相続開始後の葬儀・諸手続対応や遺産管理は寄与分として認められますか?
寄与分(被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした相続人に認められる上乗せ分)として評価できるのは、相続開始時までの貢献に限られます。相続開始後に行った葬儀・諸手続の対応や遺産の管理行為は、寄与分の対象にはなりません。ただし、遺産分割の際に「一切の事情」として一定程度考慮される余地はあります(民法906条)。
寄与分の対象となる「時期」のルール
寄与分は、共同相続人のうち、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした者に対して、相続分を修正することで相続財産から相当額を取得させる制度です(民法904条の2)。
この制度の対象となる貢献は、相続開始時までの間に行われたものに限られます。すなわち、寄与行為の終期は相続開始時(被相続人の死亡時)までと解されており、相続開始後に相続財産の維持・増加に寄与する行為を行っても、寄与分としての評価は受けられません。
裁判例でも、寄与分は相続開始時を基準として考慮すべきものであって、相続開始後に相続財産を維持または増加させたことに対する貢献は寄与分として評価すべきものではない旨を判示しています(東京高決昭和57年3月16日)。
なぜ相続開始後の行為は寄与分にならないのか
寄与分制度は、被相続人の生前にその財産の維持・増加に特別の貢献をした相続人について、他の相続人との間の公平を図るために設けられた制度です。被相続人が存命中に築き・残した遺産に対する貢献を精算する仕組みであるため、被相続人が死亡した後の行為は、そもそも「被相続人への貢献」という枠組みには当てはまりません。
相続開始後の遺産は、遺産分割が成立するまでの間、共同相続人全員の共有に属します。この段階での管理や維持は、もはや被相続人個人の財産に対する貢献ではなく、共同相続人全員の共有財産の管理という性質を持つため、寄与分の問題としては整理されないのです。
具体的な場面での適用
相続開始後の遺産管理
被相続人が所有していた賃貸物件について、相続開始後に特定の相続人が単独で管理・修繕・入居者対応などを続けたとしても、これは寄与分の対象にはなりません。大阪高決平成27年10月6日も、被相続人死亡後に行われた農地の改植等について、被相続人死亡後の行為であるから寄与には当たらないと判断しています。
相続開始後の葬儀・諸手続対応
相続人の一人が葬儀を取り仕切ったり、死亡後の各種届出・名義変更手続きなどを単独で担ったとしても、これらは被相続人の生前の財産の維持・増加への貢献ではないため、寄与分として評価されることはありません。
相続開始後の行為の扱い
もっとも、相続開始後の相続人の貢献が一切考慮されないわけではありません。家庭裁判所は、遺産分割にあたって「一切の事情」を考慮して分割方法を定めることとされており(民法906条)、相続開始後の貢献についても、この「一切の事情」の一つとして斟酌される余地があります。ただし、寄与分という形で相続分に上乗せされるものではなく、あくまで分割方法の調整において間接的に反映されるにとどまります。

