共有不動産でもめたとき、話し合い・調停・裁判のどれを選べばいいですか?

回答

共有不動産の紛争を解決する手続には、話し合い(協議)、調停、裁判(訴訟・審判)の3つがあります。どの手続を選ぶかは、共有の種類によって異なります。通常の共有(物権共有)であれば、協議→共有物分割訴訟(民法258条1項)の順に進み、調停を経る義務はありません。相続で共有になった不動産(遺産共有)であれば、協議→遺産分割調停→審判(家事事件手続法244条)の順に進み、原則として調停を先に行う必要があります。

目次

紛争解決手続の全体像と趣旨

共有不動産をめぐって共有者間で意見が対立した場合、紛争を解決するための手続は、大きく3つに分けることができます。話し合い(協議)、調停、裁判(訴訟または審判)です。

これらの手続が用意されている趣旨は、共有者間の紛争を段階的に解決する道を確保することにあります。まずは当事者同士の話し合いによる自主的な解決が望ましいですが、それがまとまらない場合には、第三者(調停委員会や裁判所)の関与のもとで解決を図る仕組みが整えられています。

ここで最も重要なのは、共有不動産が「通常の共有(物権共有)」なのか「相続による共有(遺産共有)」なのかによって、利用できる手続の種類と順序が異なるという点です。この区別を間違えると、そもそも手続が利用できなかったり、訴えが却下されたりすることがあるため、最初に確認すべき事項です。

たとえば、AとBが資金を出し合って土地を購入した場合は物権共有であり、共有物分割の手続によります。他方、父が亡くなり、子A・Bが不動産を相続した場合は遺産共有であり、原則として遺産分割の手続によることになります。

各手続の内容と要件

話し合い(協議)

共有不動産の紛争では、まず共有者全員による話し合い(協議)が出発点となります。物権共有の場合の共有物分割協議も、遺産共有の場合の遺産分割協議も、いずれも共有者(相続人)全員の合意が成立すれば、裁判所を利用することなく紛争を解決できます。

協議による解決は、当事者の合意に基づくため、柔軟な解決が可能であるという利点があります。分割の方法や金額、時期などについて、当事者が納得する内容で合意できれば、それに従って共有関係を解消することができます。

ただし、協議は全員が合意しなければ成立しません。1人でも反対する共有者がいれば、協議による解決はできないことになります。

調停

調停とは、裁判所において調停委員会(裁判官1名と調停委員2名)の仲介のもとで、当事者間の合意を目指す手続です。

遺産共有の場合には、家庭裁判所の遺産分割調停を利用します。遺産分割は調停前置主義(家事事件手続法257条1項)が採用されているため、原則として審判の前に調停を申し立てなければなりません。

一方、物権共有の場合には、民事調停法に基づく民事調停を利用することもできますが、調停を経なければ訴訟を起こせないというルール(調停前置主義)は適用されません。したがって、協議が整わなければ、調停を経ずに直接共有物分割訴訟を提起することが可能です(民法258条1項)。

裁判(訴訟・審判)

協議がまとまらない場合に、最終的に裁判所の判断を仰ぐ手続です。

物権共有の場合は、地方裁判所(または簡易裁判所)に共有物分割訴訟を提起します(民法258条1項)。共有物分割訴訟では、裁判所が現物分割、全面的価格賠償(賠償分割)、換価分割(競売)のいずれかの方法で分割を命じます(民法258条2項・3項)。

遺産共有の場合は、家庭裁判所の遺産分割審判により分割が行われます。調停が不成立となった場合には、自動的に審判手続に移行します(家事事件手続法272条4項)。

以上の各手続の違いを表に整理すると、次のとおりです。

項目物権共有の場合遺産共有の場合
手続の流れ協議 →(調停)→ 訴訟協議 → 調停 → 審判
根拠条文民法256条・258条民法907条、家事事件手続法244条
調停前置なし(調停は任意)あり(原則として調停が先)
管轄裁判所地方裁判所・簡易裁判所家庭裁判所
裁判所が命じる分割方法現物分割・賠償分割・換価分割現物分割・代償分割・換価分割(+寄与分・特別受益の考慮)

物権共有と遺産共有で異なる手続の流れ

物権共有の場合

物権共有(相続以外の原因で共有になった場合)では、共有物分割協議がまとまらないときは、裁判所に共有物の分割を請求することができます(民法258条1項)。この共有物分割訴訟には調停前置主義が適用されないため、協議が不調に終われば、調停を申し立てることなく直接訴訟を提起できます。

実務上、共有物分割訴訟は、交渉のBATNA(交渉が決裂した場合の最善の代替手段)として位置づけられています。訴訟を提起すれば、特殊な事情がない限り、裁判所は何らかの方法で共有関係を解消する判決を下します。そのため、訴訟の見通しを踏まえたうえで協議を行うことが、紛争解決の重要なポイントとなります。

遺産共有の場合

遺産共有(相続によって共有になった場合)では、原則として遺産分割の手続(協議→調停→審判)によって共有関係を解消します。共有物分割訴訟ではなく、家庭裁判所の遺産分割調停・審判を利用する必要があります。

ただし、相続開始から10年を経過した場合には、遺産共有の不動産についても、共有物分割訴訟が可能になるという例外があります(民法258条の2第2項)。この場合は、物権共有と同様の手続の流れになります。

物権共有と遺産共有が混在する場合

共有者の1人が亡くなり、その相続人と他の共有者が共有している場合など、物権共有と遺産共有が混在するケースもあります。令和3年改正により、相続開始から10年を経過した後は、物権共有と遺産共有が混在する不動産についても、共有物分割訴訟の中で遺産共有持分の解消が可能になりました(民法258条の2第2項)。

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