共有不動産に借主(テナント)がいる場合、分割にどんな影響がありますか?
賃貸中の共有不動産であっても、共有物分割を行うことは可能です(民法256条1項)。分割によって賃借権(借主の権利)が消滅するわけではなく、原則として賃貸借契約はそのまま存続します。また、借主は自己の費用で共有物分割に参加することもできます(民法260条1項)。
結論
共有不動産に借主(テナント)がいる場合でも、共有者は共有物分割を請求することができます(民法256条1項)。賃貸借契約が存在すること自体は、分割請求の妨げにはなりません。
そして、共有物分割が行われた後も、賃貸借契約は原則としてそのまま存続します。借主が対抗力(登記や借地借家法上の対抗要件)を備えている場合はもちろん、共有者間の協議による分割の場合には、借主の権利は分割によって影響を受けないのが原則です。
根拠と条件
分割請求権への影響がないこと
共有物の分割請求権は、各共有者に認められた基本的な権利です(民法256条1項)。この権利は、共有不動産が賃貸中であるかどうかによって左右されません。抵当権の場合と同様、賃借権が存在しても共有物分割自体は制限されません。
賃借人の分割への参加
共有不動産について権利を有する者は、自己の費用で共有物分割に参加することができます(民法260条1項)。賃借人もこの「権利を有する者」に該当します。
参加の請求があったにもかかわらず、その者を参加させずに分割をした場合、その分割は参加を請求した者に対抗することができません(民法260条2項)。したがって、賃借人が分割への参加を求めてきた場合には、これを無視して分割を進めることにはリスクがあります。
分割方法ごとの賃借権への影響
分割の方法によって、賃借権への影響は異なります。
現物分割(不動産を物理的に分ける方法)の場合
現物分割が行われた後も、従前の賃貸借契約はそのまま存続します。分割前に1つの不動産全体を対象としていた賃貸借契約は、分割後の各不動産に対する賃貸借契約として引き続き効力を持つと解されています。
ただし、分割後は各不動産がそれぞれ別の所有者の単独所有になるため、賃貸借に関する管理処分の権限は、各単独所有者がそれぞれ自己の不動産について行使することになります。
全面的価格賠償(共有者の1人がお金を払って取得する方法)の場合
共有者の1人が不動産全体を単独で取得する場合、賃貸人の地位はその取得者に集約されます。賃貸借契約自体は存続し、借主の権利に変動はありません。
換価分割(競売で売却して代金を分ける方法)の場合
形式的競売(共有物分割のために裁判所が命じる競売)によって第三者が不動産を買い受けた場合、借主の賃借権が買受人に対抗できるかどうかは、賃借権の対抗力の有無によります。借地借家法上の対抗要件(建物の引渡しや借地上の建物登記など)を備えていれば、賃借権は買受人にも対抗できます。
具体的な場面での適用
現物分割後の賃料不払いと契約解除
AとBが共有している甲土地をCに賃貸していたところ、AとBが共有物分割の協議を行い、東側(乙土地)をAの単独所有、西側(丙土地)をBの単独所有とする現物分割を行ったとします。その後、Cが賃料を支払わなくなった場合、Aは自己が単独所有する乙土地の部分に関する賃貸借についてのみ解除をすることができます。
なお、この点について裁判例は、共有であった賃貸地がその後の共有物分割によって各部分が単独所有になったとしても、従前の賃貸借契約が当然に各土地ごとの別々の契約に変更されるものではなく、従前の賃貸借契約がそのまま存続すると解するのが相当であるが、賃借人の債務不履行による解除については、各単独所有者が自己の土地部分のみについて行うことができると判断しています(仙台高裁昭和43年8月12日判決)。

