音信不通の相続人をどのように調査したらいいですか?

回答

音信不通の相続人がいる場合でも、戸籍を辿って本籍地を特定したうえで、各相続人の「戸籍の附票」を取得することにより、住民票上の住所履歴を確認できます(住民基本台帳法17条)。戸籍附票で確認した最終住所地で住民票が取得できない場合は、転出先の市区町村で住民票を辿ります。これらの方法によっても所在が判明しない場合は、不在者財産管理人の選任申立(民法25条1項)等の家庭裁判所手続を検討することになります。

目次

調査・手続の概要

遺産分割協議は、相続人全員が当事者となって行わなければならず、一人でも欠いた協議は無効とされます。したがって、長年音信不通になっている相続人がいる場合でも、その所在を可能な限り調査し、協議に加える必要があります。

所在調査の中核資料となるのが、戸籍の附票(住民基本台帳法17条)です。戸籍附票には、その戸籍が編成されてから現在までの住民票上の住所の異動履歴が記録されています。各相続人の戸籍附票を取得すれば、原則として現住所を特定できます。

調査のおおまかな流れは、次のとおりです。

  1. 被相続人の出生から死亡までの戸籍を収集する。
  2. 戸籍の記載から、推定相続人の現在の本籍地・筆頭者を特定する。
  3. 各相続人について、本籍地の市区町村に戸籍附票の写しを請求する。
  4. 戸籍附票記載の最新住所地で、必要に応じて住民票の写しを取得する。

なお、令和元年6月20日施行の住民基本台帳法施行令の改正により、住民票の除票および戸籍附票の除票の保存期間が、従前の5年間から150年間に延長されています。ただし、改正法施行日より前に保存期間が経過していたもの(平成26年6月19日以前に消除されたもの)については、既に廃棄されており発行を受けられない点に留意が必要です。

また、令和6年3月1日施行の戸籍法の一部改正により、本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍証明書・除籍証明書を請求できる「広域交付」制度が始まっていますが、戸籍の附票の写しは広域交付の対象外であり、引き続き本籍地の市区町村に請求する必要があります。

申請主体・申請先・必要書類

申請主体

戸籍の附票の写しの交付請求権者は、住民基本台帳法20条に定められています。

請求類型根拠
戸籍附票に記録されている本人、その配偶者、直系尊属または直系卑属住民基本台帳法20条1項
自己の権利の行使または義務の履行のため戸籍附票の記載事項を確認する必要がある者(第三者請求)住民基本台帳法20条2項
国または地方公共団体の機関住民基本台帳法20条3項
特定事務受任者(弁護士・司法書士等が職務上必要な場合)住民基本台帳法20条4項

兄弟姉妹の戸籍附票を取得する場合(被相続人の兄弟姉妹が相続人となる事案で、相続人の一人が他の兄弟姉妹分の戸籍附票を取得する場合等)、20条1項の本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の関係に当たらないため、20条2項の第三者請求として、相続手続上の必要性を疎明する形で申請することになります。

住民票の写しについても同様に、第三者請求は住民基本台帳法12条の3に基づき、自己の権利の行使または義務の履行のため必要な場合に請求できます。

申請先

必要な資料申請先
戸籍の附票の写し対象者の本籍地を管轄する市区町村役場
住民票の写し対象者が住民登録している市区町村役場
戸籍謄本・除籍謄本(本籍を特定するため)各人の本籍地の市区町村役場(令和6年3月1日以降は広域交付も利用可)

必要書類

書類内容・取得先
各市区町村所定の交付申請書市区町村の窓口またはホームページからダウンロード
被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本(除籍謄本)本籍地の市区町村役場
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式(相続関係および第三者請求の正当な理由の疎明)各本籍地の市区町村役場
申請者と被相続人との関係を示す戸籍謄本各人の本籍地の市区町村役場
申請者の本人確認書類運転免許証・マイナンバーカード等
委任状(代理人が申請する場合)各市区町村の様式
申請理由を記載した書面(第三者請求の場合、住民基本台帳法20条2項の正当な理由を疎明)任意様式または市区町村の様式
法定相続情報一覧図(あれば戸籍一式の代用が可能)法務局(平成29年5月29日運用開始)
手数料戸籍附票・住民票とも1通200〜400円程度
※自治体により異なるため最新情報を要確認

申請の流れ

ステップ1:被相続人の戸籍から相続人の本籍を特定する

被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める過程で、推定相続人(子・兄弟姉妹等)の名前が記載された戸籍が判明します。婚姻や転籍によって相続人の本籍が変更されている場合は、変更後の本籍を辿って、現在の本籍地を特定します。

ステップ2:戸籍附票の交付申請

特定した本籍地の市区町村に対し、対象相続人の戸籍附票の写しの交付を申請します。郵送での申請が可能であり、所要期間は概ね1〜2週間程度です(自治体による)。

ステップ3:戸籍附票記載の最新住所地で住民票を取得

戸籍附票に記載された最新住所地について、対象相続人の住民票の写しを取得します。これにより、現住所と世帯構成が確認できます。

ステップ4:転出先が判明した場合の追跡

戸籍附票の最新住所地で住民票を請求した結果、既に転出していることが判明した場合は、住民票の除票を取得することで、転出先の市区町村と転出年月日が確認できます。転出先の市区町村で改めて住民票を取得することで、追跡を続けます。

所要期間と費用

  • 戸籍附票・住民票:申請から1〜2週間程度、1通200〜400円程度(自治体により異なる)
  • 連続して追跡する場合は、合計1〜2か月程度を見込むのが現実的です

取得した戸籍附票・住民票で確認すべき項目

戸籍附票や住民票は、単に「現住所が分かる書類」ではありません。記載項目を読み解くことで、所在追跡の手がかりや、その後の連絡・手続の前提となる情報を整理できます。

現在の住所(最新住所)

戸籍附票の最終欄、または住民票の住所欄に記載されている住所です。これが現時点での連絡先候補となります。

調査のポイント

戸籍附票は、本籍地の市区町村が各種市区町村からの住民票異動通知を受けて記録しているため、最新住所が反映されますが、市区町村間の連絡に若干のタイムラグが生じる場合があります。郵便物が宛先不明で戻ってくる場合は、住民票で現況を再確認します。

住所の異動履歴

戸籍附票には、その戸籍が編成されてから現在までの住所異動が時系列で記載されています。

調査のポイント

直近の異動だけでなく、過去の住所履歴を確認することで、(a)対象者の生活拠点の傾向、(b)転居の頻度、(c)以前の住所周辺に共通の知人がいる可能性等の手がかりが得られます。なお、婚姻・離婚・養子縁組・養子離縁・他市区町村への転籍などにより新しい戸籍が編成されると、それ以前の住所履歴は元の戸籍の附票(または戸籍の附票の除票)に残り、新しい戸籍の附票には引き継がれません。古い住所履歴が必要な場合は、過去の戸籍の附票も辿ることになります。

住民票上の世帯構成・世帯主との続柄

住民票には、対象者と同居している世帯員の情報、対象者が世帯主か否か、世帯主との続柄(配偶者・子等)が記載されます。

調査のポイント

世帯員に配偶者や成人した子がいることが判明すれば、本人と直接連絡が取れない場合でも、世帯員経由で連絡を試みる手がかりとなります。住民票に他人(同一世帯員)の氏名を含めて発行を求める場合は、相続手続上の必要性を市区町村に説明する必要があります。

本籍と筆頭者

戸籍附票の冒頭、または本籍記載のある住民票には、本籍と戸籍の筆頭者の氏名が記載されます(住民基本台帳法17条1号。なお、令和4年1月11日以降は、特別な請求がない限り省略して交付される運用となっている市区町村もあるため、必要な場合は申請書で記載を求めます)。

調査のポイント

婚姻によって本籍が変更されている場合や、養子縁組によって戸籍が異動している場合、その時点で戸籍関係者が変動している可能性があります。本籍と筆頭者を確認することで、追加で戸籍を辿るべき方向性が見えてきます。

国外転出の有無

対象者が日本国外に転出している場合、住民票は消除され、戸籍附票や住民票の除票にその旨が記載されることがあります。

調査のポイント

国外転出年月日と転出先国が記載されている場合があります。海外在住の相続人の調査については別途の手続が必要となります。

消除事由・改製事項

戸籍附票や住民票には、消除(住民登録の抹消)があった場合や、改製(様式変更)があった場合に、その旨と理由が記載されます。

調査のポイント

「職権消除」と記載されている場合、本人が実際にはその住所に居住していない可能性があり、現地調査や別ルートでの追跡を検討する必要があります。

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相続トラブルに備えたアドバイス

「相続人を欠いた協議は無効」が出発点

遺産分割協議は、相続人全員が当事者となって行わなければならず、一部の相続人を欠いた協議は無効となります。音信不通の相続人がいるからといって、その相続人を除外して協議を成立させてしまうと、後にその協議全体がやり直しとなるリスクがあります。連絡が取れないからといって安易に飛ばすのではなく、まずは戸籍附票・住民票による所在追跡を尽くすことが望まれます。

追跡の打ち止めをどこで判断するか

戸籍附票で住所履歴を追跡しても、最終的に住民票が職権消除されているなど、生活実態のある住所に辿り着けないケースがあります。どこまで追跡したら次のステップに進むかを早期に判断することが、手続全体の長期化を避けるうえで重要です。戸籍附票で判明した最終住所に手紙(配達証明付き)を送付し、宛先不明で戻ってくるか、一定期間反応がない場合に次のステップに進む、という運用も実務上行われます。

不在者財産管理人制度等の検討

戸籍附票・住民票での追跡を尽くしても所在が判明しない場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることが考えられます(民法25条1項)。選任された不在者財産管理人が、家庭裁判所の権限外行為許可(同法28条)を得たうえで、遺産分割協議に当事者として参加することで、協議を成立させることが可能となります。

なお、住民基本台帳法上、生死不明の状態が7年間継続している場合等には、失踪宣告(民法30条1項)を申し立てる選択肢もあります。失踪宣告がなされた場合、その者は死亡したものとみなされ、その者の相続人が代襲または再代襲して遺産分割協議に参加することになります。

戸籍附票は早期に取得する

戸籍附票の保存期間は、令和元年6月20日の住民基本台帳法施行令の改正により原則150年に延長されました。ただし、改正前に既に消除されている戸籍附票については、5年経過時点で廃棄されている可能性がある点に注意が必要です。古い世代の相続人の住所履歴を辿る必要がある場合は、できるだけ早期に戸籍附票を取得しておくことが望まれます。

連絡手段が確認できた場合の最初の接触

戸籍附票・住民票で住所が判明し、本人と連絡が取れそうな場合は、最初の接触に配慮することが望まれます。長年音信不通だった相続人にとって、突然「相続人として協議に参加してほしい」という連絡を受けることは、警戒や不信感を生みやすい場面です。最初の連絡では、被相続人の死亡の事実、自分が他の相続人の一人であること、相続手続のための連絡であることを簡潔に伝え、相手の事情を聞く姿勢を示すことが、後の協議をスムーズに進める前提となります。

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