共有不動産を分ける裁判にはどのくらい費用がかかりますか?

回答

共有物分割訴訟の費用は、裁判所に納める費用(貼用印紙・予納郵券)、不動産の鑑定費用、弁護士費用に大きく分かれます。貼用印紙額は、固定資産税の課税標準額(土地はその2分の1)に原告の持分割合と3分の1を乗じた訴額をもとに算定します(民事訴訟費用等に関する法律3条1項)。判決で換価分割になった場合は、競売の予納金も必要になります。

目次

共有物分割訴訟にかかる費用の全体像

共有物分割訴訟(共有不動産を分ける裁判)を起こすときにかかる費用は、大きく三つに分かれます。裁判所に納める費用(貼用印紙・予納郵券)、不動産の評価をめぐる鑑定費用、そして弁護士に依頼する場合の弁護士費用です。判決の内容が換価分割(競売による分割)になった場合には、その後の競売手続のための予納金も加わります。

このうち金額があらかじめ決まっているのは裁判所に納める費用で、対象不動産の価格と原告の持分割合から計算できます。鑑定費用と弁護士費用は、事案の内容や依頼先によって変わります。

裁判所に納める費用(貼用印紙・予納郵券)

訴額の算定方法と貼用印紙額

訴えを起こす際は、訴額(訴訟の目的の価額)に応じた手数料を収入印紙で納めます(民事訴訟費用等に関する法律3条1項・別表第1)。

訴額は、原告が訴えで主張する利益を金銭に評価した額です(民事訴訟法8条)。共有物分割訴訟は、共有関係を解消して共有者相互の制限を取り除くための訴訟で、共有持分権そのものを争うわけではありません。そこで実務では、占有権に基づく引渡請求の場合に準じて、目的物の価格の3分の1を訴額として扱います(昭和31年12月12日民事甲412号民事局長通知7項(二))。

対象不動産の価格は固定資産税の課税標準額を基準とし(同通知1項)、土地についてはさらにその2分の1とします(平成6年3月28日民二79号民事局長通知)。この金額に原告の共有持分割合を乗じ、共有物分割であることから3分の1を乗じた額が訴額です。原告が複数いる場合は、各原告の持分に相当する価額を合算します(民事訴訟法9条1項)。

【計算例】固定資産税の課税標準額3,000万円の土地を、
持分2分の1の共有者が分割請求する場合

3,000万円 × 1/2(土地の特例) × 1/2(原告の持分割合) × 1/3
= 250万円

→ 訴額250万円に対する貼用印紙額は1万8,000円

訴額と貼用印紙額の対応の目安は次のとおりです。

訴額貼用印紙額
250万円1万8,000円
500万円3万円
1,000万円5万円
3,000万円11万円
5,000万円17万円

不動産の時価そのものではなく、課税標準額を出発点に持分割合と3分の1を乗じるため、印紙額は不動産の市場価格からみるとかなり小さく収まります。固定資産税評価額をはじめとする不動産の評価額の種類は、「「時価」「路線価」「固定資産税評価額」——どれが不動産の本当の値段ですか?」で詳しく解説しています。

予納郵券

裁判所が訴状などを当事者に送達するための郵便切手を、あらかじめ納めます。金額は裁判所や当事者の人数によって異なりますが、数千円程度です。

鑑定費用と弁護士費用

不動産の鑑定費用

当事者間で不動産の評価額に争いがある場合、双方が評価査定書などを提出して調整し、それでも一致しなければ、裁判所が鑑定人(不動産鑑定士)を選任して鑑定を行うことがあります。鑑定費用は申し立てた当事者が予納するのが原則で、対象不動産の種類や規模によりますが、少なくとも数十万円程度はかかります。鑑定を利用するメリットや費用の目安は、「不動産鑑定士に評価を頼むと、どんなメリットがありますか?」で詳しく解説しています。

弁護士費用

弁護士に訴訟代理を依頼する場合の費用は、着手金と報酬金に分かれるのが一般的で、金額は事務所ごとの基準によります。弁護士費用は「訴訟費用」には含まれず、勝訴しても相手方に請求できないのが原則です。

換価分割(形式的競売)になった場合の予納金

判決で換価分割が命じられ、競売を申し立てる場合には、執行裁判所に予納金を納めます。共有物分割のための競売(形式的競売)は、担保権の実行としての競売の例によるとされているためです(民事執行法195条)。予納金の額は裁判所や不動産の状況によって異なりますが、数十万円から100万円程度が目安です。納めた予納金は、売却代金から手続費用として清算されるのが通常です。

訴訟費用は誰が負担するか

貼用印紙額や予納郵券、鑑定費用といった「訴訟費用」は、判決の中で裁判所が負担割合を定めます(民事訴訟法67条1項)。通常の訴訟では敗訴した当事者が負担するのが原則ですが(同法61条)、共有物分割訴訟は形式的形成訴訟という性質上、勝訴・敗訴という考え方がそのまま当てはまるわけではありません。実務では、各共有者がそれぞれ支出した費用を負担する扱いや、持分割合に応じて按分する扱いがみられます。

費用を含めた訴訟という手段のメリットデメリットについては、「共有不動産を分ける裁判のメリット・デメリットを教えてください」で詳しく解説しています。

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