共有不動産の分割を請求しても、認められないことはありますか?
共有物分割請求は、各共有者がいつでも行使できるのが原則です(民法256条1項本文)。ただし、①不分割特約がある場合(同項ただし書)、②権利の濫用にあたる場合(同法1条3項)、③訴えの利益を欠く場合には、例外的に認められません。もっとも、分割請求は共有を解消するための重要な権利とされており、権利の濫用などによって否定されるのは極めて特殊な事案に限られます。
共有物分割請求の原則 ― 分割の自由
共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができます(民法256条1項本文)。協議が調わない場合や協議をすることができない場合には、裁判所に対して分割を請求することも可能です(同法258条1項)。このように共有物分割請求権は、各共有者が単独で行使できる強い権利として位置づけられています。
共有は、1つの物を複数の人で所有する暫定的な状態であり、管理や処分の場面で意見の対立が生じやすい性質を持ちます。そのため民法は、共有を解消して所有関係を整理するための手段として、分割の自由を原則としています。
したがって、共有物分割訴訟が提起されれば、裁判所は原則として現物分割・換価分割・全面的価格賠償のいずれかの方法を選択して共有を解消します。分割自体を拒絶する判断がされるのは、あくまで例外的な場面に限られます。
分割請求が認められない3つの類型
分割請求が認められない(請求棄却または訴え却下となる)のは、大きく分けて次の3つの類型です。
不分割特約がある場合(民法256条1項ただし書)
共有者間で、一定期間は分割をしない旨の合意(不分割特約)をした場合、その期間内は分割請求をすることができません。期間は最長5年で、合意によって更新することもできますが、更新の効力もまた5年を超えることはできません(同条2項)。
権利の濫用にあたる場合(民法1条3項)
分割請求が権利の濫用として認められないこともあります。ただし、分割の自由は強く保護されており、権利の濫用として分割請求を否定するのは、きわめて特殊な事案に限られるというのが一般的な理解です。
裁判例は、「各共有者の分割の自由を貫徹させることが当該共有関係の目的・性質等に照らして著しく不合理である」場合に権利の濫用となると判示しており(大阪高判平成17年6月9日)、適用範囲は限定されています。
訴えの利益を欠く場合
訴訟要件として、訴えの利益が欠けるとして却下される例もあります。たとえば、共有地の境界(筆界)が未確定で現物分割が事実上不可能な事案について、共有物分割訴訟を却下した裁判例があります(東京地判昭和62年5月29日)。もっとも、境界未確定の場合でも権利の濫用の場合でも、訴え却下ではなく請求棄却とするのが通常です。
権利の濫用が問題となる典型類型
権利の濫用が争点となりやすい類型として、次のようなものが知られています。いずれも、分割を実現すると現に居住・使用している共有者に大きな不利益が生じたり、共有の性質上そもそも解消が想定されていなかったりするケースです。
| 典型類型 | 概要 |
|---|---|
| 遺産流れ | 遺産分割で相続人の共有とした不動産に、共有者の1人(とその家族)が居住しているケース |
| 夫婦間の共有 | 夫婦共有の住居について、離婚成立前に一方が共有物分割を請求するケース |
| 共有私道 | 住宅街の通路として使われている共有の土地について分割を請求するケース |
| 区分所有建物の敷地 | 分譲マンションの敷地利用権について分割を請求するケース |
もっとも、これらの類型に該当すれば直ちに権利の濫用となるわけではありません。実際には個別の事情を踏まえて判断されます。
権利の濫用の判断要素
権利の濫用の一般論としては、客観面(権利者が得る利益と相手方や社会が受ける害との比較)と主観面(目的の不当性)を総合考慮するという枠組みが一般的です。共有物分割請求についても、この枠組みに沿って判断されます。
客観面 ― 分割実現の不合理性・不利益
客観面では、分割を実現すること自体が不合理であるか、分割の結果として大きな不利益が生じるかが問題となります。具体的には、共有建物に現に居住している共有者が退去を余儀なくされる状況にあるか、現在の使用者が経済状態から転居先を確保することが困難であるか、共有関係の解消がそもそも想定されていない共有物か、といった事情が考慮されます。
主観面 ― 加害意図
主観面では、原告(分割請求者)が被告を加害する意図をもって分割を請求しているかが問題となります。原告が加害意図を直接認めることはまずないため、訴訟提起に至る経緯や訴訟での主張・立証の内容から判断されることになります。提訴前に相手方との交渉を丁寧に行っていた場合には、加害意図は否定される方向に働きます。

