生死不明の相続人の現状をどのように調査したらいいですか?

回答

連絡が途絶え、生死が確認できない相続人がいる場合、まず戸籍謄本(戸籍法10条1項・10条の2第1項)で生死を確認することが起点となります。生存していることが確認できれば、戸籍附票(住民基本台帳法20条1項・3項)で現住所を調査し、書面送付等で接触を試みます。死亡していることが判明した場合は、その者の相続人(数次相続人または代襲相続人)が遺産分割の当事者として加わるため、新たな当事者の特定に向けた追加の戸籍収集が必要となります。

目次

調査・手続の概要

遺産分割協議は、共同相続人全員の参加が必要です。長年連絡が途絶え、相手方相続人が現に生存しているのか、既に死亡しているのか自体が分からないケースでは、まず生死の確認が最優先となります。当事者の生死が確定しないと、誰を協議当事者にすべきか(本人か、その相続人か)が定まらず、後続のすべての手続が前提を欠くからです。

調査の中心となるのは戸籍謄本です。戸籍謄本には、本人の死亡・婚姻・離婚等の身分関係の変動が記載されているため、生死を客観的に確認できます。生存していることが確認できた場合は、続けて戸籍附票(住民基本台帳法16条以下)で現住所を調査します。

局面主に取得する資料確認できること
第1段階:生死の確認戸籍謄本死亡の有無、死亡日、身分関係の変動
第2段階(生存時):現住所の調査戸籍附票現住所、住所履歴
第2段階(死亡時):追加調査死亡した相続人の戸籍をたどる死亡した相続人の相続人(配偶者・子等)の特定

申請主体・申請先・必要書類

申請主体と請求権限

戸籍附票・戸籍謄本の請求権限は、請求者と対象者の関係によって根拠が異なります。相続人間の関係(直系か兄弟姉妹か)によって整理が変わるため、まず自分のケースがどこに当たるかを確認してください。

請求者と対象者の関係戸籍謄本の根拠戸籍附票の根拠
直系(親・子・孫・祖父母)戸籍法10条1項(本人等請求)住民基本台帳法20条1項(本人等請求)
兄弟姉妹等(傍系)戸籍法10条の2第1項(第三者請求)住民基本台帳法20条3項(第三者請求)

第三者請求(傍系の場合)では、住民基本台帳法20条3項1号の「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の附票の記載事項を確認する必要がある者」、戸籍法10条の2第1項1号の「自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合」に該当することを明らかにする必要があります。遺産分割協議のために他の相続人の現住所・身分関係を調査することは、これらに該当する典型例として、各市区町村でも認められています。

申請先

取得する資料申請先
戸籍附票の写し相手方の本籍地を管轄する市区町村役場(郵送請求可)
戸籍謄本(除籍・改製原戸籍を含む)相手方の本籍地を管轄する市区町村役場(郵送請求可)/直系であれば令和6年3月1日施行の広域交付制度を利用して最寄りの市区町村でも窓口請求可

なお、令和6年3月1日施行の戸籍法120条の2に基づく戸籍証明書等の広域交付制度は、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限られ、兄弟姉妹は対象外です。また、戸籍の附票は広域交付制度の対象外であり、郵送・代理人による請求もできません(法務省「戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)」)。

相手方の本籍地が不明な場合は、被相続人の戸籍をたどる過程で各相続人の本籍が判明します。

必要書類

書類内容・取得先
戸籍附票・戸籍謄本の交付請求書(各市区町村の様式)役場窓口またはホームページからダウンロード
被相続人の死亡が確認できる戸籍本籍地の市区町村役場
申請者と相手方相続人との続柄を示す戸籍各人の本籍地の市区町村役場
法定相続情報一覧図(あれば戸籍一式の代用が可能な場合あり)法務局
申請者の本人確認書類運転免許証・マイナンバーカード等(顔写真付き)
具体的な請求理由・利用目的を示す資料(第三者請求の場合)「相続人として遺産分割協議を行うため」「家庭裁判所への遺産分割調停申立てのため」等の記載
手数料戸籍附票:おおむね200〜400円(自治体の条例による)
戸籍謄本:450円、除籍謄本・改製原戸籍:750円

申請の流れ

ステップ1:相手方の本籍地を特定する

被相続人の戸籍をたどる過程で各相続人の本籍が判明します。本籍が古い情報のままになっている場合は、転籍等で別の本籍に移っていることがあるため、最新の戸籍を取得して現在の本籍を確認します。

ステップ2:本籍地の市区町村役場へ戸籍附票・戸籍謄本を併せて請求する

戸籍附票で現住所と住所履歴を、戸籍謄本で生死・身分関係を調査するため、両方を併せて取得するのが基本です。郵送請求が可能なため、遠隔地の自治体に対しても自宅から手続できます。第三者請求(兄弟姉妹間など)の場合は、請求理由と被相続人との相続関係を示す資料を添付します。

ステップ3:追加の戸籍収集(後続の当事者の特定)

死亡が判明した場合は、その者の出生から死亡までの戸籍と、その相続人の戸籍を順次収集します。

取得した書類で確認すべき項目

生存確認

戸籍謄本で、相手方が生存しているか、死亡しているかを確認します。死亡している場合は、戸籍に死亡年月日死亡地が記載されます。

調査のポイント

死亡している場合は、その死亡日と被相続人の死亡日との前後関係が、その後の処理を大きく分けます。

相手方が被相続人の死亡後に死亡している場合 → 数次相続の問題となります。相手方は一旦相続人の地位を得ているため、その地位がさらに相手方の相続人に承継されます(配偶者・子等)。

相手方が被相続人より先に死亡している場合 → 代襲相続の問題となります(民法887条2項等)。相手方に子(=被相続人の孫)がいれば、その者が代襲相続人として遺産分割の当事者となります。

生存している場合の現住所(戸籍附票)

生存している場合は、戸籍附票で現在の住民登録上の住所と住所履歴を確認します(住民基本台帳法17条)。

調査のポイント

住所を定めた年月日が新しい場合は現住所への居住可能性が高く、長期間異動がない場合は実態として別の場所に居住している可能性もあるため、書面送付後の到達・返送の別で実態を確認します。なお、転籍があると現在の附票には転籍後の住所しか記録されないため、それより前の住所をさかのぼる場合は転籍前の戸籍の附票(除附票)を別途取得します。

死亡している場合の追加調査

相手方が死亡していることが判明した場合、新たに当事者となる相手方の相続人を特定するための追加調査が必要となります。具体的には、以下の手順で戸籍を収集します。

  1. 相手方の出生から死亡までの戸籍(改製原戸籍・除籍を含む)を本籍地の各市区町村から取り寄せ、相手方自身の婚姻・子の有無等を確認します。
  2. 相手方の相続人(配偶者・子等)を特定し、当該相続人の現在の戸籍と戸籍附票を取得します。
  3. 相手方の相続人がさらに死亡している場合は、その者の相続人をたどります(数次相続が連鎖している場合あり)。
調査のポイント

相続人の範囲を確定するため、相手方の戸籍藤本は出生から死亡まで連続したものをすべて収集する必要があります。漏れがあると、新たな相続人を見落とすリスクがあります。

相続トラブルに備えたアドバイス

書面送付の段取り

戸籍附票で現住所が判明したら、まず通常の郵便で連絡を試み、応答がなければ配達証明付き内容証明郵便への切替えを検討してください。配達証明により、相手方が書面を受領したか、不在で持戻しになったかが客観的に記録されるため、後の調停申立等で「協議に応じる意思がない」「住民票上の住所と実態に乖離がある」ことを示す資料として有用です。

長年連絡が途絶えていた相手に突然書面を送ることになる場面が多いため、文面は穏当に、相続発生の事実・遺産の概略・協議申入れの趣旨に絞って簡潔に書く方が応答率が上がる傾向があります。書面の具体的な内容や協議書案は、遺産分割Q&Aの該当記事を参照してください。

書面を送付しても合理的な期間内に応答がない場合は、家庭裁判所への遺産分割調停の申立を検討します。申立先は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所(または当事者の合意で定める家庭裁判所)です(家事事件手続法245条1項)。

書面を送付しても応答がない場合

調査の結果、現住所が判明し書面を送付しても合理的な期間内に応答がなく、協議に応じる意思が見受けられない場合は、家庭裁判所への遺産分割調停の申立を検討することになります。遺産分割調停の申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所(または当事者の合意で定める家庭裁判所)です(家事事件手続法245条1項)。

家庭裁判所からの呼出しという公的な関与により、当事者間の直接連絡では応答しなかった相続人が出頭する場面もあります。なお、調停が不成立になった場合は、審判手続に自動的に移行します(家事事件手続法272条4項)。

死亡していることが判明した場合

相手方が死亡している場合、その者の相続人が遺産分割の当事者として加わるため、追加の調査をすることになります。具体的には、相手方の出生から死亡までの戸籍謄本を改めて収集し、新たな相続人(配偶者・子等)を特定する作業が必要となります。

ここで実務上注意すべきは、相手方の死亡時期によって処理が変わる点です。

  • 被相続人より先に死亡している場合(代襲相続):相手方の子等(=被相続人の孫等)が代襲相続人として登場します。代襲相続人の有無・人数を戸籍で確定させたうえで、協議当事者に加えます。
  • 被相続人の死亡後に死亡している場合(数次相続):相手方は一旦相続人の地位を得ているため、相手方の相続(配偶者・子等)を経由して、相手方の相続人に当該地位が承継されます。遺産分割協議の当事者は相手方の相続人全員となり、相手方の遺産分割協議も別途必要となる場合があります。

数次相続が連鎖していると当事者が一気に増え、協議が長期化する典型パターンとなります。死亡判明の早い段階で家系図を作成し、関係者を可視化することをお勧めします。

住民票上の住所と実際の居所が異なっている場合

戸籍附票の現住所宛てに書面を送付しても「宛先不明」「居住者不在」で返送される場合や、調停を申し立てても呼出状が届かない場合、住民票上の住所と実際の居所が異なっている可能性があります。

このような場合の選択肢として、不在者財産管理人の選任(民法25条1項)を検討する余地があります。家庭裁判所が選任した不在者財産管理人は、家庭裁判所の権限外行為許可(民法28条)を得て、不在者に代わって遺産分割協議に参加できます。ただし、これは「従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者」を対象とする制度であり、要件・手続・予納金等の負担も小さくありません。まずは戸籍附票上の現住所への送付や調停申立で接触を試み、それでも接触ができない場合の選択肢として位置づけるのが現実的です。

戸籍附票の保存期間に関する実務的留意

戸籍附票の除票・改製原附票は、令和元年6月20日施行の住民基本台帳法施行令34条改正により、保存期間が従前の5年から150年に延長されました。ただし、改正前に既に保存期間(5年)を経過していたものは復元されないため、それより以前の住所履歴は取得できないことがあります。長年連絡を断っていた相続人の古い住所をさかのぼる必要がある場合は、附票が現存しているうちに早期に取得することが望まれます。

取得した資料の保管

取得した戸籍附票・戸籍謄本・配達証明等の控えは、原本のまま大切に保管してください。遺産分割調停・審判では、写しではなく原本(または市区町村発行の証明書)が証拠として求められる場面があります。配達証明や郵便物の受領通知も、相手方が協議に応じなかった経過を示す資料として保管しておくことをお勧めします。

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