共有私道の工事に常に全員の同意が必要なわけではありません。工事の内容により、保存(各共有者が単独で可能)、管理(持分の過半数で決定)、変更(全員の同意が必要)のいずれかに分類されます(民法252条1項・5項、251条1項)。舗装の補修や自宅への水道管の引込みは単独でも実施でき、全員の同意が必要となる場面は限定的です。
結論
共有私道における工事は、その内容に応じて必要な同意の範囲が異なりますが、全員の同意が必要となる場面はかなり限定的です。損傷箇所の補修や、共有者自身が所有する水道管・ガス管の設置・修繕は共有者単独で実施でき、全面的な再舗装や新規のアスファルト舗装も持分の過半数で決定できます。
分類を考えるうえでの前提として、舗装とライフライン導管では法的な構造が異なります。舗装は土地(私道)と附合して土地の一部になるため、共有物の変更・管理・保存のどれにあたるかという枠組みで判断します。一方、地下の導管は土地に附合せず共有物の一部にならないため、この枠組みではなく、共有持分に応じた共有物の「使用」(民法249条1項)にあたるかどうかで判断します。
根拠と条件
共有物に関する行為の分類と必要な同意は、次のとおりです(分類の基本は、「共有不動産で『全員の同意が必要なこと』『過半数で決められること』『1人でできること』の違いを教えてください」で解説しています)。
| 行為の分類 | 内容 | 必要な同意 | 根拠条文 |
|---|---|---|---|
| 保存 | 共有物の現状を維持する行為 | 各共有者が単独で可能 | 民法252条5項 |
| 管理(狭義) | 共有物の利用・改良に関する行為 | 持分の価格の過半数 | 民法252条1項 |
| 軽微変更 | 形状または効用の著しい変更を伴わない変更 | 持分の価格の過半数 | 民法251条1項括弧書・252条1項 |
| 変更 | 形状または効用の著しい変更を伴う行為 | 共有者全員の同意 | 民法251条1項 |
令和3年改正(2023年4月施行)により、形状または効用の著しい変更を伴わない「軽微変更」は、管理(狭義)と同じく持分の過半数で決定できるようになりました(改正の全体像は、「2023年4月から共有不動産のルールが変わったと聞きました。何が変わったのですか?」で解説しています)。
以下、工事の種類ごとに分類を整理します。
舗装工事の分類
| 工事の内容 | 分類 | 必要な同意 |
|---|---|---|
| 損傷箇所のみの補修(アスファルト・L字溝の損壊部分の修繕) | 保存 | 単独で可能 |
| 現状維持を超える改良(一部損壊の際の全面再舗装など) | 管理(狭義) | 持分の過半数 |
| 砂利道への新規アスファルト舗装 | 軽微変更 | 持分の過半数 |
損傷箇所のみを補修する工事は、現状維持(メンテナンス)の範囲内にとどまるため保存に分類され、共有者単独で実施できます。材質が多少グレードアップしても、自治体の助成対象となるような標準的な材質・工法であれば、必要最小限の範囲内(保存)といえます。
砂利道に初めてアスファルト舗装をする工事は、形式的には変更にあたるものの、変更の程度は軽微であるため軽微変更に分類され、管理(狭義)と同じく持分の過半数で決定できます。なお、舗装に関する工事で(軽微ではない)変更に分類されるものは通常ないと考えられています。
ライフライン導管工事の分類
導管は土地に附合しないため、共有者自身が所有する導管(私人導管)か、自治体やライフライン供給会社が設置・管理する導管(公的導管)かで整理が分かれます。
私人導管(共有者が所有する導管)
私人導管の新設・補修・改良は、いずれも共有持分に応じた共有物の使用の範囲内であり、共有者単独で工事を実施できます。私道の地下に公道の導管まで接続する引込管を設置する工事、既存の私人導管に接続する工事、既存導管の補修・取替えのいずれもこれにあたります。
公的導管
公的導管は、土地所有者(私道共有者)が自治体等に対して私道の地下を使う権利(利用権)を設定するという構造になります。新たに利用権を設定すること(公的導管の新設)は管理(狭義)に分類され、持分の過半数で決定できます。一方、既存の公的導管の補修・取替えは、当初設定した利用権に将来の維持のための工事も含まれると解釈されるのが通常であり、私道共有者側で新たな意思決定をする必要はありません。
電柱工事の分類
電柱や電線も土地に附合せず、電力会社が所有・管理します。電柱の新設は、私道共有者が電力会社に利用権を設定する意思決定として管理(狭義)に分類され、持分の過半数で決定できます。既存電柱を同一場所で取り替える場合は、当初の利用権の範囲内であり新たな意思決定は不要です。別の場所への移設は原則として管理(狭義)に分類されますが、緊急性が高い場合は保存に分類されます。
過半数決定の例外(特別の影響)
持分の過半数による決定であっても、その決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすときは、その共有者の承諾が必要です(民法252条3項)。ライフライン工事によって特定の共有者が長期間水道を使えない状況が続くようなケースは、これに該当するとされています。
具体的な場面での適用
設例1: A・B・Cが持分各3分の1で私道を共有しているケースで、アスファルトの一部にひび割れが生じたため、Aが損壊箇所のみを補修する工事を業者に依頼した場合。この工事は現状維持の補修であり保存にあたるため、AはB・Cの同意を得ることなく単独で実施できます。工事費用は、各共有者がその持分に応じて負担します(民法253条1項。立て替えた費用の請求は、「共有不動産の修繕費を1人で立て替えました。他の共有者に請求できますか?」で解説しています)。
設例2: 同じくA・B・Cの共有私道で、Aが自宅の建替えにあわせて、私道の地下に公道の水道本管まで接続する引込管を新たに設置したい場合。私人導管の新設は共有持分に応じた使用の範囲内であるため、AはB・Cの同意を得ることなく単独で工事を実施できます。これに対し、自治体が私道の地下に公的な水道本管を新設する場合には、私道共有者側で利用権を設定する決定が必要となり、これは管理(狭義)として持分の過半数(この設例では2人以上の賛成)で決定することになります。

