養子に相続権はありますか?普通養子と特別養子で違いはありますか?
養子は、実子と同様に相続人となります(民法887条1項)。ただし、普通養子縁組の場合は実親との親族関係が存続するため養親・実親の双方を相続できるのに対し、特別養子縁組の場合は実親との親族関係が終了するため(民法817条の9)、養親のみを相続します。
それぞれの意味
普通養子縁組とは、当事者の合意と届出によって成立する養子縁組です(民法792条以下)。養子は養親の嫡出子としての身分を取得しますが(民法809条)、実方の血族との親族関係は断絶しません。そのため、普通養子は養親を相続できるほか、実親を相続することもできます。
特別養子縁組とは、子の利益のために特に必要があると認められるときに、家庭裁判所の審判によって成立する養子縁組です(民法817条の2)。特別養子縁組が成立すると、養子と実方の父母及びその血族との親族関係は終了します(民法817条の9)。そのため、特別養子は養親のみを相続し、実親を相続することはできません。
普通養子と特別養子の違い
| 比較項目 | 普通養子縁組 | 特別養子縁組 |
|---|---|---|
| 根拠条文 | 民法792条〜 | 民法817条の2〜 |
| 成立要件 | 当事者の合意+届出(未成年者を養子とする場合は家庭裁判所の許可) | 家庭裁判所の審判 |
| 養親の要件 | 成年者(民法792条) | 配偶者のある者で、夫婦の一方が25歳以上(民法817条の3・817条の4) |
| 養子の年齢制限 | 養親より年長でないこと(民法793条) | 原則として審判申立て時に15歳未満(民法817条の5) |
| 実親との親族関係 | 存続する | 終了する(民法817条の9) |
| 実親の相続権 | あり(養親・実親の双方を相続可能) | なし(養親のみを相続) |
| 離縁 | 協議離縁・裁判離縁が可能(民法811条〜) | 原則として離縁できない(民法817条の10) |
| 戸籍の記載 | 「養子」「養女」と記載 | 「長男」「長女」等と記載(養子である旨の記載なし) |
比較表で特に重要な違いは、「実親との親族関係」の取扱いです。
普通養子縁組では、養子と実方血族との親族関係は断絶しません。民法809条により、養子は養親の嫡出子としての身分を取得しますが、これは養親側に新たな親族関係が生じるだけで、実親側の親族関係には影響しないためです。したがって、普通養子は養親が死亡した場合にその相続人となると同時に、実親が死亡した場合にもその相続人となります。
これに対して、特別養子縁組では、養子と実方の父母及びその血族との親族関係が終了します(民法817条の9)。特別養子縁組は、子の福祉の観点から実親との法律上の関係を完全に断ち切り、養親との間に実親子と同様の安定した関係を形成することを目的とする制度だからです。したがって、特別養子は実親を相続することができません。
なお、養子縁組と親族関係の発生について定める民法727条は、「養子」と「養親及びその血族」との間に血族関係が生じるとしているだけで、「養親」と「養子の血族」との間に血族関係が生じることを認めていません。この点は、代襲相続の場面で問題となることがあります。たとえば、養子縁組前に生まれた養子の子は、養親の直系卑属にはあたらないため、養親を代襲相続することはできません(民法887条2項ただし書)。
どのような場合に相続上の違いが生じるか
相続の場面で普通養子と特別養子の違いが具体的に問題となるのは、主に次の2つの場合です。
実親が死亡した場合
普通養子は実親の相続人となりますが、特別養子は実親の相続人とはなりません。たとえば、被相続人Aに実子Bがおり、Bが他の夫婦Cの養子(普通養子縁組)になっていた場合、Aが死亡すれば、BはAの相続人となります。一方、Bが特別養子縁組によってCの養子となっていた場合には、BはAの相続人とはなりません。
相続人の資格が重複する場合
被相続人が自分の孫を養子にしていた場合には、その孫は養子としての相続権と、代襲相続人としての相続権の双方を重複して取得することができます。これは普通養子縁組に特有の問題です。たとえば、被相続人Aが長女Bの子C(Aの孫)を養子としていたところ、Bが先に死亡し、その後Aが死亡した場合、CはAの養子としての相続分と、Bを代襲する相続分の双方を有します。

