共有不動産の費用を負担しない共有者に対しては、①立替金の求償請求(民法253条1項)、②共有持分買取権の行使(同条2項)、③共有物分割請求(民法258条)という3つの法的手段をとることができます。①は金銭の回収、②は相手方の持分を強制的に買い取ること、③は共有関係そのものの解消を目的とする手段であり、状況に応じて選択することになります。
結論
共有不動産の固定資産税や修繕費といった費用を長年にわたって負担しない共有者がいる場合、費用を立て替えた共有者には複数の法的手段が認められています。
まず、立替金の求償請求として、持分割合に応じた金額の支払いを相手方に請求することができます(民法253条1項)。これは最も基本的な手段です。次に、負担義務が1年以内に履行されない場合には、共有持分買取権(民法253条2項)を行使して、相手方の共有持分を強制的に買い取ることができます。さらに、共有物分割請求(民法258条)により、共有関係そのものを解消するという選択肢もあります。
根拠と条件
それぞれの手段の根拠と主な要件は、次のとおりです。
求償請求(民法253条1項)
各共有者は、その持分に応じて管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負います(民法253条1項)。ここでいう「管理の費用」とは、共有不動産の維持・利用・改良のための必要費・有益費のことであり、「その他共有物に関する負担」とは、共有不動産の存在から直接生じる費用のことです。具体的には、固定資産税・都市計画税、修繕費用、マンションの管理費・修繕積立金などがこれにあたります。
費用を1人で立て替えた共有者は、他の共有者に対して持分割合に応じた金額の支払いを求めることができます。相手方が任意に支払わない場合は、訴訟・差押えといった一般的な債権回収の手続によって回収することも可能です。
共有持分買取権の行使(民法253条2項)
共有者が1年以内に管理費用等の負担義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金(買い取る共有持分の対価)を支払ってその者の持分を取得することができます(民法253条2項)。これが共有持分買取権と呼ばれる制度です。
権利行使は意思表示(通知)によって行い、これにより相手方の共有持分全部が移転するという効果が生じます。実務上は、通知の有無をめぐる紛争を避けるため、内容証明郵便で通知を行うのが一般的です。権利行使の際には、償金の提供が必要であると解するのが一般的な見解です。
なお、条文上、義務の不履行が「1年」続いたことが前提とされていますが、この1年の起算点については、求償債務の履行期が定められている場合にはその履行期、定められていない場合には催告時であるという解釈があります。実際には履行期を明確に定めていないケースが多く、催告(求償の請求)時が起算点となることが多いといえます。
支払うべき償金の額は、基本的には買い取る共有持分の評価額となりますが、実際には、立替金(求償債権)の金額と相殺した金額となるのが通常です。
共有物分割請求(民法258条)
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができます(民法256条1項)。共有者間で協議が調わないとき、または協議をすることができないときは、裁判所に共有物分割請求訴訟を提起することができます(民法258条1項)。裁判所は、現物分割のほか、賠償分割(共有者に債務を負担させて他の共有者の持分を取得させる方法。民法258条2項2号)などの方法により分割を命じることができます。
費用の不払いを直接の理由とする手続ではありませんが、共有関係そのものを解消することで、費用負担の問題も根本的に解決されます。また、費用を立て替えた共有者が相手方に対して共有に関する債権を有しているときは、分割に際し、相手方に帰属すべき共有物の部分をもってその弁済に充てることも認められています(民法259条1項)。
3つの手段の比較
| 項目 | 求償請求 | 共有持分買取権 | 共有物分割請求 |
|---|---|---|---|
| 根拠条文 | 民法253条1項 | 民法253条2項 | 民法256条・258条 |
| 目的 | 立替金の回収 | 相手方の持分の取得 | 共有関係の解消 |
| 主な要件 | 費用の立替え | 負担義務の1年間の不履行・償金の支払い | 共有者であること |
| 手続の特徴 | 訴訟・差押え等の一般的な債権回収手続による | 意思表示(通知)だけで効果が生じるが、償金の金額をめぐって争いが生じることがある | 共有者全員が当事者となる必要があり、手続の規模は大きい |
具体的な場面での適用
たとえば、土地・建物をAとBがそれぞれ持分2分の1で共有しているケースを考えます。Aが固定資産税と管理費を全額支払っており、Bに対して立替金の半額の支払いを求めたものの、Bが一向に応じないという場面です。
この場合、Aはまず求償請求としてBに支払いを求め、それでも1年間支払われなければ、共有持分買取権を行使してBの持分を強制的に買い取ることができます。買取りの際にAが支払う償金は、Bの持分の評価額からAの立替金債権を相殺した金額となるのが通常です。
一方、AがBの持分を買い取るのではなく、共有関係そのものの解消を望む場合は、共有物分割請求を選択することもできます。共有持分買取権と共有物分割は、共有者の1人が共有物の所有権全体を取得するという結果の点で似ており、実務では、いずれか一方を選択するほか、双方を併せて請求することもあります。
なお、判例は、共有持分の一部のみを対象として買取権を行使することはできないと判断しています(大判明治42年2月25日)。

