共有不動産が競売にかけられたとき、共有者自身が入札して買い取ることはできますか?
共有物分割の形式的競売(裁判所が命じる競売)において、共有者自身が入札して不動産を買い取ることは可能です。一般的な競売では債務者の入札が禁止されていますが(民事執行法68条)、形式的競売は債権回収を目的とする手続ではないため、共有者は「債務者」に該当せず、入札禁止の規定は適用されません。ただし、共有不動産に抵当権が設定されている場合には、別の取扱いとなることがあります。
結論
共有物分割訴訟の結果、換価分割(競売による分割)の判決が確定すると、裁判所の主催により形式的競売が実施されます。この形式的競売において、共有者自身が入札し、最高価で落札すれば不動産を取得することができます。
一般的な債権回収のための競売(担保権実行・強制競売)では、債務者の入札は禁止されています(民事執行法68条)。しかし、形式的競売は共有不動産を金銭に換えて分配するための手続であり、債権回収を目的とするものではありません。そのため、共有者自身が入札することは禁止されていません。
根拠と条件
入札が禁止されない理由
担保権実行としての競売では、債務者はもともと弁済すべき立場にあるため、自己資金で物件を購入するより弁済を優先すべきという趣旨から、債務者の入札(買受け)が禁止されています(民事執行法68条)。
一方、形式的競売においては、実質的にも形式的にも、共有者は「債務者」に該当しません。形式的競売は共有物の価値的変換を目的とする手続にすぎないため、債務者の入札禁止の規定(民事執行法68条)を適用(準用)する余地はないとされています。
したがって、共有者の入札金額が最高価であれば、その共有者が買受人となることができます。
抵当権が設定されている場合の注意点
共有不動産に抵当権が設定されており、共有者の1人がその被担保債権の債務者でもあるケースがあります。このような共有者が形式的競売で入札できるかどうかは、担保権が実行されているかどうか(競売手続が競合しているかどうか)によって異なります。
担保権者(銀行など)が担保権を実行して競売を申し立てており、形式的競売と競合している場合(二重開始決定となっている場合)には、担保権実行としての競売のルールも適用されるため、債務者である共有者の入札は禁止されます。
これに対して、担保権者が競売の申立てをしておらず、二重開始決定となっていない場合には、手続はあくまで形式的競売として進むため、共有者の入札は可能となります。
具体的な場面での適用
共有者が単独所有を実現したい場合
たとえば、AとBが不動産を共有しており、共有物分割訴訟の結果、全面的価格賠償(共有者の1人がお金を払って不動産全体を取得する方法)の要件を満たさないと判断され、換価分割の判決が出たとします。Aが不動産の単独所有を希望する場合、Aは形式的競売に入札し、最高価で落札すれば不動産を取得できます。このように、全面的価格賠償が認められなかった場合の代替的な手段(次善策)として、形式的競売での入札を想定しておくことが実務上重要です。
代金納付における注意点——差引納付は使えない
一般的な債権回収のための競売では、債権者(担保権者・差押債権者)が落札した場合、入札金額から自身に配当される予定額を控除した残額だけを納付すれば足りるとされています(差引納付。民事執行法78条4項)。
形式的競売においても、共有者が落札した場合には、競売手続の最後に代金の一部(共有持分割合相当額)の交付を受けることになるため、差引納付と同様の方法が使えるようにも思えます。しかし、差引納付をすることができるのは「配当金・弁済金を受領する債権者」だけであり、代金の一部の交付を受ける共有者(所有者)は対象に含まれません。
したがって、形式的競売で共有者が落札した場合には、差引納付の規定は適用されず、落札金額の全額を納付する必要があります。
融資の利用
落札金額の全額を納付する必要があるため、代金の調達のために融資を利用するというニーズが生じます。競売における代金納付と担保権設定(融資実行)を同時に行うことは、平成10年の民事執行法改正により可能となっています(民事執行法82条2項)。この制度は形式的競売に限らず、競売一般に適用されるものです。共有物分割訴訟の段階から、状況によっては換価分割となって形式的競売となることを想定して、金融機関の審査を受けておくなど、必要な準備を進めておくことが考えられます。

