不動産の生前贈与が特別受益に該当する場合、特別受益の評価額はいつの時点を基準に計算しますか?

回答

特別受益(被相続人から生前に受けた贈与などの特別な利益)の評価額は、相続開始時(被相続人が亡くなった時点)を基準に算定します。贈与を受けた時点の価格ではなく、相続開始時の価格で評価するため、不動産の価格変動が特別受益額に影響します。

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結論

特別受益の評価基準時は、相続開始時です。不動産の生前贈与があった場合、贈与を受けた当時の価格ではなく、被相続人が亡くなった時点での不動産の評価額をもって特別受益額を算定します。

これは、特別受益の持戻し(生前贈与の額を相続財産に加算して各相続人の相続分を計算する仕組み)が、相続開始時の遺産額に贈与の価額を加えて「みなし相続財産」を算出する制度であるため、贈与財産も相続開始時の価値で評価する必要があるからです。

根拠と条件

評価基準時の原則

民法904条は、特別受益にあたる贈与の価額について「相続開始の時における価額」を基準とする旨を定めています。通説・実務ともにこの立場をとっており、近時の裁判例もほとんどがこれに従っています。

もっとも、実務上は相続開始時と遺産分割時の2つの時点で評価が問題になる場面があります。遺産分割の対象となる相続財産そのものは「遺産分割時」の価額で評価しますが、特別受益の評価は「相続開始時」を基準とします。したがって、特別受益者がいる場合には、「相続開始時」と「遺産分割時」の2時点の評価を行うことになります。ただし、実務上、相続開始時と分割時が近接しており不動産市況に大きな変動がない場合には、いずれか一方の時点の評価額で処理することもあります。

受贈者の行為による滅失・価格変動の場合

贈与を受けた不動産が、受贈者(贈与を受けた相続人)自身の行為によって滅失したり、価格が増減したりした場合には、贈与を受けた当時の原状のままであるとみなして相続開始時の価額を算定します(民法904条)。

たとえば、贈与当時500万円の居宅をもらった相続人がそれを焼失させたり、売却したり、修繕したりしたとしても、その居宅が贈与を受けたときの状態のまま存在するものとみなして、相続開始時の価値で評価します。相続開始時にその原状での価値が800万円であれば、特別受益額は800万円となります。

受贈者の行為によらない滅失・価格変動の場合

一方、贈与された不動産が受贈者の行為によらずに滅失した場合(たとえば地震などの不可抗力による倒壊)には、その相続人は贈与を受けなかったものとみなされ、特別受益はないものとして扱われます。また、同様の理由で価値が減少した場合には、その減少後の状態における相続開始時の価格を基準に算出します。

ただし、建物を通常どおり使用し、自然に老朽化した場合には、その使用利益を受けた範囲で特別受益となると解されています。

具体的な場面での適用

不動産そのものの贈与の場合

不動産そのものが贈与された場合、特別受益額は相続開始時の不動産の評価額で確定します。評価額は、当事者全員の合意または鑑定の実施により決定されます。

たとえば、被相続人が生前に相続人の一人にマンションの一室を贈与していた場合、贈与時の価格ではなく、相続開始時のマンションの評価額が特別受益額となります。

不動産の購入資金の贈与の場合

被相続人が不動産の購入資金を贈与した場合(いわゆる「売買代金の贈与」)には、贈与されたのは金銭です。この場合、原則としてその売買代金の金額が特別受益額となります。

不動産そのものの贈与か、購入資金の贈与かによって、特別受益額が異なることがあります。不動産の購入資金の贈与であれば贈与時の売買代金額が基準となりますが(貨幣価値の変動は考慮可)、不動産そのものの贈与であれば相続開始時の評価額が基準となります。贈与の時期が相続開始時よりかなり前である場合や、不動産の評価額が贈与時から大きく変動している場合には、両者の差が大きくなることがあります。

なお、金銭の贈与に伴う特別受益の評価については、原則として貨幣価値の変動を考慮して算定します。たとえば、昭和30年に贈与された500万円と近年に贈与された500万円とでは購買力に大きな差があるため、消費者物価指数などを参考に、贈与時の金額を相続開始時の貨幣価値に換算して特別受益額を算出します。

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