共有物分割をすると、所得税や住民税がかかることはありますか?

回答

共有物分割に伴う所得税・住民税(譲渡所得税)の課税関係は、分割方法と分割結果によって異なります。持分割合に応じた現物分割は原則として非課税ですが(所得税法基本通達33-1の7、所得税法58条)、換価分割や全面的価格賠償、持分割合と整合しない現物分割については譲渡所得税および住民税の課税対象となります。

目次

結論

共有物分割は、実質的には共有者それぞれが持っていた潜在的な権利が具体化する手続きにすぎず、共有資産そのものの同一性が失われるほどの変化や値上がりによる利得が生じるわけではありません。このような実質面から、共有物分割によって所得税・住民税(譲渡所得税)の課税関係は生じないのが原則とされています。

もっとも、例外なく非課税になるわけではありません。分割方法が換価分割(売却して代金を分ける方法)や全面的価格賠償(共有者の1人がお金を払って不動産全体を取得する方法)である場合、または現物分割(不動産そのものを物理的に分ける方法)であっても分割結果が持分割合と整合しない場合には、譲渡所得税およびこれに連動する住民税が課税されます。

なお、所得税が課税される場合、地方税である個人住民税(都道府県民税・市町村民税)もこれに連動して課税されます。以下の解説で「譲渡所得税」と記載する部分は、所得税と住民税の双方を指しているとお考えください。

根拠と条件

現物分割が原則非課税となる根拠

共有物分割の性質は、税務上、交換(または売買)にあたるとされています(最判昭和42年8月25日)。たとえば、A・B共有の土地を東西で2筆に分けてそれぞれの単独所有とする場合、東側の土地についてはBの持分をAに移転し、西側の土地についてはAの持分をBに移転した、と捉えるわけです。

形式的には資産の譲渡にあたるため、本来は譲渡所得税の課税関係が生じることになります。しかし、これは実質と合致しないため、税務上は次の2つの例外的な取扱いが用意されています。

①共有物分割の基本通達(所得税法基本通達33-1の7)

共有持分に応じた現物分割については、譲渡はなかったものとして取り扱うルールです。分割後の価格比が持分割合比率とおおむね等しい場合(「おおむね共有持分に応じた」現物分割)についても、同様の扱いとされています(所得税法基本通達33-1の7注2)。法人の場合は法人税法基本通達2-1-19に同趣旨の規定があります。

②固定資産の交換の特例(所得税法58条)

固定資産の交換について、一定の範囲で譲渡はなかったものとして取り扱う一般的な規定であり、共有物分割の際にも適用されます。交換差金(交換時の価額差を補うために授受される金銭)がある場合でも、その差金が交換した資産のうち大きいほうの価格の20%相当額を超えない範囲であれば適用され、交換差金部分だけが所得税の課税対象となります。

これら2つの例外規定は要件が多少異なりますが、実際には重複することが多く、いずれを適用してもよいとされています。

非課税となる条件

以上の例外規定により、現物分割について譲渡所得税が非課税となるのは、次の条件を満たす場合です。

  • 共有持分の割合に応じた現物分割であること
  • または、分割後の価格比が持分割合比率とおおむね等しい現物分割であること
  • 固定資産の交換の特例を用いる場合は、交換差金が大きいほうの資産の価格の20%以内であること

逆にいえば、これらの条件を満たさず、分割結果が共有持分割合と整合しない場合には、例外規定の適用を受けられず、原則どおり譲渡所得税の課税関係が生じます。

具体的な場面での適用

分割方法ごとに課税関係を整理すると、以下のようになります。

分割方法譲渡所得税(所得税・住民税)根拠
現物分割(持分割合に応じた分割)原則非課税所得税法基本通達33-1の7、所得税法58条
現物分割(持分割合と整合しない部分)差額部分が課税対象。贈与税の可能性もあり原則どおりの課税
部分的価格賠償(現物分割+調整金)調整金部分が交換差金として課税対象所得税法58条
換価分割課税(売買と同じ扱い)所得税法5条・33条
全面的価格賠償持分を譲渡した側に課税(持分売買と同じ扱い)所得税法5条・33条

現物分割の場合

持分割合に応じて土地を物理的に分けるケースでは、前述のとおり原則非課税です。

ただし、分割線の引き方によっては、取得した土地の価格が共有持分の価格と釣り合わないことがあります。たとえば、A・Bが2分の1ずつ共有する土地を分けた際、分割後のAの土地の価格が本来の持分価値を超えてしまう場合、その差額部分について例外規定の適用を受けられなくなり、売買と同じように譲渡所得税の課税関係が生じます。加えて、持分取得の対価を支払わないという点で、低額譲渡と同様に贈与税が課税される可能性もあります。

部分的価格賠償(現物分割+調整金)の場合

現物分割の際に金銭の授受を伴うケースです。民事的には賠償金と呼ばれますが、税務上は調整金と呼ばれます。

調整金がある場合、共有物分割の基本通達は適用されません。一方、固定資産の交換の特例は、要件(調整金が大きいほうの資産の20%以内など)を満たせば適用され、その場合でも調整金部分は交換差金として譲渡所得税の課税対象となります。

換価分割の場合

換価分割では、共有不動産を売却して代金を分けることになり、共有者全員による第三者への共同売却と同じ状態になります。そのため、一般的な不動産売却と同様に譲渡所得税が課税されます。形式的競売(裁判所が共有物分割のために命じる競売)に基づく代金分割であっても、特別な非課税規定は存在せず、通常の共同売却と同じ課税関係が生じます。

全面的価格賠償の場合

全面的価格賠償は、共有持分の売買の性質を持つため、税務上も資産の譲渡に該当します。不動産全体を取得した共有者ではなく、代償金を受け取って持分を手放した共有者側に、譲渡所得税および住民税が課税されることになります。

将来の譲渡所得税への影響

共有物分割が非課税で処理されたからといって、将来その不動産を売却した場合の譲渡所得税が軽くなるわけではない点にも注意が必要です。

共有物分割について譲渡がなかったものとして取り扱う場合(現物分割で非課税扱いとなったケース)、将来の譲渡所得税の短期・長期区分の判定にあたっては、共有物分割の前後を通算して所有期間を算定します(最判昭和62年4月22日)。一方、共有物分割について譲渡があったものとして取り扱う場合(例外規定の適用を受けられなかったケース)には、共有物分割の時点が期間計算の起算点となります。

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