投資信託の調査はどのようにしたらいいですか?

回答

投資信託の調査は、(1)取引残高報告書等の郵送物や通帳の分配金入金から販売会社(証券会社・銀行等)を特定し、(2)死亡日基準の残高証明書を請求してファンド名・口数・基準価額・口座区分・MRF残高を確認する流れで進めます。取引残高報告書は残高があれば年1回以上交付されます。ETF以外の一般の投資信託は、証券保管振替機構(ほふり)の開示請求では口座が判明しない点に注意してください。

目次

調査・手続の概要

投資信託(証券投資信託)とは、販売会社が多くの投資家から集めた資金をひとつの信託財産にまとめ、運用会社(委託会社)が株式や債券などに投資して、その運用成果を投資家に分配する金融商品です。

相続調査の観点でまず押さえておきたいのは、販売チャネルの広さです。投資信託は証券会社だけでなく、銀行・信用金庫・ゆうちょ銀行などでも販売されているため、「証券会社と付き合いがなかったから有価証券はない」とは言い切れません。預貯金の調査と並行して、投資信託口座の有無も意識的に確認する必要があります。

また、上場株式の調査で有力な手段となる証券保管振替機構(ほふり)への登録済加入者情報の開示請求は、対象が上場株式・ETF・REITなどの「振替株式等」に限られ、上場されていない一般の投資信託の口座は開示の対象に含まれていません。そのため、ETF(上場投資信託)を除く投資信託については、自宅資料や通帳などの手がかりから販売会社を特定する作業が調査の中心になります。

販売会社が特定できれば、死亡日(相続開始日)を基準日とする残高証明書の発行を受けることで、保有していたファンドの名称・口数・基準価額(評価額)を確認できます。

申請主体・申請先・必要書類

残高証明書等の請求手続の概要は次のとおりです。必要書類の詳細は金融機関ごとに異なるため、事前に各社の相続窓口で確認してください。

項目内容
請求できる人相続人(1人からでも請求可能)、遺言執行者、これらの者から委任を受けた代理人
請求先被相続人が口座を開設していた販売会社(証券会社・銀行・信用金庫・ゆうちょ銀行等)の相続窓口・取引店
主な必要書類被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本等、請求者が相続人であることが確認できる戸籍謄本(法定相続情報一覧図の写しで代替できる機関が多い)、請求者の本人確認書類、印鑑登録証明書(機関所定)
手数料残高証明書1通1,100円程度(金融機関により異なる)
所要期間請求から1〜2週間程度(金融機関により異なる)

申請の流れ

ステップ1:販売会社を特定する

被相続人宛ての郵送物がもっとも確実な手がかりです。投資信託の保有者には、取引があれば3か月に1度、取引がなくても残高があれば1年に1回以上、「取引残高報告書」が販売会社から交付されます(金融商品取引業等に関する内閣府令98条)。このほか、決算期ごとの交付運用報告書、購入時の目論見書、口座開設時の書類控えなどが、自宅の机・書棚・キャビネット等に残っていないかを確認します。

通帳の入出金記録も重要です。分配金の入金(摘要欄に「トウシン」「ファンド」「ブンパイキン」等)、購入代金や積立投資の定期的な引落しがあれば、その相手方が販売会社です。確定申告をしていた方であれば、申告書控えに添付された特定口座年間取引報告書からも取引金融機関が分かります。

ETF・REITなど上場商品の口座は、ほふりへの開示請求で網羅的に把握できます。報告書類を電子交付に切り替えていた場合は紙の郵送物が残らないため、メールやアプリの確認も必要です。

ステップ2:販売会社に死亡の連絡をし、口座の有無を照会する

販売会社が特定できたら(または可能性のある金融機関に対して)、相続窓口に連絡し、被相続人名義の口座の有無を照会します。死亡の連絡をすると、以後その口座の取引は停止されるのが通例です。

ステップ3:死亡日基準の残高証明書を請求する

口座が確認できたら、死亡日(相続開始日)を基準日として残高証明書の発行を依頼します。基準日を指定しないと発行日時点の残高で作成されることがあるため、必ず「死亡日時点」と明示してください。証券会社によっては、死亡日から一定期間内の請求であれば、死亡日時点の評価額を参考情報として添付する取扱いもあります(例:大和証券。各社の取扱いは要確認)。

ステップ4:必要に応じて取引履歴を取得する

生前の解約・購入の経緯まで確認したい場合は、取引履歴(顧客勘定元帳等)の発行も併せて依頼します。

取得した書類で確認すべき項目

残高証明書と取引残高報告書が手元に揃ったら、次の各項目を確認します。

ファンド名(銘柄名)と口数

投資信託は、ファンド(銘柄)ごとに「口数」という単位で保有します。複数のファンドを保有していることが多いため、残高証明書や取引残高報告書の「お預り残高明細」欄で、保有している全ファンドの名称と口数を漏れなく書き出します。ファンド名が分かれば、投資信託協会のウェブサイトや運用会社のホームページで、その商品の内容や最新の基準価額を誰でも確認できます。

基準価額と死亡日時点の評価額

基準価額とは、投資信託の1口(または1万口)当たりの値段のことで、毎営業日変動します。評価額は「口数×基準価額」(1万口当たり表示のファンドでは口数を1万で割って計算)で算出され、残高証明書にはこの評価額が記載されるのが一般的です。記載されている基準価額が死亡日時点のものか、証明書発行日時点のものかは必ず確認してください。なお、相続税評価では、基準価額ベースの金額から解約した場合の源泉徴収税相当額や信託財産留保額・解約手数料を控除した金額で評価するものとされています(財産評価基本通達199)。ETFは上場株式の評価方法に準じます。

口座区分(特定口座・一般口座・NISA口座)

取引残高報告書には、ファンドを預かっている口座の区分(特定口座・一般口座・NISA口座など)が記載されています。NISA口座は名義人の死亡日以後に生じた分配金等が課税扱いとなるなど、口座区分は死亡後の課税関係や相続人への移管手続に影響するため、区分ごとに残高を整理しておきます。

分配金の受取方法(受取型・再投資型)

分配金を現金で受け取る「受取型」の場合、分配金の入金先となっている預金口座が存在し、これをたどることは把握していなかった預金口座の発見にもつながります。分配金を自動的に買い増しに充てる「再投資型」では決算のたびに口数が増えるため、古い報告書の口数と死亡日時点の口数は一致しないことがあります。口数は必ず死亡日基準の残高証明書で確定させてください。なお、死亡後も決算期が到来すれば分配金は発生し続けるため、死亡日時点の残高と手続時点の残高には差が生じ得ます。

MRF・預り金の残高

証券会社の証券総合口座では、株式や投資信託の売却代金、入金した待機資金などが、MRF(マネー・リザーブ・ファンド)という安全性の高い公社債投資信託で自動的に運用される仕組みになっています。「株式はすべて売却したと聞いていたので証券会社には何も残っていないはず」と考えていても、MRFや預り金として資金が残っていることがあります。残高証明書では、ファンドの保有明細だけでなく、MRF・預り金の欄まで必ず確認してください。

直近の取引明細(解約・購入の履歴)

取引残高報告書の取引明細欄には、報告対象期間中の購入・解約・分配金の支払などが記載されています。死亡前に大きな解約・換金があった場合は、換金代金の入金先を預貯金の取引履歴と突き合わせることで、相続開始時点の財産の所在を正確に把握できます。

参考リンク

公的機関・業界団体

金融機関の手続案内

※手数料・手続方法は変更されることがあります。請求前に各機関の最新の案内をご確認ください。

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