相続人が行方不明のとき、遺産分割はどう進めればいいですか?

回答

相続人の中に行方不明者がいる場合でも、遺産分割を進めることは可能です。具体的には、家庭裁判所に不在者財産管理人(民法25条)の選任を申し立て、選任された管理人を行方不明の相続人の法定代理人として調停に関与させる方法をとります。なお、相続人が1人でも欠けた遺産分割は無効となるため、行方不明者を除外して進めることはできません。

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結論

相続人の中に行方不明者がいる場合、その相続人を無視して遺産分割を進めることはできません。遺産分割は、共同相続人の全員が参加しなければならず、一部の相続人が欠けた状態で成立した遺産分割は全体として無効となります。

そこで、行方不明の相続人がいる場合には、不在者財産管理人(ふざいしゃざいさんかんりにん)の選任を家庭裁判所に申し立て、選任された管理人が行方不明者に代わって遺産分割に関与するという方法がとられます(民法25条)。

根拠と条件

行方不明者がいる場合に公示送達で進められない理由

遺産分割調停は、当事者間の話合いによる解決を目指す手続です。正式審判であれば、公示送達(こうじそうたつ)という方法により、行方不明者にも審判の効力を及ぼすことは法律上可能です(民事訴訟法110条・111条)。しかし、調停に代わる審判については、公示送達の方法により告知することはできません(家事事件手続法285条2項)。

また、実務上も、行方不明者がいるからといって調停を不成立にして正式審判に移行するという運用はされていません。調停は話合いによる解決を目指す手続であり、行方不明の当事者について何の手当てもせず、公示送達により正式審判を行うことは、家庭裁判所に求められている役割として相当ではないと考えられているためです。

不在者財産管理人の選任

不在者(ふざいしゃ)とは、従来の住所・居所を去って容易に帰ってくる見込みがない者をいいます(民法25条)。行方不明者もこれに該当します。

遺産分割を進めるためには、不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立てる必要があります。遺産分割の当事者は、利害関係があるものとして、不在者財産管理人選任の申立てをすることができると解されています。不在者財産管理人は、不在者の最後の住所を管轄する家庭裁判所で選任され、弁護士又は司法書士が選任されるのが通常です。

不在者財産管理人の権限と権限外許可

不在者財産管理人は、清算権限を除き、保存行為、利用・改良行為をすることができますが、遺産分割のようにその範囲を超える行為をするには、家庭裁判所の許可(権限外許可)が必要です(民法28条、家事事件手続法別表第1の55)。

権限外許可を判断する家庭裁判所は、遺産分割調停を担当している家庭裁判所ではなく、不在者財産管理人を選任した家庭裁判所です。この家庭裁判所は、不在者にとって公平な遺産分割がされていることを確認して、権限外許可の申立てを認めることになります。

具体的な場面での適用

設例:調停申立て後に行方不明者が判明した場合

被相続人Aの相続人がB・C・Dの3名であるとします。Bが遺産分割調停を申し立てた後、Dが行方不明であることが判明した場合、出席当事者B・C間で合意がされても、不在者財産管理人が選任されるまで調停を成立させることはできません。調停に代わる審判を出すこともできません。

このような場合、調停委員会は、他の当事者に対して不在者財産管理人の選任申立てを促します。不在者財産管理人が選任され、当事者間で合意がされた場合には、成立を予定している調停条項と同じ内容の中間合意を調書に記載して、その調書を権限外許可の申立ての疎明資料として提出してもらい、次回調停期日に権限外許可がされたことを確認して、調停を成立させることになります。

事前に行方不明が判明している場合

調停を申し立てる前に不在者がいることが分かっていれば、先に不在者財産管理人を選任してから調停を申し立てることができます。この場合、当初から不在者財産管理人が調停に関与することができ、手続がスムーズに進みます。場合によっては、調停を申し立てることなく、不在者財産管理人を含む当事者間で遺産分割協議が成立することもあります。

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