寄与分の金額はどうやって計算しますか?算定方法を教えてください
寄与分の金額は、寄与行為の類型(家業従事型・金銭等出資型・療養看護型・扶養型・財産管理型)ごとに、一定の算定方式に基づいて計算します(民法904条の2)。いずれの類型でも、算定された金額に「裁量割合」と呼ばれる調整係数を乗じることで、最終的な寄与分額が決まります。
寄与分算定の基本的な考え方
寄与分(被相続人の財産の維持・増加に特別の貢献をした相続人に認められる上乗せ分)の金額は、寄与の時期、方法および程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して定められます(民法904条の2第2項)。
算定の基本的な枠組みは、次の2つの要素で構成されています。
1つ目は、寄与行為を金銭に換算した「基準額」です。たとえば、家業に従事した場合は同種の労働者が得られるであろう報酬額、介護をした場合は職業看護人の報酬相当額が基準となります。
2つ目は、「裁量割合」(調整係数)です。基準額をそのまま寄与分として認めるのではなく、被相続人との身分関係や寄与の具体的事情に応じた割合を乗じて調整します。
以下では、5つの類型ごとに具体的な算定方式を解説します。
類型別の算定方式
家業従事型
家業従事型(被相続人の事業に関し労務を提供した場合)の算定方式には、2つの方法があります。
方法1:報酬ベース方式(一般的な方法)
寄与分 = 寄与相続人が通常得られたであろう給付額 × (1 − 生活費控除割合) × 寄与期間
「寄与相続人が通常得られたであろう給付額」とは、家業と同種同規模の事業に従事する同年齢層の者の年間給与額を基準とし、賃金センサス等を参考にして算出します。生活費控除割合は、被相続人から受けていた生活費相当額を控除するもので、実費が判明すればそれによりますが、そうでない場合には一切の事情を考慮のうえ判断されます。
方法2:貢献割合方式(農業等の長期従事の場合)
寄与分 = 相続財産の総額 × 寄与相続人が相続財産の形成に貢献した割合
被相続人と寄与相続人が共に長期にわたって農業に従事してきたような場合には、報酬額から寄与分を算出するよりも、相続財産の形成に実際に貢献した比率をもって評価した方が良い場合があります。農業の内容や規模、収支状況、従事の態様や期間、遺産形成の経緯などを総合的に検討して、遺産の全部又は一部の一定割合を寄与分とします。
設例(報酬ベース方式)
給与相当額が月額18万円、生活費控除割合が50%(控除額9万円)、寄与期間が7年間(84か月)の場合:
寄与分 = 18万円 × 0.5 × 84か月 = 756万円
金銭等出資型
金銭等出資型(被相続人の事業に関して財産上の給付をする場合、又は被相続人に対し財産上の利益を給付する場合)の算定方式は、給付の形態によって異なります。
動産又は不動産の贈与の場合
寄与分 = 相続開始時の価額 × 裁量割合
不動産の使用貸借の場合
寄与分 = 相続開始時の賃料相当額 × 使用期間 × 裁量割合
金銭の贈与の場合
寄与分 = 贈与金額 × 貨幣価値変動率 × 裁量割合
金銭の贈与の場合は、贈与時から相続開始時までの間の物価変動を反映するため、貨幣価値変動率を乗じます。
金銭融資の場合
寄与分 = 利息相当額 × 裁量割合
金銭等出資型では、財産を給付するだけであるため、家業従事型や療養看護型と異なり、継続性や専従性は要件とされません。
療養看護型
療養看護型(病気療養中の被相続人の療養看護に従事した場合)の算定方式は、次のとおりです。
寄与分 = 報酬相当額(日当) × 看護日数 × 裁量割合
報酬相当額の算定基準
介護保険制度の施行後(平成12年4月以降)は、介護保険における「介護報酬基準」が広く用いられています。実務においては、要介護者の受けた介護サービスの内容、居住地(級地)等を考慮して介護報酬を算定したものを参考に、療養看護の寄与分を算定しています。
なお、デイサービスやショートステイを利用していた期間については、介護の実体がないため、その日数を看護日数から除く必要があります。
扶養型
扶養型(被相続人を扶養し、被相続人が出費を免れたため財産が維持された場合)の算定方式は、次のとおりです。
寄与分 = 扶養のために負担した額 × 裁量割合
被相続人の生活を維持するために相続人が実際に負担した金額(飲食費・被服費・医療費・住居関係費・公租公課など)を求めて、それに裁量割合を乗じます。
具体的な負担額の算出が困難な場合には、厚生労働大臣の定める「生活保護基準」や総務省統計局による「家計調査」を参考として、被相続人の扶養に要する金額を算定する場合もあります。
財産管理型
財産管理型(被相続人の財産を管理することによって財産の維持形成に寄与した場合)の算定方式は、次のとおりです。
寄与分 = 相当と思われる財産管理費用 × 裁量割合
財産管理行為そのものが寄与行為である場合(不動産の賃貸管理、占有者の排除など)は、当該行為を第三者に委託した際の報酬額を基準額とします。一方、財産管理に要した金銭の出資が寄与行為である場合(建物の火災保険料・修繕費・不動産の公租公課の負担など)は、相続人が現実に負担した額を基準額とし、それに裁量割合を乗じて計算するのが一般的です。
たとえば、不動産の賃貸管理については、不動産管理会社の請負料(基本料として賃料の5〜10パーセント程度が一般的であり、それに実際に要した修理費等が加算される)を参考にすることができます。ただし、いずれの場合も専門家である第三者の料金であり、それをそのまま素人である身内への報酬額として認めることは相当ではないため、裁量割合で調整されます。
裁量割合の意味と目安
裁量割合とは
いずれの類型においても、算定された基準額がそのまま寄与分として認められるわけではありません。基準額をどの程度寄与分として認めるかについては、一定の金額又は割合が当然に決まっているものではなく、事案ごとに個別に判断されます。この調整のための係数を「裁量割合」といいます。
裁量割合が設けられている主な理由は、次のとおりです。
介護報酬基準や家政婦報酬等は、基本的に看護又は介護の資格を有している者への報酬を前提としており、それは家政婦協会等の介護機関に支払われる金額です。介護者自身の報酬額とは異なります。さらに、扶養等の義務を負う親族と第三者とでは当然に報酬額も変わってくるはずであり、これら一切の要素を考慮した調整割合が「裁量割合」です。
類型ごとの目安
療養看護型では、裁量割合は通常0.5から0.8程度の間で適宜修正されており、0.7あたりが平均的な数値と思われます。
金銭等出資型における裁量割合は、療養看護型における裁量割合とは視点を異にする面もあるので、その減額率は低くなるものと考えられます。
扶養型では、寄与相続人が扶養義務を有していた場合には、同人の分担義務に相当する部分を控除する必要があります。通常は、一切の事情を考慮した上で「裁量割合」により調整をはかることが多く、単純に「1 − 寄与主張者の法定相続分割合」とすることもあります。

