共有持分に抵当権(住宅ローンの担保)が設定されていても、共有物分割を請求できます。抵当権の存在は分割の妨げにならず、分割方法にも法律上の制限はありません。分割が行われても抵当権は消滅せず、従前の共有持分の割合で存続します。
結論
共有持分に抵当権が設定されていても、共有物分割は可能です。共有物分割請求権は、各共有者がいつでも行使できる権利であり(民法256条1項)、持分に抵当権が付いていることは、その行使を妨げる事由とされていないためです。
分割方法についても制限はありません。現物分割(不動産を物理的に分ける方法)、賠償分割(共有者の1人がお金を払って他の共有者の持分を取得する方法)、換価分割(競売にかけて代金を分ける方法)のいずれも選択できます(民法258条2項・3項)。
このように分割自体は自由にできる一方で、抵当権は分割によって影響を受けず、分割後もそのまま残ります。抵当権がどのような形で残るのかが、この問題の中心となります。
根拠と条件
分割後も抵当権は従前の持分の割合で存続する
共有物分割が行われても、共有持分に設定された抵当権に実質的な影響は生じません。大審院は、共有不動産が分割された場合でも、分割前の共有者の1人がその共有持分に設定した抵当権は、依然として従前の共有持分の割合において不動産全部の上に存在すると判断しています(大判昭和17年4月24日)。
つまり、抵当権は分割によって消滅することも、範囲が拡大することもありません。抵当権者(住宅ローンの債権者である金融機関など)から見れば、担保の対象は分割の前後で実質的に変わりません。
抵当権者は分割に参加できる
抵当権者のように共有物について権利を有する者は、自己の費用で共有物分割に参加できます(民法260条1項)。参加の請求があったのに参加させずに分割をした場合、その分割は参加を請求した者に対抗できません(同条2項)。
もっとも、抵当権者が分割に参加してもしなくても、分割の結果が抵当権に影響しないという結論は変わりません。
具体的な場面での適用
現物分割の場合:登記にどう表れるか
甲土地をAとBが持分2分の1ずつで共有しており、Aの持分に債権者Cの抵当権が設定されているとします。AとBが現物分割の合意をして、東側の乙土地をAの単独所有、西側の丙土地をBの単独所有とした場合、登記は次のようになります。
| 分割後の土地 | 持分登記の状態 |
|---|---|
| 乙土地(A取得) | もとからのA持分には抵当権あり/Bから移転した持分には抵当権なし |
| 丙土地(B取得) | もとからのB持分には抵当権なし/Aから移転した持分には抵当権あり |
Cが抵当権を実行する場合、競売の対象となるのは、登記上抵当権が設定されている「従前のA持分(2分の1)」であり、Aが取得した乙土地の全体ではありません。逆に、Bが取得した丙土地にも、Aから移転した持分の限度で抵当権の負担が残ります。
換価分割(形式的競売)の場合
裁判所が換価分割を命じた場合、不動産全体が形式的競売(共有物分割のために裁判所が命じる競売)にかけられます。この場合、抵当権が設定された持分に対応する売却代金から、抵当権者への配当が行われます。競売における抵当権の具体的な取扱いは、「分割で競売になった場合、不動産に付いている住宅ローンの担保はどうなりますか?」で解説しています。
住宅ローンの残額が不動産の価値を上回っている場合(オーバーローン)の分割については、「共有不動産がオーバーローン状態ですが、それでも共有物分割はできますか?」で解説しています。

