共有持分を放棄すると、贈与税など思わぬ税金がかかるって本当ですか?

回答

本当です。共有持分の放棄は、民法上は原始取得(他の共有者がゼロから持分を取得する)ですが、税務上は贈与と同じ取扱いになります(相続税法9条、相続税基本通達9-12)。当事者がいずれも個人の場合、持分を取得した他の共有者に贈与税が課され、放棄者は相手方の贈与税について連帯納付義務を負います(相続税法34条4項)。放棄者・相手方が個人か法人かによって、課される税の種類は異なります。

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結論:持分放棄は税務上「贈与」として扱われる

共有持分の放棄は、民法上は原始取得(権利の消滅といったん他の共有者にゼロから権利が発生する仕組み)と位置づけられています(民法255条)。他方で、税務上は、対価を伴わずに共有持分が他の共有者に移転したという実質に着目して、贈与と同じ取扱いになります(相続税法9条、相続税基本通達9-12)。

そのため、対価を得ずに共有関係から離脱できる一方で、持分を取得した他の共有者に贈与税が課されるのが原則です。放棄者自身も、相手方の贈与税について連帯納付義務を負います(相続税法34条4項)。

根拠と条件:民法と税務の取扱いのずれ

民法上の位置づけ(原始取得)

共有者が共有持分を放棄すると、その持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。この権利変動の法的性質について、判例は、放棄者の共有持分がいったん消滅し、他の共有者が原始取得するものと位置づけています。贈与契約のように相手方の承諾は不要で、単独行為として成立する点が贈与契約との大きな違いです。

税務上の位置づけ(みなし贈与)

もっとも、税務上は、民法上の位置づけ(原始取得)ではなく、「無償で共有持分が他の共有者に移転した」という実質に着目します。結論として、共有持分の放棄は、税務上は贈与と同じ扱いとなり、持分を取得した他の共有者に贈与税が課されます(相続税法9条、相続税基本通達9-12)。

このように、共有持分放棄は民法上の取扱い(原始取得・無償)と税務上の取扱い(贈与と同視)にずれがあります。「対価を得ないのだから税金は関係ない」と考えていると、思わぬ課税を受けることになる、というのがこの論点の要点です。

当事者の属性で税の種類が変わる

さらに注意すべきは、放棄者と相手方(持分を取得する他の共有者)がそれぞれ個人か法人かによって、課される税の種類が異なる点です。次のセクションで整理します。

具体的な場面での適用

当事者の属性別の課税関係

放棄者と相手方の組み合わせによる課税関係を整理すると、次のとおりです。

放棄者相手方放棄者にかかる税相手方にかかる税
個人個人(贈与税の連帯納付義務)贈与税(みなし贈与)
個人法人みなし譲渡所得税法人税(受贈益)
法人個人法人税(譲渡益)所得税(一時所得など)
法人法人法人税(譲渡益)法人税(受贈益)

主な根拠条文は、個人間のみなし贈与が相続税法9条・相続税基本通達9-12、個人から法人への無償移転が所得税法59条1項(みなし譲渡)および法人税法22条2項(受贈益)、法人から個人への無償移転が所得税法34条(一時所得)および所得税法基本通達34-1(5)です。

典型例:親族間の共有持分放棄(個人→個人)

実務でよく見られるのは、親族共有となっている不動産について、共有者の1人が共有持分を放棄するケースです。たとえば、A・B・C(いずれも個人)で共有されている不動産について、Aが共有持分を放棄し、その持分がB・Cに帰属した場合、BとCはそれぞれ取得した持分に相当する経済的利益について贈与税の課税対象となります。Aは、B・Cの贈与税について連帯納付義務を負います(相続税法34条4項)。

同族会社が関わる場合の注意点

相手方が法人で、その法人が税法上の同族会社に該当する場合、共有持分の取得によって会社の純資産が増加した結果、放棄者以外の株主が保有する株式の価額も上昇することがあります。この場合、放棄者以外の株主に対して贈与があったものとみなされ、当該株主に贈与税が課されることがあります(相続税法9条、相続税基本通達9-2)。放棄者(個人)自身には、共有持分を法人に無償移転したものとしてみなし譲渡所得税(所得税法59条1項)が課される点も、あわせて確認が必要です。

登録免許税・不動産取得税

税務上の課税のほかに、持分移転登記に伴う登録免許税、不動産の取得に伴う不動産取得税も生じるのが通常です。対価を得ずに共有関係から離脱するという性質上「費用は発生しない」と誤解されがちですが、意思表示の前に、登記費用・税負担の総額まで見通したうえで判断することが重要です。

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