返事をしない共有者がいても、その共有者を除いた賛成の持分が全体の過半数に達していれば、管理事項はそのまま決められます(民法252条1項)。過半数に届かない場合は、裁判所に賛否不明共有者がいる場合の共有物の管理の裁判を申し立てることで、その共有者を除いた残りの持分の過半数で決められます(民法252条2項2号)。
結論
返事をしない共有者がいても、その共有者を除いた賛成の持分が全体の過半数に達していれば、管理事項をそのまま決められます(民法252条1項)。管理事項の決定に必要なのは、共有者全員の持分の価格を分母とする過半数の賛成であって、共有者全員からの回答ではありません。賛否を答えない共有者は、賛成の側に数えられないというだけで、他の共有者の決定を止める力を持つわけではありません。
行き詰まるのは、賛否を答えない共有者の持分が大きく、賛成する共有者の持分だけでは過半数に届かない場合です。この場面に対応するため、令和3年改正(令和5年4月1日施行)で設けられたのが、賛否不明共有者がいる場合の共有物の管理の裁判です(民法252条2項2号、非訟事件手続法85条)。裁判所の決定を得ると、賛否を答えない共有者を計算から除き、残った共有者の持分の過半数で管理事項を決められます。
根拠と条件
過半数で決められるのは管理事項に限られる
民法252条1項は、共有物の管理に関する事項を、各共有者の持分の価格に従いその過半数で決すると定めています。建物を3年以内の期間で賃貸することや(民法252条4項3号)、管理を委託する会社を選ぶことがこれにあたります。
これに対し、共有物に変更を加える行為のうち、形状または効用の著しい変更を伴うものには共有者全員の同意が必要です(民法251条1項)。逆に、共有物の保存行為は各共有者が単独でできます(民法252条5項)。
裁判所の手続が要るかどうかの分かれ目
| 賛否を答えない共有者を除いた賛成の持分 | 必要な手続 |
|---|---|
| 全体の過半数に達する | 裁判所の手続は不要。民法252条1項によりそのまま決定できる |
| 全体の過半数に届かない | 賛否不明共有者がいる場合の共有物の管理の裁判(民法252条2項2号)を申し立てる |
裁判所の決定が出ると、賛否を答えない共有者を計算から外したうえで、残った共有者の持分の価格の過半数によって管理事項を決められます。決定によって共有持分そのものが移るわけではなく、意思決定の分母が変わるだけです。
申立ての要件
申立人
対象となる共有物について持分を有する共有者です(民法252条2項2号)。共有物の管理者は申し立てられません。管理者は裁判所の決定を得なくても管理ができる立場にあるため、申立てが認められているのは変更決定の裁判に限られています(民法252条の2第2項)。
管轄
共有物の所在地を管轄する地方裁判所です(非訟事件手続法85条1項1号)。
対象となる共有物
共有物全般が対象で、不動産に限られません(民法252条2項)。遺産共有の状態にある共有物でも使えます。所在等不明共有者の持分取得の裁判(民法262条の2)や持分譲渡権限付与の裁判(民法262条の3)は、対象を不動産に関する権利に限り、遺産共有の場合には相続開始から10年の経過を求めています。この点で、賛否不明共有者がいる場合の裁判とは異なります。
申立て前の催告
決定しようとする管理事項を示したうえで賛否を求め、相当の期間内に回答がないことが必要です(民法252条2項2号)。相当の期間は2週間程度とされています。催告した事実を裁判所に示す必要があるため、内容証明郵便の控えを添付書類とすることが求められています。
賛否を答えない共有者のほかにも共有者がいる場合、その共有者にも催告が必要かどうかについては、令和3年改正の議論の中で必要とする指摘がありました。ただし、条文上そのような要件は置かれていません。
手続の流れ
- 申立人が、賛否不明共有者に対し、決定しようとする管理事項を示して賛否を催告する(回答期限は2週間程度)
- 期限までに回答がない
- 共有物の所在地を管轄する地方裁判所に申立書を提出する
- 裁判所が賛否不明共有者に対し、1か月を下らない期間を定めて、賛否を明らかにすべき旨を通知する(非訟事件手続法85条3項)
- 期間内に賛否の表明がない(表明があれば裁判所は決定を出せません。非訟事件手続法85条4項)
- 裁判所が決定を出す
- 賛否不明共有者を除いた共有者の持分の過半数で管理事項を決定する
申立手数料は共有物1個につき1,000円、予納郵券は6,000円分が目安で、共有者が1名増えるごとに2,440円が加算されます。
具体的な場面での適用
A・B・C・D・Eの5人が、5分の1ずつの持分で建物を共有しているとします。Aが期間3年で第三者に賃貸することを提案して全員に賛否を催告したところ、Bは賛成、Cは反対と回答し、D・Eは期限までに回答しませんでした。
賛成しているのはA・Bの2人で、持分は合計5分の2にとどまります。全体の過半数に届かないため、この段階では賃貸を決められません。そこでAが共有物の管理の裁判を申し立て、裁判所からの通知にもD・Eが応じないまま決定が出ると、意思決定に加わるのはA・B・Cの3人になります。A・Bの持分はこの3人の中で3分の2を占めて過半数に達するため、Cが反対していても賃貸を決められます。
【裁判所の決定を得る前】
賛成 A(1/5) + B(1/5) = 2/5 → 全体の過半数に届かない
【裁判所の決定を得た後】D・Eを計算から除外
分母 A(1/5) + B(1/5) + C(1/5) = 3/5
賛成 A + B = 2/5 → 分母3/5の中で2/3を占め、過半数に達する
これに対し、Cも賛成していた場合は、A・B・Cの持分が合計5分の3となり、D・Eから回答がなくても全体の過半数に達します。この場合は裁判所の手続を経ずに賃貸を決められます。
なお、この手続で決められるのは管理事項に限られます。建物の建替えや共有不動産全体の売却のように、変更または処分にあたる行為は、この裁判では決められません。

