内縁の妻(夫)や事実婚のパートナーに相続権はありますか?

回答

内縁の妻(夫)や事実婚のパートナーには、相続権がありません。民法上、相続人となる「配偶者」は、法律上の婚姻関係にある者に限られます(民法890条)。内縁の配偶者は、特別縁故者(とくべつえんこしゃ)に対する相続財産の分与(民法958条の2)により財産を受け取れる場合がありますが、これは相続とは別の制度です。

目次

結論

内縁の妻(夫)や事実婚のパートナーには、相続権は認められません(民法890条)。

民法は、配偶者相続人(はいぐうしゃそうぞくにん)について「被相続人の配偶者は、常に相続人となる」と定めていますが(民法890条)、ここでいう「配偶者」とは、法律上の婚姻届を提出して戸籍上の夫婦となっている者を指します。事実上の夫婦関係があるだけでは、相続人としての地位は認められません。

根拠と条件

法律上の根拠

民法890条は、被相続人の配偶者が常に相続人となることを定めています。そして、ここでいう「配偶者」は法律上の配偶者、すなわち婚姻届を提出して有効に婚姻が成立している者に限られます。

内縁(婚姻届を提出していないが事実上の夫婦関係にある状態)の配偶者は、どれだけ長期間にわたって共同生活をしていたとしても、また社会的には夫婦として認められていたとしても、民法上の「配偶者」には該当しません。被相続人が自らの意思によって相続人を創設することはできず、相続人の範囲は民法によって画一的に定められています。

内縁の配偶者と法律上の配偶者の違い(相続における扱い)

項目法律上の配偶者内縁の配偶者
根拠民法890条
相続権あり(常に相続人)なし
遺留分ありなし
特別縁故者としての財産分与―(相続人として取得)申立て可能(民法958条の2)
遺贈による取得可能可能(遺言が必要)

内縁の配偶者が遺産を受け取る方法

内縁の配偶者には相続権がありませんが、遺産を受け取る方法がまったくないわけではありません。主に次の2つの方法があります。

(1)遺贈(いぞう)

被相続人が生前に遺言書を作成し、内縁の配偶者に財産を遺贈する旨を記載していた場合には、遺言に基づいて財産を取得することができます。ただし、この場合でも、法律上の相続人が有する遺留分(いりゅうぶん)を侵害する限度では、遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。

(2)特別縁故者に対する相続財産の分与

相続人が誰もいない場合(相続人全員が相続放棄をした場合を含みます)に限り、内縁の配偶者は、家庭裁判所に対し、特別縁故者(被相続人と特別の縁故があった者)として相続財産の分与を申し立てることができます(民法958条の2)。ただし、この制度は相続人が不存在の場合にのみ利用できるものであり、他に相続人が1人でもいる場合には適用されません。

具体的な場面での適用

設例:内縁の妻がいるケース

被相続人Aには、法律上の妻W(離婚していない)と、長年同居してきた内縁の妻Yがいた場合を考えます。Aが遺言を残さずに死亡したとき、相続人となるのは法律上の妻Wと、Aの血族相続人(子など)です。Yは、Aと長年にわたり事実上の夫婦として生活していたとしても、相続人にはなりません。

設例:法律上の相続人が誰もいないケース

被相続人Aには、子も親も兄弟姉妹もおらず、法律上の配偶者もいないが、内縁の妻Yと20年以上にわたって同居していた場合を考えます。Aが遺言を残さずに死亡したとき、法律上の相続人が不存在であるため、所定の手続を経た後に、Yは家庭裁判所に対して特別縁故者として相続財産の分与を申し立てることができます(民法958条の2)。

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