代襲相続の場合、被代襲者が被相続人から受けた生前贈与は特別受益として持ち戻しの対象になりますか?
被代襲者(亡くなった相続人など)が被相続人から受けた生前贈与は、代襲相続人の特別受益(被相続人から生前に受けた贈与や遺贈などの特別な利益)として持ち戻しの対象になります(民法903条1項)。代襲相続人は被代襲者の相続上の地位を引き継ぐため、被代襲者が受けた特別受益も引き継ぐと解されています。
結論
代襲相続人(被代襲者に代わって相続する直系卑属)は、被代襲者が被相続人から受けた生前贈与について、特別受益の持ち戻し義務を引き継ぎます。被代襲者が生存していたならば置かれていたであろう地位と同じ立場に立つべきだからです。
また、代襲相続人自身が被相続人から贈与を受けていた場合にも、その贈与が特別受益に該当するかが問題となりますが、贈与を受けた時期が代襲原因(被代襲者の死亡等)の発生前か後かによって結論が異なります。
根拠と条件
被代襲者が受けた贈与(持ち戻し義務を引き継ぐ場合)
特別受益の持ち戻し(民法903条1項)は、共同相続人間の公平を図るための制度です。代襲相続(民法887条2項)は、被代襲者の受けるべき相続分をそのまま引き継ぐ制度ですから、被代襲者に特別受益があれば、代襲相続人がその持ち戻し義務も承継します。
たとえば、被相続人Aの子Bが生前にAから店舗開業資金として1,000万円の贈与を受けていたところ、BがAより先に死亡し、Bの子K(Aの孫)が代襲相続人となった場合、Kは被代襲者Bの持ち戻し義務を引き継ぎます。Bが生存していたならば持ち戻しを求められる立場にあったのですから、代襲相続人Kがそれよりも有利な地位に置かれるべきではないという考え方によるものです。
代襲相続人自身が受けた贈与
代襲相続人自身が被相続人から贈与を受けていた場合、その贈与が特別受益になるかどうかは、贈与の時期と代襲原因の発生時期の前後関係がポイントになります。
| 場面 | 特別受益になるか | 理由 |
|---|---|---|
| 代襲原因の発生後に代襲相続人が被相続人から贈与を受けた場合 | なる | 代襲相続人として相続人の地位にある者への贈与であるため |
| 代襲原因の発生前に代襲相続人が被相続人から贈与を受けた場合 | ならない(通説) | 贈与時点ではまだ相続人の地位になく、持ち戻しを予定していないため |
通説では、代襲原因が発生する前の代襲相続人への贈与は、持ち戻しの対象とはなりません。贈与がなされた時点では、その者はまだ代襲相続人ではなく共同相続人でもないため、被相続人が持ち戻しを予定していたとはいえないからです。
一方、代襲原因の発生後に代襲相続人が被相続人から贈与を受けた場合には、その贈与は代襲相続人自身の特別受益となります。被代襲者についても特別受益があった場合には、代襲相続人は、自らの特別受益に被代襲者の特別受益も併せて、具体的相続分が算定されることになります。
具体的な場面での適用
設例:被代襲者の特別受益と代襲相続人自身の特別受益が併存するケース
被相続人Aが死亡し、相続人は妻Wと子C・Dの2名、および子B(A死亡の1年前に死亡)の代襲相続人である孫Kの合計4名です。Bは生前にAから店舗開業資金として1,000万円の贈与を受けていました。さらに、Bの死亡後、KはAから長期留学費用として500万円の贈与を受けていました。
この場合、Kの具体的相続分の算定にあたっては、被代襲者Bが受けた1,000万円と、K自身がB死亡後に受けた500万円の合計1,500万円が特別受益として持ち戻しの対象となります。一方、仮にKがBの生存中(代襲原因発生前)にAから贈与を受けていたとしても、その贈与は通説では特別受益にはあたりません。

