共有不動産の形式競売で土地と建物の持ち主が別々になった場合、建物はそのまま使えますか?

回答

共有物分割の形式的競売(裁判所が命じる競売)では、法定地上権(建物所有者が土地を使い続けられる権利)は成立しないのが原則です。民事執行法195条・188条の文理解釈上、法定地上権の規定(民事執行法81条・民法388条)が適用されず、公刊された裁判例もすべて否定しています。ただし、学説には反対意見があり、競売手続の運用として法定地上権の成立を認めた例もあります。

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結論

共有物分割の形式的競売(裁判所が命じる競売)において、土地と建物の所有者が分かれた場合に法定地上権(ほうていちじょうけん)が成立するかどうかは、原則として否定されています。

法定地上権とは、土地とその上の建物が同一の所有者に属していた場合に、競売によって所有者が異なることになったとき、建物のために自動的に地上権(土地の利用権)が成立するという制度です(民法388条、民事執行法81条)。この制度がないと、建物の所有者は土地を使う権利を失い、建物を取り壊さなければならなくなるため、建物の保護を目的として設けられています。

しかし、形式的競売については、法律の条文構造上、法定地上権の規定が適用されないと解釈されており、公刊された裁判例もすべて法定地上権の成立を否定しています。

根拠と条件

法定地上権が否定される法律上の根拠

形式的競売に法定地上権の規定が適用されない理由は、民事執行法の条文の構造にあります。

まず、民事執行法195条は、形式的競売について「担保権の実行としての競売の例による」と規定しています。次に、担保不動産競売の規定である同法188条は、不動産執行(強制競売)の規定の多くを準用していますが、括弧書きにより同法81条(強制競売における法定地上権の規定)を明文で除外しています。

同法81条が除外されている趣旨は、担保不動産競売においては民法388条(抵当権の実行における法定地上権)が直接適用されるため、同法81条と重複適用になることを避けるためとされています。しかし、形式的競売は担保権の実行ではありませんので、民法388条も当然には適用されません。

結局、形式的競売では、民事執行法81条も民法388条も適用されず、法定地上権は成立しないという結論になります。

裁判例の動向

公刊された裁判例は、いずれも形式的競売における法定地上権の成立を否定しています。

最高裁も、形式的競売における法定地上権の成立を否定した原審の判断を是認しています(最高裁平成6年4月7日判決)。もっとも、この最高裁判決は積極的な理由を示しておらず、法定地上権の適用の有無を直接判断したものかどうかについては議論があります。

肯定する見解

学説上は、文理解釈による否定に反対する見解も多く存在します。建物の存立保護という社会的要請は形式的競売でも変わらないこと、民事執行法188条が81条を除外したのは民法388条との重複を避けるためにすぎず、形式的競売で法定地上権を排除する意図ではなかったことなどが根拠として挙げられています。

競売手続における運用

訴訟の判決とは別に、東京地方裁判所(民事執行センター)や千葉地方裁判所において、形式的競売の競売手続の中で、物件明細書の売却条件として法定地上権が成立する旨を定めた運用例が複数あるとされています。これは判決として法定地上権の成立を認めたものではなく、執行裁判所が競売手続上の処理として設定したものです。このように、裁判例と競売手続の運用との間には乖離がみられるのが現状です。

具体的な場面での適用

土地だけが共有の場合

たとえば、土地がAとBの共有で、建物がAの単独所有というケースを考えます。土地について共有物分割訴訟が提起され、換価分割(形式的競売)が命じられた場合、第三者Cが土地を競落すると、建物の所有者Aは土地の利用権を失う可能性があります。

法定地上権が成立すれば、Aは地上権に基づいて土地を使用し続けることができますが、前述のとおり、法律の条文上は法定地上権の成立が否定される構造になっています。

抵当権が設定されている場合

形式的競売の対象不動産にすでに抵当権が設定されている場合は、競売手続の中で抵当権者への配当が行われ、抵当権は抹消されるのが原則です(消除主義)。この状況は、抵当権設定のある不動産を対象とする強制競売と同じですので、民法388条の法定地上権の規定が適用されます。具体的には、最先順位の抵当権の設定時点を基準として法定地上権の成立要件を判定します。

ただし、この解釈は消除主義が採用されていることが前提です。例外的に引受主義(抵当権者への配当がなく、抵当権が存続する場合)が採用されたときは、抵当権設定がない場合と同様に扱われ、法定地上権の成否について見解が分かれることになります。

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