相続人がいなくても諦めないで!「内縁の妻」や「介護した甥」が遺産を受け取れる特別縁故者制度とは?

「長年連れ添った内縁の夫が亡くなった。籍を入れていないからという理由だけで、二人の思い出が詰まった家を出て行かなければならないの?」
「身寄りのない叔父の介護をずっと一人で背負ってきた。それなのに、叔父の残した預金はすべて国に没収されてしまうの?」

法律上の「相続人(配偶者や血族)」ではないというだけで、故人への献身が一切報われないのは、あまりにも理不尽だと感じるのではないでしょうか。

しかし、諦めるのはまだ早いです。民法第958条の3には、こうした方々を救済するための「特別縁故者(とくべつえんこしゃ)」という制度が存在します。これを利用すれば、相続権がなくても遺産の一部、あるいは全部を受け取れる可能性があります。

この記事では、過去の実際の裁判例や実務の運用に基づき、あなたがこの制度の対象になる可能性があるのか、そして絶対に逃してはいけない「手続きの期限」について解説します。

目次

私は対象?「特別縁故者」として認められる3つのパターン

特別縁故者とは、亡くなった方(被相続人)と特別に親しい関係にあった人のことを指します。ただし、「仲が良かった」という主観的な理由だけでは認められません。

過去の判例では、主に以下の3つのパターンに該当する人を対象としています。

①生計を同じくしていた(内縁の配偶者など)

最も認められやすいのが、「お財布(家計)を一つにして暮らしていた人」です。

  • 内縁の妻・夫
    • 【判例】30年以上同居し、内縁関係にあった妻について、唯一の身寄りとして療養看護や葬儀を行った点が評価され、遺産(不動産含む)の分与が認められた事例があります。
  • 事実上の養親子
    • 【判例】養子縁組はしていないが、幼少期から継母(父の後妻)と40年以上同居し、実の親子のように扶養し合っていた継子について認められた事例があります。

ここでは「戸籍上のつながり」がない分、「経済的な一体性(生活費を共有していた事実)」が重視されます。

②療養看護に努めた(献身的に介護した従兄弟など)

同居していなくても、亡くなった方の病気や老後の世話を献身的に行った人も対象です。

  • 遠い親戚
    法定相続人ではない従兄弟(いとこ)や、息子の妻(嫁)などが、認知症の介護を一人で背負っていたケース。
  • 近所の知人
    親族ではないが、身の回りの世話や通院の付き添いを継続していたケース。

【重要】「職業的な介護」との区別

ここで問われるのは、「報酬に見合わないほどの献身的な貢献」です。

ヘルパーや看護師として給料をもらって世話をしていた場合、原則として特別縁故者にはなれません。

ただし、過去の判例では「通常の業務範囲を大幅に超える献身的な世話があった(時間外の泊まり込みなど)」として、例外的に施設運営法人への分与を認めたケースもあります。

③その他(師弟関係や親子のような関係)

①や②には当てはまらないものの、それと同じくらい「密接な関係」があった場合です。

例えば、特別な介護の事実はなかったものの、親族間の交流(いとこ会など)を主催し、生涯独身だった被相続人と精神的な支え合いがあったとして、従兄弟への分与が認められた事例などがあります。

いくらもらえる?「全額」か「一部」かの分かれ道

「認められれば、遺産はすべてもらえるの?」とよく質問を受けますが、答えは「ケースバイケース」です。

金額は決まっていない。「裁判所の裁量」で決まる仕組み

特別縁故者への財産分与は、法定相続分のように「配偶者は2分の1」といった決まりがありません。

家庭裁判所の裁判官が、以下の要素を総合的に見て決定します。

  • 故人との関係の深さ・期間
  • 介護の苦労の度合い
  • 遺産の総額

【実例】「遺産が多いから」たくさんもらえるわけではない

  • 全額の事例
    遺産が少なく(数百万円程度)、長年連れ添った内縁の妻の場合、今後の生活保障の意味も含めて「全額」認められる傾向にあります。
  • 一部(少額)の事例
    遺産総額が約3億7000万円と高額な事案で、親族として交流があった従兄弟に対し、裁判所が「300万円」のみの分与とした事例があります。

つまり、貢献度に見合った金額(例:介護報酬相当額+慰労金)が算定されるため、「遺産が億単位だから自分も大金がもらえる」とは限らないという現実を知っておきましょう。

【期限厳守】遺産を受け取るまでのタイムスケジュール

特別縁故者として遺産をもらうためには、ただ待っているだけではいけません。非常に厳格なスケジュールがあり、一日でも遅れると権利を失います。

2023年の法改正(相続財産清算人制度)を踏まえた流れを整理しました。

まずは「相続財産清算人」を選任

相続人がいない場合、まず家庭裁判所に申し立てて、亡くなった方の財産を管理・整理する「相続財産清算人(そうぞくざいさんせいさんにん)」を選任してもらう必要があります。

※実務上の壁:予納金について

申立ての際、故人の手持ち現金が少ない場合、申立人が裁判所に「予納金(20万円〜100万円程度)」を納めなければならないことがあります。この費用負担が発生するリスクも考慮に入れておきましょう。

ラストチャンスは「最後の公告」から3か月以内!

ここが最大の山場です。相続財産清算人が選ばれると、官報(国の広報誌)に「相続人がいるなら名乗り出てください」というお知らせ(公告)が載ります。

この期間が過ぎ、「結局、相続人は現れませんでした」と確定した後、ようやく特別縁故者の出番です。

【手続きのタイムライン】

  1. 相続財産清算人の選任(約6か月以上:清算人による調査と公告)
  2. 「相続人捜索の公告」期間満了
    • この時点で、正式に「相続人なし」が確定します。
  3. 【★ここが勝負!】特別縁故者への財産分与申立て
    • 期限: 上記の期間満了から3か月以内(厳守)
  4. 家庭裁判所による審判・分与の決定

この「3か月」という期間は、延長できません。

「知らなかった」「忙しかった」は通用せず、期限を過ぎると申立て自体が却下され、遺産は国庫(国)へ行ってしまいます。

相続財産清算人が選ばれてから、実際に申立てができるまでには半年以上の時間が空くため、カレンダーで期限を管理し続けることが何より重要です。

注意点:もらった遺産には「相続税」がかかります

無事に遺産を受け取れたとして、最後に忘れてはいけないのが税金の話です。

他人でも税金は発生する(しかも2割加算の対象)

特別縁故者が受け取った財産は、税法上「遺贈(遺言でもらった)」のと同じ扱いになり、相続税の対象になります。

さらに、あなたは配偶者や一親等の血族(親・子)ではないため、通常の相続税額に2割加算された金額を納める必要があります。

「不動産をもらったけれど、相続税を払う現金がない」といった事態にならないよう、分与額が決まったら税金の見積もりも視野に入れる必要があります。

まとめ:貢献が報われるために、期限管理だけは徹底しよう

特別縁故者の制度は、法律上の家族がいなくても、故人を支えたあなたの想いが報われるための最後の砦です。

しかし、その扉が開いている期間は「相続人不在が確定してから、わずか3か月間」と非常に短く限定されています。

あなたがすべきことは、まず「自分が特別縁故者に該当する可能性があるか」を冷静に見極め、もし該当するなら「いつ公告期間が終わるか」を正確に把握することです。

故人との思い出を大切にするためにも、制度の仕組みを正しく理解し、手続きの準備を進めていきましょう。

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