養子縁組の有無をどのように調査したらいいですか?

回答

養子(普通養子・特別養子)は実子と同様に第1順位の相続人となります(民法887条1項)。養子の有無は、被相続人の出生から死亡までの戸(除)籍謄本・改製原戸籍謄本を網羅的に取得し、続柄欄・身分事項欄を読み解くことで確認します。普通養子は戸籍上「養子・養女」と明示され、特別養子は「長男・長女」等と実子同様に記載されたうえで身分事項欄に縁組裁判確定日が記載される、という表記の違いを押さえることが調査のポイントです。

目次

調査・手続の概要

養子縁組の調査は、被相続人と法的な親子関係にある者を漏れなく把握するために行う相続人調査の一部です。日本の相続法上、養子は実子と同様に第1順位の相続人となります(民法887条1項)。普通養子は実親との親族関係も維持されるため(民法727条)、養親側・実親側のいずれの相続でも相続人となります。特別養子は、縁組の成立により実方の父母および血族との親族関係が終了するため(民法817条の9)、養親側のみの相続人となります。

ここで重要なのは、養子の存在は被相続人の戸籍にすべて記載されているという点です。日本の戸籍制度は、出生・婚姻・養子縁組・離縁・死亡等の身分関係の変動をすべて記録しますので、戸籍を出生から死亡まで時系列で追えば、養子縁組の有無は確実に把握できます。

逆に言えば、最新の戸籍(死亡時点の現在戸籍)を見ただけでは確認が不十分です。古い縁組や転籍前の縁組は、改製原戸籍や除籍謄本まで遡らなければ表れないことがあるため、「出生から死亡までの戸籍を網羅的に収集する」という基本を徹底することが、養子漏れを防ぐ最大のポイントとなります。

申請主体・申請先・必要書類

申請主体

被相続人の戸籍は、相続手続のために必要な利害関係人として相続人が請求できます。共同相続人の一人が他の相続人の同意なく請求することも可能です。

申請先

戸籍の種類申請先
現在戸籍・除籍・改製原戸籍各戸籍の本籍地を管轄する市区町村役場の戸籍住民課
広域交付(令和6年3月1日以降)最寄りの市区町村役場の戸籍住民課(本人確認書類が必要)

令和6年3月1日施行の戸籍法の一部を改正する法律(令和元年法律第17号)により、本籍地以外の市区町村役場でも戸籍証明書・除籍証明書をまとめて取得できる広域交付制度が始まりました。広域交付制度の概要は次のとおりです。

  • 請求できる者:本人、配偶者、父母・祖父母など(直系尊属)、子・孫など(直系卑属)
  • 請求方法:請求者本人が市区町村窓口に出向くことが必要。郵送請求・代理人による請求は不可
  • 本人確認:運転免許証・マイナンバーカード・パスポート等の顔写真付き身分証明書が必要
  • 対象外:コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍、一部事項証明書、個人事項証明書(抄本)、戸籍の附票・身分証明書等

兄弟姉妹の戸籍は広域交付の対象外であるため、相続関係の戸籍収集において広域交付を利用できるのは、本人を起点として配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍に限られる点に注意が必要です。傍系の戸籍が必要な場合は、従前どおり本籍地の市区町村役場への請求(窓口または郵送)となります。

必要書類

書類内容・取得先
戸籍交付申請書各市区町村の窓口またはホームページからダウンロード
申請者の本人確認書類運転免許証・マイナンバーカード・パスポート等の顔写真付き身分証明書
申請者と被相続人との関係を示す戸籍謄本(直系の関係を示すもの)各人の本籍地の市区町村役場
委任状(代理人が窓口請求する場合)各市区町村の様式
手数料戸籍全部事項証明書(戸籍謄本):1通450円
除籍全部事項証明書(除籍謄本)・改製原戸籍謄本:1通750円

申請の流れ

ステップ1:最寄り窓口で広域交付を試みる(請求者が本人・配偶者・直系の場合)

請求者が被相続人の本人(自己分)・配偶者・直系卑属・直系尊属に該当する場合、最寄りの市区町村役場の戸籍住民課で広域交付による一括請求を試みます。本人確認のため顔写真付き身分証明書を持参してください。コンピュータ化されていない一部の古い戸籍は広域交付の対象外となるため、その分は次のステップで個別に取得します。

ステップ2:本籍地への個別請求(広域交付で取得できない戸籍)

広域交付で取得できない戸籍は、本籍地を管轄する市区町村役場に窓口または郵送で請求します。傍系の戸籍が必要な場合(被相続人が兄弟姉妹相続の対象である場合等)は、最初からすべての戸籍について本籍地への個別請求が必要です。郵送請求の場合は、必要書類のコピー、返信用封筒(切手貼付)、定額小為替(手数料分)を同封します。

ステップ3:時系列に並べて空白期間がないか確認する

取得した戸籍の作成日・除籍事由・編製事由を時系列で並べ、被相続人の出生から死亡までの間に空白期間がないかを確認します。空白期間があれば、その期間に対応する戸籍を追加で取得します。各戸籍の冒頭には「従前戸籍」または「従前の本籍」が記載されていますので、それを手がかりに、転籍前・改製前・婚姻前の戸籍を順次取得していきます。

所要期間と費用

  • 広域交付:窓口で当日交付されることが多いが、本籍地への確認が必要な場合は後日交付となることもあり
  • 郵送請求:1機関あたり1〜2週間程度
  • 戸籍一式の取得費用:数千円程度(被相続人の戸籍移動の多寡による)

取得した戸籍で確認すべき項目

戸籍を時系列に並べたら、次の項目を順に確認していきます。養子縁組調査では、普通養子と特別養子で戸籍上の表記方法が大きく異なる点が読み解きのポイントとなります。

身分事項欄の「養子縁組」事項

普通養子の場合、養子の身分事項欄に「養子縁組」が記録され、その中に【縁組日】【養父氏名】【養母氏名】【代諾者】(15歳未満の養子の場合)【従前戸籍】等が記載されます

調査のポイント

身分事項欄に「養子縁組」の記録があれば、その者は被相続人(または被相続人の配偶者)と普通養子縁組をしています。養親側の戸籍の養親の身分事項欄にも「養子縁組」が記録され、そこに【縁組日】【共同縁組者】【養子氏名】等が記載されますので、両側から照合できます。複数の養子縁組や、離縁→再縁組の履歴がないかも確認してください。

身分事項欄の「民法817条の2」事項

特別養子の場合、養親の戸籍の特別養子の身分事項欄に「民法817条の2」が記録され、その中に【民法817条の2による裁判確定日】【届出日】【届出人】【従前戸籍】等が記載されます。あわせて、特別養子は実方の戸籍を出る際に単独の新戸籍が編製・即時消除される処理がなされ、その新戸籍の身分事項欄にも「特別養子縁組」事項が記録されます。

調査のポイント

特別養子は、養親の戸籍において、戸籍上は「養子」という用語ではなく「民法817条の2」という事項名で記録される運用です。身分事項欄の事項名が「養子縁組」(普通養子)か「民法817条の2」(特別養子)かによって、縁組の種類を判別できます。特別養子は実方の父母および血族との親族関係が終了している(民法817条の9)ため、養親側の相続では実子と同様に第1順位の相続人となる一方、実方側の相続では相続人になりません。

身分事項欄の「養子離縁」事項

過去に普通養子縁組が成立したものの、その後離縁している場合は、養子の身分事項欄に「養子離縁」が記録され、【離縁日】【養父氏名】【養母氏名】【入籍戸籍】(または【新本籍】)等が記載されます。

調査のポイント

「養子縁組」事項と「養子離縁」事項が時系列でセットになっている場合、その者は被相続人の相続開始時点で養子ではありません。離縁の記載がなく縁組のみが記録されている場合は、現在も縁組関係が継続しています。なお、特別養子の離縁(民法817条の10)は、養親による虐待等の限定的な事由がある場合に家庭裁判所の審判によってのみ可能とされており、極めて例外的です。

養子縁組無効の記載

養子縁組無効の裁判が確定し、戸籍訂正の申請がされた場合は、養子の従前の身分事項欄等に「消除」が記録され、【消除日】【消除事項】縁組事項、【消除事由】養父○○養母○○との養子縁組無効の裁判確定、【裁判確定日】等が記載されたうえで、従前の縁組事項の記録が表示されます。

調査のポイント

「消除」事項によって過去の縁組事項が無効であった旨が表記されている場合、その者は被相続人の相続人ではありません。なお、調査段階で戸籍上の縁組事項を否定する主張(縁組意思の欠缺等を理由とする縁組無効の主張)は、別途の訴訟手続(縁組無効確認訴訟)で確定するまで戸籍の記載が前提となります。

養子側被相続人か養親側被相続人かの区別

調査対象の被相続人が、養子縁組のどちら側の立場にあるかを整理します。

調査のポイント

被相続人が養親である場合、その養子は被相続人の相続人になります(民法887条1項)。被相続人が養子である場合、(a)普通養子であれば実方の父母との親族関係も維持されるため実親側の相続でも相続人となる一方、(b)特別養子であれば実方の父母および血族との親族関係は終了している(民法817条の9)ため、実親側の相続では相続人になりません。実親側・養親側のどちらの相続なのかによって、見るべき戸籍と判断が変わる点に注意が必要です。

代襲相続との関係(養子の子の取扱い)

養子に子がいる場合の代襲相続には注意が必要です。

調査のポイント

民法887条2項ただし書の「被相続人の直系卑属でない者」は代襲相続人になれないとの規定について、国税庁の質疑応答事例「養子縁組前に出生した養子の子の代襲相続権の有無」は、「相続開始前に死亡した被相続人の子を通じて『被相続人の直系卑属』でなければならないと解される」として、養子縁組前に出生していた養子の子は代襲相続人にならないとの取扱いを明示しています(養子縁組前に出生した養子の子の代襲相続権の有無)。戸籍では、養子の子の出生日と養子縁組日(身分事項欄記載の【縁組日】)を時系列で比較することで判別できます。

相続トラブルに備えたアドバイス

相続人を欠く協議は無効

養子(普通養子)を含めずに行った遺産分割協議は、相続人を欠く協議として無効になります。戸籍を出生から死亡まで網羅的に取得したうえで、各戸籍の身分事項欄に「養子縁組」事項がないかを必ず確認することをお勧めします。協議成立後に養子の存在が発覚した場合、協議のやり直しが必要となり、紛争が蒸し返されるリスクがあります。

用語に頼らず事項名で判別する

特別養子は、戸籍上「養子」「養親」という用語ではなく「民法817条の2」という事項名で記録されます。身分事項欄の事項名(「養子縁組」か「民法817条の2」か)で縁組の種類を判別することが望まれます。特別養子は養親側の相続では実子と同様に第1順位の相続人となる一方、実方側の相続では相続人になりません(民法817条の9)。「養親側の相続なのか実方側の相続なのか」を取り違えないよう、調査の段階で立場を整理してください。

離縁時期を時系列で押さえる

過去に養子縁組があっても、被相続人の相続開始時点で離縁している場合はその者は相続人ではありません。身分事項欄の「養子縁組」事項と「養子離縁」事項を時系列で整理し、相続開始時点で縁組関係が継続していたかを確認することが望まれます。なお、離縁の効力を争う場面もありますが、これも別途の訴訟事項であり、調査段階では戸籍の記載に従って判断します。

代襲相続の射程に注意

養子に子がいる場合、その子が被相続人(養親)の代襲相続人になれるかは、見落とされがちな論点です。国税庁の質疑応答事例も明示するとおり、民法887条2項ただし書により、被相続人の直系卑属でない者(縁組前に生まれた養子の子)は代襲相続人になれません。この点は、養子が被相続人より先に死亡しているケースで実務上の問題となりますので、養子に子がいる場合は、子の出生日と身分事項欄記載の【縁組日】の前後関係を必ず確認してください。

民事上と相続税法上の養子の取扱いを混同しない

相続税法では、養子の数を法定相続人の数に算入する際に上限が設けられています(被相続人に実子がいる場合は養子1人まで、実子がいない場合は2人まで。相続税法15条2項)。これは相続税の基礎控除額・生命保険金等の非課税限度額の計算上の制限にすぎず、民事上の相続人としての地位や法定相続分には影響しません。実務上、この民事上の取扱いと税務上の取扱いを混同するケースが見られますが、遺産分割協議や遺留分の計算では、養子の数の制限はかからず、戸籍上の養子はすべて相続人として扱う点に注意してください。

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