被相続人の不動産を管理・修繕していた場合、財産管理型の寄与分として認められますか?

回答

被相続人(亡くなった方)の不動産を管理・修繕していた場合、「財産管理型」の寄与分(被相続人の財産を管理することで財産の維持・増加に貢献した場合に認められる上乗せ分)として認められる可能性があります(民法904条の2第1項)。ただし、寄与分の一般的な要件に加えて、④財産管理の必要性と⑤継続性の要件を満たす必要があり、実際に認められるハードルは高いのが実情です。

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結論

財産管理型の寄与分は、相続人が被相続人の財産を管理することによって財産の維持形成に貢献した場合に認められます(民法904条の2第1項)。典型的には、被相続人が所有する賃貸不動産の管理を相続人が代わりに行っていたケースや、被相続人所有の農地を耕作していたケースなどがあります。

ただし、不動産の管理をしていたというだけで寄与分が認められるわけではありません。寄与分の一般的な要件(特別性・無償性・因果関係)に加え、④財産管理の必要性と⑤継続性という固有の要件を満たす必要があります。実務上は、これらの要件が併せて満たされていないことが多く、認められるケースは限定的です。

根拠と条件

財産管理型の寄与分が認められるためには、次の5つの要件をすべて満たす必要があります。

① 特別の寄与であること(特別性)

被相続人との身分関係に基づいて通常期待される程度を超える貢献であることが必要です。たとえば、被相続人の自宅の庭先に生える雑草を季節ごとに刈り取った程度では、寄与分は認められません。

② 対価を受けていないこと(無償性)

無報酬またはこれに近い状態でなされていることが必要です。報酬が本来の管理報酬等に比べて著しく少額である場合は、無償性の要件を満たすものと解されています。なお、相続人が財産管理のために被相続人所有の不動産を無償で利用している場合、それだけで寄与が否定されるわけではありませんが、使用利益分については考慮されるべきとされています。

③ 被相続人の財産の維持又は増加との間に因果関係があること

管理行為の結果として、実際に被相続人の財産が維持又は増加したことが必要です。

④ 財産管理の必要性

被相続人の財産を管理する必要があったことが求められます。管理行為の例としては、管理会社に委託することなく、貸アパートにつき補修、掃除、植木剪定、賃借人の募集、契約締結、滞納督促、入退去時の立会い、隣家とのトラブル処理等の業務を行うことなどが挙げられます。

この要件に関しては、賃貸不動産の管理を管理会社に委託していた場合が重要な論点になります。賃貸不動産の管理については管理会社への委託が多く、管理会社が賃借人の募集や契約締結、賃料の管理、清掃、賃借人明渡時の対応等を行うため、相続人が被相続人に代わって管理会社の選定や契約締結・更新、管理会社の変更に関わったとしても、財産管理の必要性があったとはいえません。また、管理会社の選定等によって被相続人の財産を維持又は増加させたということもできません。

同様に、相続人が親切心等から賃貸不動産の清掃等や賃借人等への対応、近隣との付き合い等をしていたとしても、特別の寄与であるとはいえないだけでなく、被相続人の財産を維持又は増加させたともいえないとされています。

賃貸不動産の管理について財産管理型の寄与分が認められるのは、被相続人が賃貸不動産の管理を委託せず、管理会社に委託した場合と同様の管理行為を相続人が行い、その結果、被相続人の財産を維持又は増加させたと認められた場合に限られます

⑤ 継続性

財産管理が相当期間に及んでいることが必要です。明確な基準があるわけではありませんが、たとえば、被相続人が入院していた期間のみ数か月間管理をした程度では、継続性の要件を満たしません。

寄与分額の算定方法

財産管理型の寄与分額は、次の算式で算定されるのが一般的です。

寄与分額 = 相当と思われる財産管理費用 × 裁量割合

「相当と思われる財産管理費用」の基準としては、第三者に管理を委託した場合の報酬額が参考になります。たとえば、賃貸不動産の総合的な管理については、不動産管理会社の請負料(基本料として賃料の5〜10パーセント程度が一般的)が参考とされます。

ただし、専門業者の料金をそのまま身内への報酬額として認めることは相当ではないため、被相続人との身分関係や親族関係に応じて裁量割合が考慮されます。

具体的な場面での適用

場面1:賃貸アパートの管理

被相続人が賃貸アパートを所有していたが管理会社には委託しておらず、相続人の一人が被相続人に代わって長年にわたり賃借人の募集、契約締結、賃料の集金、建物の補修、苦情対応などを無償で行っていた場合には、財産管理型の寄与分が認められる可能性があります。

一方、管理会社に委託していた場合は、相続人が共用部分の清掃などを行っていたとしても、寄与分は原則として認められません。調停・審判においても、まず管理会社への委託の有無が確認され、委託していた場合には寄与分が認められないことを前提に調整が進められます。

場面2:被相続人所有の土地売却への貢献

被相続人が所有する賃貸不動産について、相続人が賃借人との立退交渉を行い、その結果として不動産を売却でき、被相続人の財産が増加した場合には、立退きの困難さや相続人の具体的な行為等によっては、財産管理型の寄与分と認められることがあります。

なお、土地売却にあたり借家人の立退交渉や家屋の取壊し、売買契約の締結等に努力したことについて寄与分を認めた裁判例もあります(長崎家諫早出審昭和62年9月1日)。

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