1棟の建物をマンションのように区切って、それぞれの所有にすることはできますか?
共有の建物を区分所有(マンションのように各部分を独立した所有権の対象にする方法)としたうえで、各共有者の単独所有にするという現物分割は、一定の要件を満たせば可能です。具体的には、建物の各部分に構造上・利用上の独立性があること(区分所有法1条)と、区分所有の意思が表明されることが必要です(民法258条2項1号)。
結論
共有の建物について、通常の現物分割(物理的に切り分ける方法)は困難です。1個の建物を物理的に2個に分けることは原則としてできないためです。しかし、建物を区分所有建物(マンションのように各部分が独立した所有権の対象となる建物)とすることができれば、各区画を各共有者の単独所有とする形で現物分割を行うことが可能になります(民法258条2項1号)。
この方法は、共有者全員の協議による合意で行うこともできますし、共有物分割訴訟において裁判所が判決で命じることもできます。
根拠と条件
区分所有とする現物分割が認められるためには、区分所有権の成立要件を満たす必要があります。区分所有権の要件は、①客観的要件(区分建物の要件)と②主観的要件(区分所有の意思表明)の2つです。
客観的要件(構造上・利用上の独立性)
客観的要件とは、建物の各部分に構造上・利用上の独立性があることです(区分所有法1条)。
構造上の独立性とは、その建物部分を他の部分から隔離する設備(壁・扉・窓など)が存在することをいいます。遮蔽の程度は用途によって異なり、住居の場合は高い遮断性が求められますが、車庫や店舗などでは完全な遮蔽までは要しません。たとえば、巻き上げ式シャッターで仕切られたテナント式店舗について、隔離を認めた先例があります。
利用上の独立性とは、独立して住居・店舗・事務所などの用途に供することができることをいいます(区分所有法1条)。独立した出入口があり、原則として他の区分建物を通らずに外部に出られることが必要です。ただし、台所・便所・洗面所などがなくても共同施設を利用できれば、住居としての独立性は認められることがあります。
比較的小規模な建物でも、いわゆる二世帯住宅のような構造であればこの要件をクリアする場合があります。
主観的要件(区分所有の意思表明)
主観的要件とは、建物を区分して所有する意思(区分所有の意思)が表明されることです。法律行為としての意思表示とは異なり、区分して所有するという意思が読み取れれば足ります。
区分所有の意思表明が認められる具体例としては、①区分建物の登記または区分の登記を申請した場合、②建物の一部区画を第三者に譲渡(売却)した場合、③区分所有として販売する旨の広告をした場合などがあります。
共有物分割の場面では、共有者全員の協議で区分所有とする現物分割に合意した場合はもちろん、共有物分割訴訟の判決で区分所有とする現物分割が命じられた場合も、区分所有の意思表明にあたると解されています。
具体的な場面での適用
協議による場合
たとえば、1棟の共同住宅(30戸)とその敷地をA・B・Cの3名で共有しているケースを考えます。建物を区分所有としたうえで、A・B・Cがそれぞれ専有部分のうち10戸を取得し(単独所有とし)、土地は共有のまま敷地利用権(区分所有法22条)とするという分割方法が考えられます。ただし、各専有部分について構造上・利用上の独立性(客観的要件)を満たす必要があり、仮にこれを満たしていない場合は、共有者が協力して改修工事を行い、独立性を満たすようにすることもあり得ます。
判決による場合
共有物分割訴訟において、裁判所が建物を区分所有としたうえで現物分割を命じることもあります。この場合、現状で各区画が区分所有権の客観的要件(構造上・利用上の独立性)を満たしていることが前提となります。判決中で土地(敷地)については敷地権(不動産登記法44条1項9号)とすることになります。
なお、裁判例では、区分所有権の客観的要件が満たされていても、当事者間の対立が激しく共用部分の管理についての協議や合意が困難であること、敷地の占有関係に障害が生じることなどを理由に、区分所有とする現物分割を採用せず、全面的価格賠償を選択した例もあります。現物分割と全面的価格賠償は分割類型の優先順位としては同順位であり、最終的には合理性の評価によって裁判所が分割方法を選択します。

