寄与分が認められる条件は何ですか?5つの類型を教えてください
寄与分が認められるには、①相続人みずからの寄与であること、②被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待される程度を超える「特別の寄与」であること、③被相続人の財産が維持または増加したこと、④寄与行為と財産の維持・増加との間に因果関係があること、が必要です(民法904条の2第1項)。寄与の態様は、家業従事型・金銭等出資型・療養看護型・扶養型・財産管理型の5つに分類されています。
寄与分の要件の全体像
寄与分(被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした相続人に認められる上乗せ分)は、共同相続人間の公平を図るための制度です(民法904条の2)。寄与分が認められるためには、以下の4つの要件をすべて満たす必要があります。
(1)相続人みずからの寄与であること
寄与分は具体的な相続分を算定するための修正要素であり、寄与分が認められるのは相続人に限られます。相続人以外の者を含むと手続が煩雑になり、遺産分割を遅らせることになるためです。
ただし、相続人以外の者(たとえば相続人の配偶者や子)が貢献した場合でも、その貢献が相続人自身の貢献と同視できるときは、相続人の履行補助者による寄与と評価して、相続人自身の寄与分額に算入できるとされています。なお、相続人以外の親族が行った貢献で相続人自身の貢献と同視し得ない場合は、特別寄与料(民法1050条)の問題となります。
(2)「特別の寄与」であること
民法904条の2第1項は「特別の寄与」を要件としています。ここでいう「特別」とは、被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待される程度を超える貢献であることを意味します。
たとえば、夫婦間の協力扶助義務(民法752条)や、親族間の扶養義務・互助義務(民法877条1項)の範囲内の行為は、特別の寄与には当たりません。配偶者と子が同じ程度の家事労働をしたとしても、配偶者については夫婦の協力扶助義務の範囲内と評価されやすく、子については親に対する扶養義務の程度が相対的に軽いため、特別の寄与と認められる余地があります。このように、被相続人との身分関係によって「特別」の基準が異なる点に注意が必要です。
(3)被相続人の財産が維持または増加したこと
相続人の行為によって、被相続人の積極財産の減少や消極財産(債務)の増加が阻止され、または積極財産の増加や消極財産の減少がもたらされたことが必要です。
「維持」とは、放置していれば財産が減少していたところ、寄与行為によって防止することができた場合をいいます。財産上の効果のない精神的な援助・協力は、寄与として考慮されません。
(4)寄与行為と財産の維持・増加との間に因果関係があること
寄与行為が財産上の効果と結びつかない場合、寄与分は認められません。ただし、被相続人の財産が減少した場合でも、寄与行為がなければ財産が現実の減少以上に減少したと認められるときは、寄与分が認められる余地があります。
5つの寄与類型
寄与行為の態様は、実務上、以下の5つの類型に分類されています。各類型ごとに求められる具体的要件が異なります。
(1)家業従事型
無報酬またはこれに近い状態で、被相続人が経営する農業、その他の自営業に従事する場合です。
特別の寄与となる具体的要件は、①特別の貢献、②無償性、③継続性、④専従性です。ただし、無償性の要件を完全に充たすことは難しいとされています。
(2)金銭等出資型
被相続人に対し財産権の給付を行う場合、または被相続人に対し財産上の利益を給付する場合です。不動産の購入資金の援助、医療費や施設入所費の負担が比較的多くみられます。
財産を給付するだけであるため、継続性や専従性は必要ありません。
(3)療養看護型
無報酬またはこれに近い状態で、病気療養中の被相続人の療養介護を行った場合です。疾病の存在が前提となっており、単に被相続人と同居し家事の援助を行っているに過ぎない場合には、寄与分は認め難いとされています。
特別の寄与となる具体的要件は、①療養看護の必要性、②特別の貢献、③無償性、④継続性、⑤専従性です。
(4)扶養型
無報酬またはこれに近い状態で、被相続人を継続的に扶養した場合です。毎月仕送りをしていたとか、同居して衣食住の面倒をみていたという主張が中心です。
特別の寄与となる具体的要件は、①扶養の必要性、②特別の貢献、③無償性、④継続性です。
(5)財産管理型
無報酬またはこれに近い状態で、被相続人の財産を管理した場合です。不動産の賃貸管理や立ち退き交渉など占有者の排除等が多くみられます。賃貸管理の場合は比較的立証が容易といえます。
特別の寄与となる具体的要件は、①財産管理の必要性、②特別の貢献、③無償性、④継続性です。
各類型の要件比較
| 類型 | 特別の貢献 | 無償性 | 継続性 | 専従性 |
|---|---|---|---|---|
| 家業従事型 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 金銭等出資型 | ○ | ○ | — | — |
| 療養看護型 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 扶養型 | ○ | ○ | ○ | — |
| 財産管理型 | ○ | ○ | ○ | — |
※「○」は要件として求められるもの、「—」は不要とされるもの
寄与行為の時期と評価時点
寄与として評価される行為の終期は、相続開始時までです。相続開始後の貢献については、寄与分として評価することはできません。相続開始後の貢献は、遺産分割の際の「一切の事情」(民法906条)として考慮されるにすぎません。
なお、寄与分の評価時点については、相続開始時を評価時点とするのが通説・裁判例の多数です。
また、相続開始時から10年が経過した後にあっては、具体的相続分(寄与分)の主張をすることはできません(民法904条の3)。
設例:寄与分がある場合の具体的相続分の計算
被相続人Aの相続財産が6,000万円で、相続人が妻Wと子B・Cの3名、Bに600万円の寄与分が認められる場合の具体的相続分は以下のとおりです。
1. みなし相続財産
6,000万円 − 600万円 = 5,400万円(Bの寄与分額を控除)
2. 各相続人の一応の相続分
妻W:5,400万円 × 1/2 = 2,700万円
子B:5,400万円 × 1/2 × 1/2 = 1,350万円
子C:5,400万円 × 1/2 × 1/2 = 1,350万円
3. 具体的相続分
妻W:2,700万円
子B:1,350万円 + 600万円 = 1,950万円(寄与分額を加算)
子C:1,350万円

