他の相続人が不動産鑑定に反対している場合、どうすればいいですか?
他の相続人が不動産鑑定に反対していても、鑑定を実施することは可能です。鑑定は証拠調べの一種であり、評価を確定する必要があれば、反対する当事者がいても裁判所の判断で実施できます(家事事件手続法64条1項、民事訴訟法212条)。ただし、鑑定を実施するには費用全額の予納が必要となるため、実務上は申立人側が一旦全額を負担するケースもあります。
結論
遺産分割の調停・審判において、他の相続人が不動産鑑定(不動産鑑定士による正式な評価)に反対していても、鑑定を実施することは可能です(家事事件手続法64条1項、民事訴訟法212条)。
鑑定は裁判所が行う証拠調べの一種ですから、一部の当事者が反対しているからといって実施できなくなるわけではありません。鑑定を申し立てた当事者以外の当事者に陳述の機会(意見を述べる機会)を与えた上で、不動産の評価を確定する必要があると認められれば、裁判所は鑑定を実施することができます。
根拠と条件
鑑定が実施できる法的根拠
遺産分割事件における鑑定は、家事事件手続法64条1項に基づいて実施されます。同条は、家庭裁判所が事実の調査に必要な場合に鑑定を命じることができると規定しています。また、鑑定の手続については民事訴訟法212条以下の規定が準用されます。
したがって、相続人の一部が反対していても、鑑定を申し立てた当事者以外の当事者に陳述の機会を与えた上で、遺産の評価を確定する必要があれば、鑑定を実施し評価を確定することができます。
鑑定が必要となる場面
不動産鑑定が必要になるのは、主に次のような場面です。
- 遺産である不動産の現物取得(代償取得を含みます。)を希望する当事者がいるのに、当事者間で不動産の評価について合意ができない場合
- 欠席当事者が調停に代わる審判に対して異議を申し立てる可能性がある場合
- 特別受益(被相続人から生前に受けた贈与や遺贈などの特別な利益)や寄与分(被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした相続人に認められる上乗せ分)が主張されており、具体的相続分を算定するために不動産の評価が不可欠な場合
なお、遺産である不動産について現物取得の希望がなく、特別受益等の主張もなければ、法定相続分による換価分割(売却して代金を分ける方法)又は共有分割となりますので、評価の確定は不要であり、鑑定を実施する必要はありません。
費用の予納が必要
鑑定を実施するためには、鑑定費用の全額が予納されることが必要です。鑑定費用は、原則として法定相続分に応じて各当事者が負担するのが通常であり、予納も法定相続分に応じて行います。
しかし、鑑定に反対する当事者や、欠席等の理由で予納に応じない当事者がいる場合には、鑑定を申し立てた当事者等が、協力しない当事者分の費用も含めて一旦全額を予納することになります。立て替えた費用については、調停成立時の調停条項、調停に代わる審判、又は正式審判の主文で精算(清算)されます。
具体的な場面での適用
場面1:一部の相続人が費用負担を拒否しているケース
たとえば、被相続人Aの相続人がB・Cの2名で、遺産に自宅不動産があるとします。Bが自宅を取得してCに代償金(遺産を取得する代わりに支払うお金)を支払う方向で調停が進んでいますが、不動産の評価額について合意ができません。Bは鑑定を希望していますが、Cは鑑定に反対し、費用を負担するつもりもありません。
この場合、調停委員会としては、不動産の取得を希望しているBに対し鑑定の申立てを促します。Bが鑑定を申し立て、Cの負担分も含めて鑑定費用の全額を予納すれば、Cの反対にかかわらず鑑定を実施することができます。Bが立て替えた費用は、調停成立時の調停条項や審判の主文で処理されます。
場面2:調停における実務上の流れ
調停においては、鑑定による評価の確定はあくまで最後の手段と位置づけられています。調停委員会としては、まず当事者間での合意による評価の確定を目指し、不動産業者の査定書の提出を求めるなどして調整を行います。それでもどうしても合意ができなかった場合に、鑑定を実施して評価を確定することになります。
鑑定を実施する場合には、鑑定対象の不動産の特定、鑑定の時点、前提条件、費用の負担割合、鑑定の結果を尊重する(従う)ことなどを調書に記載し、鑑定実施に向けて手続を進行していくことになります。

