共有持分に住宅ローンの担保が付いていても、共有不動産を分割できますか?
共有持分に抵当権(住宅ローンの担保)が設定されていても、共有物分割請求をすることができます(民法256条1項)。抵当権の存在は、分割請求を妨げる事由にはなりません。また、分割方法についても法律上の制限はありません。ただし、抵当権は分割によって消滅するわけではなく、分割後も一定の範囲で存続するため、分割方法の選択にあたっては抵当権の影響を考慮する必要があります。
結論
共有持分に抵当権が設定されていても、共有物分割請求は可能です(民法256条1項)。共有物分割請求権は各共有者に認められた権利であり、他の共有者の持分に抵当権が付いていることは、この権利の行使を妨げません。
分割方法についても、現物分割(土地を物理的に分ける方法)、全面的価格賠償(共有者の1人がお金を払って不動産全体を取得する方法)、換価分割(競売にかけて代金を分ける方法)のいずれも選択することができ、抵当権があるという理由だけで特定の分割方法が排除されるわけではありません。
根拠と条件
抵当権が分割を妨げない理由
共有物分割請求権は、民法256条1項により、各共有者が「いつでも」行使できる権利として認められています。この権利の行使に際して、共有持分に設定された抵当権の有無は要件とされていません。
これは、共有物分割は共有者間の権利関係を変動させる行為であって、抵当権者の権利を直接に害するものではないという考え方に基づきます。
分割後の抵当権の扱い
共有物分割が行われても、共有持分に設定されていた抵当権は消滅しません。分割前の共有持分の割合において、分割後の不動産の上に抵当権が存続します。
たとえば、AとBが土地を各2分の1の持分で共有しており、Aの共有持分に第三者Cの抵当権が設定されているとします。この土地を現物分割(東側をA、西側をBの単独所有とする分割)した場合、Cの抵当権は次のように扱われます。
- 東側の土地(Aが取得)の登記記録には、Aの持分登記が2つ並びます。1つには抵当権が設定されており、もう1つ(Bから移転した持分)には抵当権が設定されていません。
- 西側の土地(Bが取得)の登記記録にも、Bの持分登記が2つ並びます。1つには抵当権が設定されておらず、もう1つ(Aから移転した持分)には抵当権が設定されています。
結局、抵当権者Cが実行できる(競売にかけられる)のは、登記上、抵当権が設定されている共有持分ということになります。Aが取得した土地全体に抵当権が及ぶわけではありません。
抵当権者の分割参加権
共有物について権利を有する者(抵当権者を含む)は、自己の費用で共有物分割に参加することができます(民法260条1項)。参加の請求があったにもかかわらず、その者を参加させないで分割をしたときは、その分割はその者に対抗することができません(同条2項)。
ただし、抵当権者が分割に参加してもしなくても、分割の結果が抵当権者に影響しないという結論に違いはありません。抵当権は分割前の持分割合の範囲で存続するためです。
具体的な場面での適用
現物分割の場合
上記の設例のとおり、現物分割がされた場合、抵当権は分割後の各不動産の上に、分割前の共有持分の割合で存続します。抵当権者にとっては、抵当権の目的物(共有持分)の実質的な価値に変動がないため、原則として不利益は生じません。
全面的価格賠償の場合
抵当権が設定されていない共有者が不動産全体を取得し、抵当権が設定されている共有者に代償金を支払う場合には、不動産を取得した共有者が抵当権の負担を引き受ける形になります。
換価分割(形式的競売)の場合
裁判所が換価分割(形式的競売)を命じた場合、不動産全体が競売にかけられます。形式的競売には民事執行法の強制競売の規定が準用されるため(民事執行法195条)、共有持分に抵当権が設定されているときは、競売手続の中で抵当権者に対する配当が行われます。抵当権者は、競売代金から自己の被担保債権について配当を受けることができます。

