相続した株式の評価方法は?上場株式と非上場株式の違いを教えてください
上場株式は証券取引所の市場価格(終値)により客観的に評価できます。これに対し、非上場株式(取引相場のない株式)は市場価格が存在しないため、株価鑑定の実施や当事者間の合意によって評価を確定する必要があります。遺産分割における株式の評価は、分割時(調停成立が予定される期日又は審判日)の直近の価格が基準となります。
それぞれの意味
上場株式の評価
上場株式とは、証券取引所に上場されている株式をいいます。上場株式は、証券取引所における取引価格(終値)が公表されているため、客観的な資料によって株価を確定することができます。
遺産分割調停・審判において、上場株式の評価は、調停成立が予定される期日又は審判日の直近の終値を基準にして確定されます。客観的資料により確定することができるため、当事者全員による合意や、欠席当事者がいた場合の意向の確認等も必要ありません。
調停委員会は、客観的資料として、調停成立が予定されている期日の直近の証券会社等のホームページを印刷したものの提出を促すのが通常です。
非上場株式の評価
非上場株式(取引相場のない株式)とは、証券取引所に上場されていない株式をいいます。被相続人が経営していた家族経営の会社の株式などが典型です。
非上場株式は、上場株式とは異なり、客観的資料により直ちに株価が分かるものではありません。そのため、公平な遺産分割を実現するためには、非上場株式の評価の確定が必要となります。
非上場株式の評価を確定するには、まずは当事者全員の合意により評価を確定することを目指し、合意できなかった場合には株価鑑定(公認会計士等の専門家による鑑定)の実施を検討することになります。
上場株式と非上場株式の評価方法の違い
| 比較項目 | 上場株式 | 非上場株式 |
|---|---|---|
| 市場価格の有無 | あり(証券取引所の取引価格) | なし |
| 評価の基準 | 調停成立予定期日又は審判日の直近の終値 | 当事者間の合意又は株価鑑定 |
| 評価の客観性 | 高い(客観的資料で確定可能) | 低い(評価方法によって金額が異なり得る) |
| 当事者の合意の要否 | 不要(客観的資料で足りる) | まずは合意による確定が望ましい |
| 鑑定の要否 | 不要 | 合意できない場合は必要 |
| 費用・期間の負担 | 小さい | 大きい(特に鑑定を実施する場合) |
| 評価で考慮される価格概念 | 市場の終値(=時価) | 税務上の時価と私法上の時価の2つがある |
上場株式と非上場株式の評価で特に重要な違いは、「客観性」と「費用・期間」の2点です。
上場株式は、証券取引所の終値という客観的な指標があるため、評価をめぐって争いが生じにくく、費用や時間もほとんどかかりません。もちろん当事者全員が合意して株式の評価を確定することは問題なく、相続税申告書記載の株価や、分割方法が合意できた時点での株価等、様々な時点での株価で合意されることがあります。
これに対して、非上場株式は市場価格が存在しないため、評価の確定に手間と費用がかかります。当事者間で合意できない場合には株価鑑定を実施することになりますが、株価鑑定は不動産鑑定に比べて費用や期間において負担が大きくなりやすい傾向にあります。加えて、当事者間の感情的対立が激しい場合には、鑑定に必要な決算報告書等の資料が提出されないこともあり、鑑定自体が困難になるケースもあります。
非上場株式における2つの「時価」
非上場株式の評価には、「税務上の時価」と「私法上の時価」という異なる2つの時価概念があることに注意が必要です。
税務上の時価とは、国税庁が定める財産評価基本通達(評価通達)に基づいて画一的に算定される株価です。あくまでも課税上の評価額を意味するもので、当該株式の実際上の価値を表すものではありません。相続税の申告の際に用いられる評価額がこれにあたります。
私法上の時価とは、当該株式の実際上の価値を意味する概念であり、遺産分割における財産の評価や、譲渡制限株式の売買価格の決定等の場面で問題となります。私法上の時価を算定する方法としては、DCF法(ディスカウンテッド・キャッシュ・フロー法)、収益還元法、配当還元法、純資産法など様々な手法があり、採用する手法によって評価額に差が生じ得ます。
税務上の時価と私法上の時価は常に一致するわけではなく、それぞれの評価額が乖離することも珍しくありません。遺産分割において非上場株式の評価が問題となる場合は、この点に留意する必要があります。
遺産分割における評価の進め方
上場株式の場合
上場株式の評価は、原則として調停成立が予定される期日又は審判日の直近の終値を基準にすることで確定します。特定の銘柄の取得が希望されていない場合には、調停中に上場株式を売却して現金化することも考えられます。この場合、中間合意として調書に記載することが必要であり、売却代金から売却費用を控除した残額を遺産分割の対象とする旨の合意を行います。
非上場株式の場合
非上場株式の評価は、以下の順序で進められるのが一般的です。
まず、当事者の中に遺産である非上場株式についてその会社の経営に関与している者がいる場合には、決算書類等に加え、これを基礎にした税理士や公認会計士作成の私的鑑定書又は査定書も提出してもらい、調整していくことになります。相続税申告書の株価を基準にして調整することもあります。
次に、当事者間で合意できなかった場合には、株価鑑定の実施を検討します。ただし、鑑定人候補者による鑑定費用の見積もりを見て、鑑定実施ではなく改めて当事者間の合意による評価の確定をした事例もみられます。
なお、当該会社が不動産を所有している場合には、その不動産の価値も株価に影響するため、株価鑑定に先行して不動産鑑定を実施する必要があります。そうなると、株価のみの鑑定以上に費用も時間もかかることになります。

