいのが、増改築が登記に反映されているかです。床面積の増減があった場合、本来は変更登記をしなければなりませんが(不動産登記法51条1項)、これがされないまま現況と登記簿上の床面積がずれている例が多く見られます。登記簿上の床面積と、固定資産税評価証明書上の床面積・現況とを比較し、食い違いがあれば未登記の増築部分が存在する可能性を疑います。床面積の差は、後の評価額の算定や、相続後に売却・建替えをする際の登記の要否に影響します。
附属建物
表題部には、主たる建物のほかに附属建物を記録する欄が別に設けられています。附属建物とは、表題登記がある建物に附属し、その建物と一体のものとして1個の建物として登記されるものをいい(不動産登記法2条23号)、母屋に対する物置・車庫・納屋などがこれにあたります。附属建物がある場合は符号(1、2…)を付して表示されます(同法44条1項5号)。物置や車庫が母屋とは別棟に建っていても、登記上は附属建物として母屋に含めて1個の建物として扱われていることがあります。附属建物の有無と内容を確認しないと、敷地内の建物の一部を見落とすおそれがあります。
未登記建物・未登記増築部分の確認
戸建住宅の調査で最も見落としやすいのが、そもそも登記されていない建物(未登記建物)です。登記事項証明書を取得しても、未登記の建物や未登記の増築部分は登記簿に表れません。
そこで手がかりになるのが、固定資産税の課税台帳です。固定資産税は登記の有無にかかわらず課税されるため、登記簿に登記されていない家屋も「家屋補充課税台帳」に登録され(地方税法341条13号・381条4項)、これを含む固定資産課税台帳(土地課税台帳・土地補充課税台帳・家屋課税台帳・家屋補充課税台帳等の総称。同法341条9号)の写しが名寄帳です。つまり、登記事項証明書に出てこない建物でも、固定資産税が課されていれば名寄帳・固定資産税評価証明書に記載されていることが多く、両者を突き合わせることで未登記建物の存在に気づくことができます。
ただし、未登記家屋の名寄帳・評価証明書への記載の有無や表示の仕方は市区町村によって異なります。記載が見当たらない場合でも、現地の建物・航空写真・住宅地図と照らして、登記にも課税台帳にも表れていない建物がないかを確認すると安全です。
二世帯住宅・連棟建物の権利関係
二世帯住宅や連棟(長屋)形式の建物では、建物全体が1個の建物として一人の名義になっているのか、構造上・利用上区分された区分所有建物として複数の名義に分かれているのかを確認します。所有者が同一であれば問題は生じにくいものの、区分所有されていて所有者が異なる場合は、専有部分のほかに共用部分の扱いも確認する必要があります。登記事項証明書(必要に応じて区分建物としての登記)で、どの範囲が被相続人の所有かを特定します。
参考リンク
- 法務省:登記手数料について
- 登記・供託オンライン申請システム
- 登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です(法務局)
- 登記情報提供サービス
- 不動産登記法(e-Gov法令検索)
- 地方税法(e-Gov法令検索)
相続トラブルに備えたアドバイス
未登記建物・増築部分の見落としに注意する
未登記建物や未登記の増築部分は、登記事項証明書だけを見ていると遺産の一覧から抜け落ちます。遺産の一部を見落としたまま遺産分割協議を成立させてしまうと、後から建物が発見された場合に、その財産について協議をやり直す必要が生じたり、協議全体の有効性が争われたりするおそれがあります。登記事項証明書と名寄帳・固定資産税評価証明書を必ず突き合わせ、可能であれば現況も確認することをお勧めします。
登記面積と現況のずれは評価と手続の両面に影響する
登記簿上の床面積と現況の床面積が異なる場合、固定資産税評価額の基礎となる面積と登記面積が食い違うことがあり、遺産の評価額をめぐって相続人間の認識がずれる原因になります。また、相続を機に建物を売却・担保提供する際には、増築部分の表題部変更登記や未登記建物の表題登記が前提として求められることがあります。早い段階で面積のずれの有無を把握しておくと、後の手続をスムーズに進められます。なお、相続が発生した不動産については、相続による取得を知った日から3年以内の相続登記が義務化されています(2024年4月施行)。未登記建物については、登記名義を移す前提として、まず表題登記が必要になる点にも留意が必要です。
附属建物の見落としに注意する
物置・車庫などが附属建物として母屋に含めて登記されている場合、登記上は母屋と一体の1個の建物として扱われます。附属建物の存在を見落とすと、敷地内の建物の一部を遺産から漏らしてしまうおそれがあります。表題部の附属建物欄まで確認し、現地の建物との対応関係を整理しておくことが望まれます。
二世帯住宅・共有名義は紛争化しやすい
二世帯住宅や、被相続人と他の相続人が共有していた建物は、誰がどの範囲を所有していたのか、区分所有か共有かによって、その後の分割方法が大きく変わります。共有持分や区分所有関係の確認を怠ると、分割協議が難航する原因になります。

