他の共有者と話し合いをしないまま、いきなり裁判を起こせますか?

回答

共有物分割訴訟を提起するには、原則として事前に共有者間で分割の協議(話し合い)を行うことが必要です(民法258条1項)。ただし、相手の所在が不明である場合や、協議を持ちかけても応じてもらえない場合など「協議をすることができないとき」には、協議を経ずに訴訟を提起することができます(同条同項)。

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結論

共有物分割訴訟を起こすためには、原則として、まず共有者間で分割についての話し合い(協議)を行い、それがまとまらなかったという事実が必要です。これを「協議前置」(きょうぎぜんち)といいます。

民法258条1項は、共有物の分割について「共有者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないとき」に裁判所へ分割を請求できると定めています。つまり、協議を経ていない場合には、原則として訴訟を提起することができません。

ただし、「協議をすることができないとき」にも訴訟を提起できるとされているため、協議が事実上不可能な場合には、話し合いを行わずに訴訟を起こすことも認められます。

根拠と条件

協議前置が求められる理由

共有物分割訴訟における協議前置は、訴訟要件(訴えが適法であるための条件)として位置づけられています。共有物の分割は共有者全員の利害に関わるため、まずは当事者間で自主的に解決を試みるべきであるという趣旨に基づきます。

民法258条1項の文言は、次の2つの場合に裁判所への請求を認めています。

  • 「協議が調わないとき」:共有者間で協議を行ったものの、分割方法について合意に至らなかった場合
  • 「協議をすることができないとき」:そもそも協議を行うこと自体が不可能な場合

後者の「協議をすることができないとき」は、令和3年の民法改正(2023年4月1日施行)で明文化されたものです。改正前の条文は「協議が調わないとき」のみを規定していましたが、改正前から判例・実務上、協議が不可能な場合にも訴訟提起は認められていました。改正により、この解釈が条文上も明確になったといえます。

「協議をすることができないとき」に該当する場合

「協議をすることができないとき」に該当する典型的な場合としては、次のようなものがあります。

  • 共有者の所在が不明で連絡がとれない場合
  • 共有者が協議に一切応じない場合(通知書を送付しても返答がないなど)
  • 共有者が多数にのぼり、全員での協議が現実的に困難な場合

協議前置の充足の程度

協議前置の要件を満たすために、長期間にわたる交渉や詳細な分割案の検討まで行う必要はありません。共有者に対して分割の協議を申し入れ、相手方がこれに応じないか、あるいは協議をしたが合意に至らなかったという事実があれば足ります。

実務では、弁護士を通じて他の共有者に対し共有物分割の通知書(協議の申入れ)を送付し、一定期間内に回答がなければ訴訟を提起するという流れが一般的です。

具体的な場面での適用

たとえば、AとBが土地を共有しているケースで、AがBに対して共有物分割の協議を書面で申し入れたものの、Bが一定期間(1週間から1か月程度)経過しても何ら回答をしない場合、Aは「協議が調わないとき」または「協議をすることができないとき」に該当するものとして、共有物分割訴訟を提起することができます。

また、共有者の一部が行方不明であり連絡がとれない場合には、その共有者との間では「協議をすることができないとき」に該当します。この場合、当該共有者を被告として共有物分割訴訟を提起し、訴状の送達は公示送達(裁判所の掲示板に掲載する方法による送達)で行うことになります。

なお、共有物分割訴訟は、調停を経ずに直接提起することができます。家事事件である遺産分割とは異なり、共有物分割訴訟には調停前置主義(裁判の前に調停を申し立てなければならないというルール)の適用はありません。

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