離婚時の夫婦の自宅は、原則として財産分与(民法768条)の手続で処理します。登記が夫婦の共有名義になっている場合は、共有物分割(民法256条)を請求することもできます。ただし、財産分与には離婚時から2年という期間制限があります(民法768条2項)。
結論
離婚にともなう自宅の処理は、財産分与によるのが原則です。財産分与は、自宅だけでなく預貯金なども含めて、夫婦が協力して築いた財産の全体をまとめて清算できるからです。
そのうえで、自宅の登記が夫婦の共有名義になっている場合に限り、共有物分割という別の手続も選べます。登記がどちらか一方の単独名義の場合、共有物分割は使えません。つまり、登記の状況によって、使える手続の幅が変わります。
根拠と条件
財産分与(民法768条)
婚姻中に夫婦の収入で購入した自宅は、「当事者双方がその協力によって得た財産」(民法768条3項)として、離婚時の財産分与(清算的財産分与=夫婦が協力して築いた財産を離婚時に清算する手続)の対象になります。登記の名義が夫婦共有か一方の単独かは問いません。専業主婦世帯で、登記が夫の単独名義になっている自宅でも、購入資金が婚姻中の夫の給与収入であれば、財産分与の対象です。
財産分与には、離婚の時から2年という期間制限があります(民法768条2項)。この期間を過ぎると、財産分与の請求はできません。
共有物分割(民法256条)
共有物分割は、物権法上の共有(登記にも表れる、民法249条以下の共有)を解消する手続です。夫婦の自宅であっても、登記が夫婦の共有名義になっていれば物権法上の共有にあたるので、共有物分割を請求できます。共有物分割には期間制限がありません。
これに対して、登記が一方の単独名義の場合、その自宅は実質的には夫婦の共有財産であっても、物権法上の共有ではありません。財産分与の手続を経て、はじめて物権法上の権利になります。そのため、単独名義の自宅について共有物分割はできません。登記実務でも、登記上単独所有の不動産について「共有物分割」を登記原因とする移転登記の申請は受理されないとされています(昭和53年10月27日民三第5940号民事局第三課長回答)。
二つの手続の違い
| 項目 | 財産分与 | 共有物分割 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 民法768条 | 民法256条 |
| 対象 | 夫婦が協力して築いた財産の全体 | 特定の共有不動産 |
| 単独名義の自宅 | 対象になる | 対象にならない |
| 期間制限 | 離婚時から2年(768条2項) | なし |
| 分割の方法 | 現物の分与・売却代金の分配・金銭の支払いのほか、共有のまま残すことも可能 | 現物分割・換価分割・賠償分割(民法258条2項・3項) |
財産分与は夫婦の財産全体を単位とし、共有物分割は個々の不動産を単位とする点が、いちばん大きな違いです。
具体的な場面での適用
登記が単独名義のケース
夫の収入で購入し、登記も夫の単独名義になっている自宅のケースでは、妻は財産分与を請求することになります。共有物分割は使えません。離婚から2年の期間制限があるので、離婚成立の際にあわせて処理するのが通常です。
登記が共有名義のケース
共働きの夫婦が資金を出し合い、登記も2分の1ずつの共有名義にしている自宅のケースでは、財産分与と共有物分割のどちらも請求できます。離婚の際は自宅以外の財産もあわせて清算する必要があるため、財産分与でまとめて処理するのが通常ですが、共有物分割の請求が法律上妨げられるわけではありません。
なお、東京地判平成20年11月18日は、夫婦共有名義の不動産について、財産分与とは別に共有物分割を請求することも適法であると判断しています。
ただし、財産分与をしないうちに共有物分割だけを先行させると、事情によっては権利の濫用と判断され、請求が認められないこともあります。共有物分割の請求が認められない場合については、「共有不動産の分割を請求しても、認められないことはありますか?」で解説しています。
財産分与をしないまま離婚したケース
住宅ローンの残債務が自宅の価値を上回っていたため財産分与の対象から外した場合など、共有名義のまま離婚するケースもあります。離婚から2年が過ぎると財産分与は請求できないので、その後の共有解消は共有物分割によります。離婚後の共有物分割については、「離婚から数年経ちますが、不動産がまだ共有のままです。今からでも分割を求められますか?」で解説しています。

