共有不動産を資産管理会社や信託で共同管理する方法はありますか?メリット・デメリットを教えてください
共有不動産を5年を超えて安定的に共同管理する方法として、①共有者を株主とする資産管理会社を活用する方法、②信託を活用する方法、③民法上の組合(民法667条以下)を活用する方法があります。いずれも共有物分割請求のリスクから解放される一方、税務上の取扱いや成立要件に違いがあるため、目的に応じた使い分けが必要です。
共有関係を会社・組合の形で維持する仕組みの趣旨
不動産の共有関係を維持する最もストレートな方法は、共有者全員の合意による「共有物分割禁止特約」(共有物の分割を一定期間しないと約束する特約)です(民法256条1項ただし書)。ただし、この特約には5年という期間制限があり、更新後の期間も最長5年とされています(同条2項)。したがって、長期にわたって安定的に共有関係を維持したい場合には、分割禁止特約とは別の仕組みを検討する必要があります。
そこで実務で用いられているのが、共有そのものを維持するのではなく、不動産を複数人で管理する形に組み替える方法です。具体的には、①共有者を株主とする「資産管理会社」(共有者が出資して設立し共有不動産を所有させる会社)を設立して不動産を会社所有とする方法、②不動産を受託者に信託譲渡して共有者を受益者とする方法、③共有者が共有持分を出資して「民法上の組合」を成立させる方法の3つが代表的です。いずれの方法も期間制限なく共同管理の状態を維持できる点が、分割禁止特約との大きな違いです。
たとえば、兄弟3人で共有しているビルを賃貸して収益を分配しているケースで、3人を株主とする資産管理会社にビルを所有させれば、株主同士は共有関係にないため、共有物分割請求のリスクから解放されることになります。
3つの共同管理方法の仕組みと要件
資産管理会社の活用
最初に、対象不動産の共有者を株主とする会社(資産管理会社)を設立します。共有者は資産管理会社に対象不動産を現物出資(または売却)し、会社が単独の所有者となります。会社は不動産の賃貸管理を行い、収益を各株主に分配するという仕組みです。複数の共有持分が複数の株式に置き換わるイメージです。株主間の関係には共有の規定が適用されないため、共有物分割請求の問題は生じません。
信託の活用
共有不動産全体を受託者に信託譲渡し、共有者であった者を受益者とする方法です。所有権(共有持分権)が信託受益権に変化することになり、すでに共有関係ではなくなるため、元共有者は共有物分割請求をすることができません。
信託では、受益権の譲渡先を既存受益者や法定相続人の範囲に限定するなどの制限を信託契約で設定でき、当事者の変更による分割請求リスクを回避できます。さらに信託契約の中で、管理方法や収益分配方法といった管理に関する事項を明確に定めることもできます。
民法上の組合の活用
共有者が共有持分を出資して共同事業を行うことを契約することで、民法上の組合(民法667条〜688条)が成立します。組合財産は組合員の共有とされており(民法668条)、これは通常の共有とは異なる特殊な取扱いを受ける「合有」と呼ばれる形態に分類されます。組合員は、共有持分の処分を組合および組合と取引をした第三者に対抗できず(民法676条1項)、また清算前に組合財産の分割を求めることもできません(同条3項)。会社設立のような手間のかかる手続を要せず、組合契約書の調印だけで実現できる点が特徴です。
組合の成立要件は、①2人以上の組合員がいること、②組合員が出資すること、③事業を共同の目的とすること、④当事者全員が合意することです(民法667条1項)。実務上問題となるのは③の共同事業性で、単に共有不動産を使用・収益するだけでは足りず、それを超える事業性(共有物の使用・収益の枠を超えるサービスやイベントの提供等)が必要とされています。
なお、最高裁は、共有土地を共同的に使用すること自体は共有土地利用の方法であって、組合としての共同事業にはあたらないと判断しています(最判昭和26年4月19日)。
3つの方法の効果と税務上の留意点
3つの方法は、いずれも共有物分割請求リスクを回避できる点で共通しますが、不動産取得時の課税や収益への課税の取扱いに大きな違いがあります。
| 項目 | 資産管理会社 | 信託 | 民法上の組合 |
|---|---|---|---|
| 根拠条文 | 会社法 | 信託法 | 民法667条〜688条 |
| 成立 | 会社設立手続 | 信託契約 | 組合契約 |
| 期間制限 | なし | なし | なし |
| 共有物分割請求 | 不可(共有関係ではない) | 不可(共有関係ではない) | 不可(民法676条3項) |
| 持分の譲渡制限 | 定款等で設定可 | 信託契約で設定可 | 民法676条1項により当然制限 |
| 不動産移転時の課税 | 通常の売買と同じ(登録免許税・譲渡所得税が軽減されず課税) | 形式的譲渡として軽減・免除(租税特別措置法72条) | 出資につき通常譲渡と同様 |
| 収益への課税 | 法人税+配当課税(ダブルタックス) | 受益者課税(原則1段階) | 組合員課税(原則1段階) |
資産管理会社の活用には、重い税負担というデメリットがあります。①資産管理会社への現物出資(または売却)について通常の売買と同じ取扱いとなり、登録免許税・譲渡所得税が軽減されずに課税されます。また、②収益(賃料収入)を株主への利益配当として分配した場合、法人と個人の双方で課税対象となるダブルタックスが生じます。株主(元共有者)が会社の役員や従業員となり、会社が役員報酬・給与・業務委託料として支払う場合には会社の経費となるためダブルタックスは回避できますが、業務と対価の関係が適正でない場合には経費として否認されるリスクがあります。
信託を活用する場合、共有者から受託者に不動産を譲渡することになりますが、課税上は通常の譲渡とは異なる特別な取扱いとなります。信託による財産の移転は形式的なものにとどまるため、登録免許税・不動産取得税や不動産譲渡所得税が免除あるいは軽減されます(租税特別措置法72条)。資産管理会社のような過剰な課税を回避でき、実行コストが安く済む点で有利です。
民法上の組合は、契約書の調印だけで成立する手軽さがあり、組合員課税により原則1段階課税で済むメリットがあります。一方で、共同事業として認められなければ組合の効果(持分処分制限・分割請求制限)が生じないリスクがあるため、組合契約書を作成すれば必ず組合として認められるとは限らない点に注意が必要です。
なお、組合の業務執行は組合員(頭数)の過半数で決します(民法670条1項)。組合財産に着目すると、組合員の共有物の使用方法の決定にあたり、共有持分の過半数で決するという共有の一般規定(民法252条1項)が適用されそうにも見えますが、組合の場面では民法670条1項が優先して適用されることになります。

