共有不動産を5年を超えて安定的に共同管理する方法として、①共有者を株主とする資産管理会社を活用する方法、②信託を活用する方法、③民法上の組合(民法667条以下)を活用する方法があります。いずれも共有物分割請求のリスクから解放される一方、税務上の取扱いや成立要件に違いがあるため、目的に応じた使い分けが必要です。
<!– ========================================================= Q94/カテゴリ:持分の処分と共有関係の維持 テンプレート:A(制度解説型) 参照:『共有不動産の紛争解決の実務〔第3版〕』第5章 V-3〜4(p.596〜) ========================================================= –>
【titleタグ】 共有不動産の共同管理|会社・信託・組合を弁護士が解説 | 東京相続弁護士法人
【meta description】 共有関係を長く維持したい場合、分割禁止特約は最長5年という制限があります(民法256条)。共有者を株主とする資産管理会社、信託、民法上の組合(民法667条以下)を使って共有不動産を共同管理する方法について、それぞれの要件・効果・課税の取扱いを弁護士が解説します。
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【FAQ構造化データ用Q(JSON-LD用・本文には表示しない)】 共有不動産を資産管理会社や民法上の組合で共同管理する方法はありますか?メリット・デメリットを教えてください
共有不動産を会社や組合の形で共同管理する方法はありますか?
【回答】 共有不動産を長期にわたって共同で保有・管理する方法として、共有者を株主とする資産管理会社に所有させる方法、受託者に信託して共有者を受益者とする方法、共有者が持分を出資して民法上の組合を成立させる方法(民法667条以下)があります。いずれも共有物分割禁止特約(民法256条1項ただし書)と違って期間の制限を受けません。
会社・信託・組合による共同管理の意味と趣旨
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます(民法256条1項本文)。共有関係を続けたい共有者がいても、他の共有者の1人が分割を請求すれば、最終的には裁判所が何らかの形で共有を解消します。共有持分の譲渡や相続を禁じることもできないため、相続が重なって共有者が増えたり、持分を差し押さえた債権者による競売で親族以外の者が共有者に加わったりもします。
これをいちばん直接に防ぐ方法が共有物分割禁止特約(一定期間は分割しないと共有者全員で約束する特約)ですが、分割禁止の期間は最長5年で、更新しても更新の時から5年を超えられません(民法256条1項ただし書・2項)。共有のまま長く持ち続けたい場合、この5年という上限が壁になります。分割禁止特約そのものについては、「「しばらくは分割しない」と共有者全員で約束することはできますか?」をご覧ください。
そこで、共有という状態を維持するのではなく、不動産の所有の形を組み替えて複数人で管理する方法が使われます。①共有者を株主とする資産管理会社に不動産を所有させる方法、②不動産を受託者に信託して共有者を受益者とする方法、③共有者が持分を出資して民法上の組合(民法667条〜688条)を成立させる方法の三つです。いずれも期間の制限を受けません。
たとえば、兄弟3人が3分の1ずつの持分で賃貸ビルを共有し、賃料を分け合っているとします。3人を株主とする資産管理会社を設立してビルを会社名義にすれば、3人が持つのは株式であって共有持分ではなくなるので、株主の1人から共有物分割を請求されることはありません。
資産管理会社・信託・民法上の組合それぞれの要件
資産管理会社は、対象不動産の共有者を株主とする会社を設立し、共有者がその会社に不動産を現物出資(または売却)して、会社を単独の所有者にします。複数の共有持分が複数の株式に置き換わり、株主同士の関係に共有の規定は適用されないので、共有物分割請求の余地がなくなります。会社設立と不動産の移転の手続を踏めばよく、内容面での特別な要件はありません。
信託は、共有不動産の全体を受託者に信託譲渡し、共有者であった者を受益者とします。所有権(共有持分権)が信託受益権に変わるため、元共有者はもう共有者ではなく、共有物分割を請求できません。信託契約の中で、受益権の譲渡先を既存の受益者や法定相続人の範囲に限る、管理方法や収益の分配方法を定めるといった設計もできます。
民法上の組合は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することで効力を生じます(民法667条1項)。共有不動産を組合財産とする場合は、各共有者が共有持分を出資し、共同事業を行うことを契約すれば組合が成立します。成立要件は、①2人以上の当事者(組合員)がいること、②各当事者が出資すること、③事業を共同の目的とすること、④当事者全員が合意することの四つです。会社の設立のような手続を要さず、組合契約書の調印だけで実現できます。
実際に問題となるのは③の共同事業性です。共有物を共同で使用・収益しているだけでは、組合の共同事業とは認められません。1棟の賃貸アパートを共有者が共同で貸しているという状態は、日常用語でも税務上の扱いでも共同で賃貸事業を行っているといえます。ただし、それは共有不動産から収益を得ているにすぎず、通常は組合の事業にあたりません。組合と認められるには、共有物の使用・収益の範囲を超える行為(サービスや催事の企画・運営など)があることが求められます。
最高裁は、共有の土地を共同で使用することは共有土地の利用方法であって、組合としての共同目的・共同事業とはいえないと判断しています(最判昭和26年4月19日)。
他方、最高裁は、ヨットを共有する者たちがヨットクラブとして航行を楽しむ運営をしていた事案で、ヨットそのものの使用を超えた親睦活動の企画・運営があるとして組合の成立を認めています(最判平成11年2月23日)。
組合契約書を調印しさえすれば組合として扱われるわけではないので、共同事業といえる中身を伴っているかどうかが分かれ目になります。
共同管理を選んだ場合の効果と課税
三つの方法に共通するのは、共有物分割請求を受けるおそれがなくなることです。もっとも、その理由は方法によって異なります。資産管理会社と信託では、不動産がそもそも共有ではなくなります。民法上の組合では不動産は組合員の共有のままですが(民法668条)、組合員は清算前に組合財産の分割を求めることができず(民法676条3項)、組合財産についての持分を処分しても組合および組合と取引をした第三者に対抗できません(同条1項)。組合財産の共有は、通常の共有と異なる扱いを受けることから、合有と呼ばれています。
| 項目 | 資産管理会社 | 信託 | 民法上の組合 |
|---|---|---|---|
| 根拠となる法令 | 会社法 | 信託法 | 民法667条〜688条 |
| 成立させる方法 | 会社設立+不動産の移転 | 信託契約+信託譲渡 | 組合契約の締結 |
| 期間の制限 | なし | なし | なし |
| 共有物分割請求 | 共有ではないため不可 | 共有ではないため不可 | 清算前は不可(民法676条3項) |
| 権利の譲渡制限 | 定款等で設定できる | 信託契約で設定できる | 組合・取引した第三者に対抗できない(民法676条1項) |
| 不動産移転時の課税 | 通常の売買と同じ扱い | 形式的な移転として軽減・非課税 | 出資として移転する |
| 収益への課税 | 法人と株主の二重課税となりうる | 受益者に課税 | 組合員に課税 |
資産管理会社の課税は重くなります。資産管理会社への現物出資(または売却)は通常の売買と同じ扱いとなり、登録免許税・譲渡所得税が軽減されずにかかります。第三者に売って代金を分けるという実質的な換価ではない割に、負担が大きくなります。さらに、賃料収入を株主への利益配当として分配すると、法人と個人の両方が課税対象となり、二重の課税になります。株主(元共有者)が会社の役員や従業員となり、会社が役員報酬・給与・業務委託料として支払う場合には会社の経費となるため二重課税は避けられますが、業務と金額の対応が適正でなければ経費として否認されるおそれが残ります。
信託の場合、共有者から受託者に不動産を譲渡することになりますが、その移転は形式的なものにとどまるため、課税上は通常の譲渡と大きく異なる扱いを受けます。一般に財産を移転すると流通税(登録免許税・不動産取得税)と譲渡益課税(不動産譲渡所得税)がかかるところ、信託による移転ではこれらが免除または軽減されます(租税特別措置法72条ほか)。資産管理会社のような過剰な課税を避けられるので、実行にかかる費用は安く収まります。※要確認: 免除・軽減の根拠は税目ごとに分かれており、書籍が挙げる租税特別措置法72条は土地の信託登記に係る登録免許税の税率軽減の規定です。個別の税額は税理士への確認が必要です。
民法上の組合は、法人格がないため組合段階では課税されず、組合財産から生じた損益は各組合員に帰属して課税されます。※要確認: 組合の課税関係は書籍の記載範囲外です。
このほか、信託で共有者全員を受益者とすると受益者が複数になり、受益者としての意思決定には原則として受益者全員の同意が要るため、受益者が多いケースでは意思決定をめぐって争いになりやすくなります。信託契約の中で過半数の賛成で決められると定めておく方法や、意思決定を受益者代理人に委ねる方法が備えになります。
組合の業務執行は、組合員の頭数の過半数で決します(民法670条1項)。組合財産に着目すれば、これは組合員の共有物について使用方法を決めることにあたります。共有物の管理に関する事項は、各共有者の持分の価格に従いその過半数で決するのが原則ですが(民法252条1項)、組合の場面では民法670条1項が優先して適用されます。なお、共有のまま管理をする人を決める方法として、令和3年改正で設けられた共有物の管理者の制度もあります(民法252条の2)。こちらは共有関係を維持する仕組みではありませんが、共同で管理する体制をつくるという点では選択肢になります)。

