相続の不動産評価で使う「路線価」「公示価格」「固定資産税評価額」の違いは何ですか?

回答

路線価(相続税評価額)は相続税・贈与税の算定基準で公示価格の約80%の水準、公示価格(地価公示価格)は国土交通省が公表する土地取引の指標で時価に最も近い水準、固定資産税評価額は固定資産税等の課税基準で公示価格の約70%の水準です。遺産分割の実務では、当事者間の合意により、いずれかの基準を参考に不動産の評価額を決定します。

目次

それぞれの意味

遺産分割において不動産が遺産に含まれる場合、相続人間で不動産の価格について合意を形成する必要があります。その際に参考とされる公的な評価基準として、公示価格、固定資産税評価額、相続税評価額(路線価)の3つがあります。これらはいずれも国や地方自治体が算出・公表しているものですが、それぞれ目的・算定主体・評価水準が異なります。

公示価格(地価公示価格)

公示価格とは、国土交通省の土地鑑定委員会が特定の標準地について毎年1月1日を基準日として公示する価格です(地価公示法)。3月下旬ころの官報に掲載されます。公示価格は、一般の土地取引に指標を提供するとともに、公共事業の用に供する土地の取得価格の算定等、相続税評価及び固定資産税評価の基準とされています。

評価方法は、価格の三要素である市場性・収益性・費用性からアプローチする取引事例比較法・収益還元法・原価法の3方式を総合して算定します。

公示価格は、国土交通省ウェブサイトの「土地総合情報システム」で検索が可能です。

固定資産税評価額

固定資産税評価額とは、地方税法349条に基づき、土地家屋課税台帳等に登録された基準年度の価格又は比準価格です。固定資産税、都市計画税、不動産取得税、訴額算定等の基準とされています。3年に1回の評価替えが行われますが、価額が下落したと認める場合には修正(時点修正)を加えることができます。

固定資産税評価額の特徴として、土地については公示価格の70%を目処に設定されている点が挙げられます。土地の個別的要因(地形、角地など)を考慮して固定資産評価基準により不動産ごとに価格が決められますが、3年に一度しか評価替えをしないため、地価公示価格や地価調査標準価格、実勢価格との格差が生じやすいという面もあります。

相続税評価額(路線価)

相続税評価額(いわゆる路線価)とは、財産評価基本通達に基づき、相続税・贈与税等の算出基準として、毎年その年の1月1日時点の価格が対象土地の地目ごとに算定されるものです。市街地的地域については路線価方式(路線に面している標準的な画地の1㎡あたりの評価額を基に算定する方式)、市街地以外の地域については倍率方式(固定資産税評価額に倍率を乗ずる方式)のいずれかにより算定され、各税務署単位で国税庁から公表されています(国税庁ホームページ上に公開)。

路線価は公示価格の80%を目処に設定されています。毎年評価替えされるため、地価変動をより詳細に反映しやすいという特徴があります。

3つの評価基準の違い

比較項目公示価格固定資産税評価額相続税評価額(路線価)
根拠地価公示法地方税法349条財産評価基本通達
算定主体国土交通省(土地鑑定委員会)市区町村国税庁
基準日毎年1月1日基準年度(3年に1回評価替え)毎年1月1日
公表時期毎年3月下旬評価替え年度の4月ころ毎年7月ころ
主な用途土地取引の指標、公共用地の取得価格算定固定資産税・都市計画税・不動産取得税・訴額算定相続税・贈与税の算定
時価に対する水準時価と同水準(100%)公示価格の約70%公示価格の約80%
評価の更新頻度毎年3年に1回(時点修正あり)毎年
確認方法国土交通省「土地総合情報システム」固定資産税の納税通知書・市区町村の窓口国税庁ホームページ

比較表で特に重要な違いは、「時価に対する水準」と「評価の更新頻度」の2点です。

まず水準の違いについて、公示価格が時価(正常な取引価格)と同水準であるのに対し、路線価は公示価格の約80%、固定資産税評価額は公示価格の約70%に設定されています。つまり、同じ不動産であっても、どの基準を用いるかによって評価額が大きく異なります。

次に更新頻度について、公示価格と路線価は毎年更新されるため直近の地価変動を反映しやすいのに対し、固定資産税評価額は3年に1回の評価替えを基本とするため、地価変動が大きい時期には実勢価格との乖離が生じることがあります。ただし、価額が下落した場合には時点修正が行われることがあります。

なお、上記のほか、都道府県知事が国土利用計画法施行令に基づき特定の基準地について毎年7月1日を基準日として公表する都道府県地価調査標準価格(地価調査標準価格)があります。地価公示地との共通地点もあるので、前半・後半に分けて半年ごとの地価変動を把握することができます。

どの基準を使うか(判断基準)

遺産分割の実務において不動産の評価をどの基準で行うかについて、法律上の定めはありません。最終的には当事者間の合意によって決定されます。

調停実務においては、路線価を参考として評価の合意を得ることが多いとされています。路線価は毎年更新されて地価変動を反映しやすく、全国共通の画一的で合理的な基準であるため、当事者の納得を得やすいためです。

一方、建物価格の合意資料としては固定資産税評価額が利用されることが多いとされています。一般的には建物価格は土地価格と比較して安く、不動産価格のうちに占める建物のウエイトは低い場合が多いからです。なお、相続税等の算出における自用建物の評価は固定資産税評価額×1.0倍とされています(現行の評価倍率は全国一律で1.0倍)。

ただし、路線価や固定資産税評価額はいずれも時価そのものではないため、地価変動が激しい時期や、個別の事情がある場合には、実勢価格(時価)との間に乖離が生じることもあります。そのような場合には、不動産鑑定士による鑑定評価を行うことも検討されます。

また、相続税申告書の申告額を参考とする場合には注意が必要です。小規模住宅(上限面積240㎡)や事業用宅地(上限面積400㎡)の特例措置により、居住・事業継続を前提として最大80%の評価減が認められているため、相続税申告額が時価とかけ離れた価額となっていることがあります。遺産分割において相続税申告額を参考にする場合は、特例措置による軽減前の価格に補正する必要があります。

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