長男の嫁が義父母を介護していた場合、寄与分や特別寄与料を請求できますか?
長男の嫁は相続人ではないため、寄与分(民法904条の2)を直接請求することはできません。ただし、平成30年相続法改正で創設された特別寄与料(民法1050条)の制度により、被相続人の親族として相続人に対して金銭の支払を請求することができます。また、従前の実務運用として、長男(相続人)自身の寄与分の中で妻の寄与行為を履行補助者による貢献として評価する方法も存続しています。
結論
長男の嫁(被相続人の子の配偶者)は、被相続人の相続人ではありません。そのため、相続人であることを前提とする寄与分制度(民法904条の2)を直接利用することはできません。
もっとも、平成30年相続法改正により特別寄与料の制度(民法1050条)が新設され、相続人以外の被相続人の親族が被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供を行い、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした場合には、相続人に対して特別寄与料の支払を請求することができるようになりました。長男の嫁は被相続人の三親等内の姻族(民法725条)に該当するため、この特別寄与料の請求権者となり得ます。
なお、令和元年7月1日以後に開始した相続に限り、特別寄与料の規定が適用されます(改正法附則2条)。
根拠と条件
寄与分制度を利用できない理由
寄与分は、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をした相続人に対して、その貢献に応じた取り分を加算する制度です(民法904条の2)。請求権者が相続人に限定されているため、相続人ではない長男の嫁は、自らの名で寄与分を主張することはできません。
特別寄与料の要件
特別寄与料を請求するためには、以下の要件をすべて満たす必要があります(民法1050条1項)。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 請求権者 | 被相続人の親族(六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族。民法725条)であること。ただし、相続人、相続放棄をした者、相続欠格者、廃除により相続権を失った者は除く |
| 寄与の態様 | 療養看護その他の労務の提供であること(財産上の給付は対象外) |
| 無償性 | 労務の提供が無償で行われたこと |
| 財産の維持・増加 | 被相続人の財産の維持または増加に寄与したこと |
| 特別の寄与 | 貢献の程度が一定程度を超え、貢献に報いるのが相当と認められる程度の顕著な貢献があったこと |
長男の嫁は、被相続人の子(長男)の配偶者として被相続人の三親等内の姻族に該当しますので、親族要件は原則として満たされます。
ただし、寄与分制度における「特別の寄与」が相続人と被相続人の身分関係に基づいて通常期待される程度を超える貢献を意味するのに対し、特別寄与料制度における「特別の寄与」は、特別寄与者が相続人ではないことを踏まえ、その者の貢献に報いるのが相当と認められる程度の顕著な貢献があったことを意味するものと解されています。
期間制限
特別寄与料の請求について当事者間で協議が調わないときは、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求することができますが、以下の期間制限があります(民法1050条2項ただし書)。
- 特別寄与者が相続の開始および相続人を知った時から 6か月以内
- 相続開始の時から 1年以内
いずれも除斥期間とされており、いずれか早い方が経過すると家庭裁判所への請求ができなくなります。寄与分(遺産分割の一部として主張)のような長期の権利行使は認められていない点に注意が必要です。
特別寄与料の上限と相続人間の負担
特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができません(民法1050条4項)。
相続人が数人いる場合には、各相続人は特別寄与料の額に法定相続分または指定相続分を乗じた額を負担します(民法1050条5項)。
具体的な場面での適用
場面1:特別寄与料を請求する
被相続人Aには子B・Cがおり、Bの妻XがAの療養看護を長年無償で行っていたとします。Aが死亡し、相続が開始しました。
この場合、Xは相続人ではないため寄与分を主張できません。しかし、Xは被相続人Aの三親等内の姻族に該当するため、要件を満たせばB・Cに対して特別寄与料を請求できます。XはB・Cの全員を相手方とする必要はなく、一部の相続人に対して個別に請求することも可能です。
例:特別寄与料の総額が300万円と認められる場合
・B・Cの法定相続分は各2分の1
・Bが負担する額:300万円 × 1/2 = 150万円
・Cが負担する額:300万円 × 1/2 = 150万円
場面2:夫(相続人)が存命で、夫の寄与分として主張する
Bが相続人として存命であれば、Xの介護行為をBの寄与分の中で「相続人Bの履行補助者による貢献」として評価する従前の運用も存続しています(東京家審平成12年3月8日等)。
特別寄与料の権利行使期間は最長でも相続開始時から1年という短期の除斥期間が定められているため、公平な遺産分割を実現するためにも、Bが当事者として参加する遺産分割において寄与分の主張として扱う運用が望ましい場合もあります。
場面3:夫が先に死亡した場合
Bが被相続人Aより先に死亡し、BとXとの間に子がいない場合、Xは遺産分割の当事者にはなれず、自らの寄与行為を相続人Bの寄与分として考慮する機会もありません。このような場合に、平成30年相続法改正による特別寄与料の制度が重要な意義を持ちます。
一方、BとXとの間に子がいる場合には、その子は代襲相続人(民法887条2項)として被代襲者Bの寄与分を主張できますので、従前の運用により被代襲者Bの寄与分の中でその配偶者Xの寄与行為を主張する方法も考えられます。

